薬剤性過敏症症候群

薬剤性過敏症症候群 (drug-induced hypersensitivity syndrome;DIHS)

本症は、ある特定の薬剤を内服した2~6 週間後に発熱と急速に広がる全身性紅斑が生じる薬剤アレルギーと、潜伏感染していたヒトヘルペスウイルス6(human herpes virus 6;HHV-6)の再活性化が発症後2-4週間に複合した病態です。他の薬疹と異なり、皮膚所見が様々な所見を呈することが多く、初期には軽症のように見えたりもします。従って、後述する血液検査所見の経緯が大変参考になり診断の決め手になるので、本症を疑うことが重要です。
典型的な臨床の皮膚症状では、顔面全体の腫脹と瀰漫性の潮紅を認め、鼻翼周囲と口囲では鱗屑を伴うことが多いが、眼瞼周囲には症状を認めない傾向があります。体幹では紅斑~紅色丘疹が多発し、時間経過と共に癒合傾向を呈し、一見麻疹や伝染性単核症の皮疹に類似することがあります。また、時に小膿疱が紅斑に混在することがあります。下肢では病初期から紫斑が混在しています。原因薬剤を中止せずに投与し続けると、症状が進行して紅皮症に至ることがあります。尚、全身症状としては、発熱、リンパ節腫脹、肝機能障害、腎機能障害、血液学的異常(白血球増多、異型リンパ球の出現、好酸球増多)を認めることが多いです。
一方、HHV-6以外に、サイトメガロウィルス、HHV-7、EBウィルスの再活性化も認められることがあります。特にサイトメガロウィルスの再活性化はDIHS発症後4-5週目以降に発症することが多く、DIHS症状の遷延化を生じて心筋炎、肺炎、消化管出血、皮膚潰瘍などに至ることがあるので、注意が必要です。
本症の致死率は約10%と高率で、重症な薬疹の一つです。

DIHSの主な原因薬剤

カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニザミド、ジアフェニルスルフォン、サラゾスルファピリジン、メキシレチン塩酸塩、アロプリノール、ラモトリジン、バルプロ酸ナトリウム、ミノサイクリン、ジルチアゼパム、ピロキシカムなどが挙げられます。

DIHSの診断基準

主要所見
  1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑。多くの場合、紅皮症に移行する
  2. 原因薬剤中止後も2 週間以上遷延する
  3. 38 ℃以上の発熱
  4. 肝機能障害
  5. 血液学的異常:a,b,c のうち1 つ以上
    a.白血球増多(11,000/mm3 以上)
    b.異型リンパ球の出現(5%以上)
    c.好酸球増多(1,500/mm3 以上)
  6. リンパ節腫脹
  7. HHV-6 の再活性化

典型DIHS:1 ~ 7 すべて
非典型DIHS:1 ~ 5 すべて.ただし4 に関しては,その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。

参考所見
  1. 剤は、抗けいれん剤、ジアフェニルスルフォン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2-6週間が多い。
  2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度の糜爛がみられることがある。
  3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。
  4. HHV-6の再活性化は、①ペア血清でHHV-6IgG抗体価が4倍以上の上昇 ②血清中のHHV-6DNAの検出 ③末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点にすると確実である。
  5. HHV-6以外に、サイトメガロウィルス、HHV-7、EBウィルスの再活性化も認められる。
  6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。

治療

本症では未だ確立した治療法はないが、ステロイド内服(プレドニン換算で40-70mg/日) が行われることが多いです。ステロイドの急激な減量は免疫を活性化させるため、ウィルスに対する過剰な反応を生じさせるので、慎重な減量が重要です。また、ガンマグロブリン大量療法を併用することも試行されています。この他にも、重症例では血漿交換療法も施行されることがあります。
尚、HHV-6に対する抗ウィルス薬投与は通常必要ありませんが、サイトメガロウィルスが検出された場合、症状の遷延化や重篤化を認めるときには、ガンシクロビールなどの抗ウィルス薬投与を考慮します。
本症が治癒後に、1型糖尿病や自己免疫疾患を発症することがあるので注意が必要です。

本症は重症多形滲出性紅斑(急性期)の範疇に含まれるため、特定疾患治療研究事業対象(公費対象)の疾患です。疾患毎に認定基準があり、主治医の診断に基づき都道府県に申請し認定されると、「特定疾患医療受給者証」が交付されます。制度の概要、手続き方法を参照し、申請については最寄りの保健所にご相談ください。

執筆:2011.8

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