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痒疹

痒疹は、激しい掻痒が特徴である結節・丘疹を主体とする特殊な炎症反応を示す皮膚炎です。蕁麻疹様丘疹あるいは漿液性丘疹(水ぶくれ様)から始まり、掻破を繰り返すことで徐々に膨隆して痒疹結節になります。詳しい機序に関しては未だ不明です。
病態の推移により急性痒疹・亜急性痒疹・慢性痒疹(多形慢性型、結節性)に分けられ、特殊型として色素性痒疹や妊娠性痒疹なども存在します。

急性痒疹(小児ストロフルス)

好発部位は四肢(特に下腿)で、蕁麻疹様紅斑や丘疹(虫刺され後の発赤のひどい状態)で始まり、数日間以内に小水疱を伴う漿液性丘疹に変化し、掻痒が強いために自己掻破により糜爛、血痂、二次感染などを引き起こして症状が悪化します。しかし、2-3週間程度で珪素の色素沈着を残して消退しますが、反復して症状が出現しやすい。本症は5歳以下の小児に生じることが多く、夏季の虫刺され後に過敏反応として生じることが多いです。

治療:ステロイド軟膏外用を行うが、二次感染がある場合は抗生剤内服あるいは外用も併用します。虫刺され予防が重要で、虫刺されしにくい衣服装用、虫除けスプレーなどの工夫が必要です。

亜急性痒疹

掻痒の強い蕁麻疹様丘疹や漿液性丘疹が四肢伸側や体幹に散在して多発し、やがて掻破により糜爛や痂皮を生じる。難治性で慢性痒疹に移行する場合もあります。 慢性痒疹との区別は明確ではありませんが、本症の方が広範囲に病変が散在し、そのためより多くの痒疹後瘢痕が目立ち、滲出傾向が強く血痂を作りやすいとされます。

治療:強力なステロイド外用、抗アレルギー薬内服の併用を行いますが難治です。掻痒を誘発するアルコールや熱い湯での入浴は控えるようにしましょう。また、刺激の少ない綿製の下着を着用しましょう。

慢性痒疹

1)多形慢性痒疹 中高年の体幹(特に側腹、腰臀部、肩甲部、大腿など)に好発しやすく、漿液性あるいは充実性丘疹が多発・集簇して、激しい掻痒のために掻破を繰り返して苔癬化した湿疹と痒疹性丘疹が混在する状態になります。再発・軽快を繰り返して慢性に経過し、治療に抵抗することが多い。

2)結節性痒疹
好発部位は四肢(特に下腿伸側)に多発し、蕁麻疹様紅斑や丘疹から始まり、掻破を繰り返すうちに硬い痒疹結節を形成して慢性に経過し、その結節は癒合することなく孤立性に散在します。痒疹結節を掻き壊すことで、結節上に糜爛や痂皮を生じることも多く、軽快しても色素沈着や瘢痕を残し、難治です。蚊やブヨなどの虫刺され後に発症することもありますが、原因不明で生じることも多いです。

※亜急性&慢性痒疹を呈するものの中には、時に基礎疾患(肝胆道疾患、腎機能障害、糖尿病、高尿酸血症、内臓悪性腫瘍、白血病、ホジキン病など)に伴って症状が発現している場合があるので、注意が必要です。

慢性痒疹に対する治療:強力なステロイド外用、抗アレルギー薬内服の併用を行います。難治の場合は、ステロイド局注、ビタミンD3外用、液体窒素などによる凍結療法、光線療法、免疫抑制療法も症例に応じて行うこともあります。時に、マクロライド系抗生剤が奏功することもあります。

色素性痒疹

体幹の正中(背部、項部、鎖骨部など)に掻痒の強い膨疹様丘疹が発作性に出現して数日で自然消退しますが、その後に粗大網目状の色素沈着を残し、再発を繰り返します。思春期前後の女子に好発する傾向にあります。 誘因としてはブラジャーやガードルなどの締め付けによる刺激、糖尿病、ダイエットや断食などによる急激な体重減少などがあります。

治療:各症例にあわせて、弛めの衣服装用、糖尿病治療、急激なダイエットの中止を指導します。発症誘因が不明の場合はミノマイシンやDDS内服が奏功することが多いです。

妊娠性痒疹

妊娠3-4ヶ月以降(妊娠中期)に、主として四肢伸側・体幹に激しい発作性の痒疹が多発し、初回妊娠でも発症することがありますが、ほとんど2回目以降の妊娠で発症するという特徴があります。一般に出産の度に再発を繰り返すことが多く、出産後は軽快するのも特徴です。本症による母体、胎児への影響は無いと考えられています。

治療:ステロイド外用で対処します。

参考:痒みのメカニズム

執筆:2010.1