03-3471-1013

診療
時間
10:00~14:00 / 15:00~19:00
※土曜日も診療 ※日曜・祝日休診

中毒性表皮壊死症

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis;TEN)

TENは広範囲な紅斑と、全身の10%以上の水疱、表皮剥離・糜爛などの顕著な表皮の壊死性障害を認める重症薬疹の一型で、高熱と粘膜疹を伴い、その大部分は薬剤性と考えられていますが、特に小児では、一部のウィルスやマイコプラズマ感染から発症することも知られています。
同様に、Stevens-Johnson syndrome (SJS)も、発熱を伴う口唇・眼結膜・外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および全身の皮膚の紅斑で、しばしば水疱・表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認め、その多くは薬剤性と考えられています。
現在では、TENとSJSは一連の病態と考えられており、皮膚の糜爛面積が全体表面積の10%未満をSJS、10%以上をTENとしています。TENの大多数(90%以上)を占めるのは、SJS進展型TENであり、瀰漫性紅斑進展型は全体の4-7%程度と比較的少ないが重症の経過をとりやすいです。重症になると、皮疹のみならず、肺・肝・腎などにも障害を生じて全身管理が必要になります。
TEN/SJSの発生頻度は年間1-2人/100万人程度で、死亡率は10%と高率です。また、一命を取り留めても、失明や視力障害などの重篤な後遺症を残すことがあります。
原因と考えられる薬剤は主に、抗生剤、NSAIDS、抗てんかん薬など多岐にわたります。
発症機序に関しては、細胞傷害性T 細胞の機能が異常亢進して基底層が傷害を受けることにより発症する説、表皮細胞のアポトーシスを誘導するFas-Fasリガンドの関与などが考えられていますが、未だ統一された見解はありません。

SJSの診断基準

概念:発熱を伴う口唇・眼結膜・外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の紅斑で、しばしば水疱・表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認める。原因の多くは薬剤である。

主要所見(必須)
  1. 皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変(出血性あるいは充血性)が見られること
  2. しばしば認められる糜爛もしくは水疱は、体表面積の10%未満であること
  3. 発熱
副所見
  1. 皮疹は非典型的ターゲット状多形紅斑
  2. 角膜上皮障害と偽膜形成のどちらかあるいは両方を伴う両側性の非特異的結膜炎
  3. 病理組織学的に、表皮の壊死性変化を認める

*但し、TENへの移行がありうるため、初期に評価を行った場合には、極期に再評価を行う。
*主要項目の3項目全てを満たす場合SJSと診断する。

TENの診断基準

概念:広範囲な紅斑と、全身の10%以上の水疱・表皮剥離・糜爛などの顕著な表皮の壊死障害を認め、高熱と粘膜疹を伴う。原因の大部分は薬剤である。
主要所見(必須)
  1. 体表面積の10%を超える水疱・表皮剥離・糜爛
  2. ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)を除外できる
  3. 発熱
副所見
  1. 皮疹は広範囲な瀰漫性紅斑および斑状紅斑である
  2. 粘膜疹を伴う。眼表面上皮(角膜と結膜)では糜爛と偽膜のどちらかあるいは両方を伴う
  3. 病理組織学的に、顕著な表皮の壊死を認める

*主要3項目の全てを満たすものをTENとする。

サブタイプの分類

1型:SJS進展型 (TEN with spots)
2型:瀰漫性紅斑進展型 (TEN without spots)
3型:特殊型

参考所見

治療などの修飾により、主要項目1の体表面積10%に達しなかったものを不全型とする。

治療

直ちに被疑薬を中止し、厳重な眼科的管理、皮疹部および口唇・外陰部粘膜の局所処置、補液、栄養管理、感染防止などの熱傷に準じた治療を行います。
未だ確立された治療法はありませんが、発症7日前後までにステロイド大量投与(プレドニン換算で0.5-2mg/kg/日)あるいはステロイドパルス療法を開始することが第一選択となっています。その他に、血漿交換療法やや免疫グロブリン大量投与が行われることもあります。
本症は重症多形滲出性紅斑(急性期)の範疇に含まれるため、特定疾患治療研究事業対象(公費対象)の疾患です。疾患毎に認定基準があり、主治医の診断に基づき都道府県に申請し認定されると、「特定疾患医療受給者証」が交付されます。制度の概要、手続き方法を参照し、申請については最寄りの保健所にご相談ください。

執筆:2011.8