弾性線維性仮性黄色腫

弾性線維性仮性黄色腫 (pseudoxanthoma elasticum;PXE)

本症は、全身の弾力線維に異常をきたす遺伝性結合組織疾患で、生下時には症状は無く、加齢と共に弾性線維の断裂と膨化、並びに石灰沈着を認め、皮膚・眼・心血管系に障害を生じることが多いです。

疫学

発症頻度は10-20万人に1人程度とされ、男女比= 1:2 で女子に多く、男子では重症となりやすい。本症は常染色体劣性遺伝が典型的ですが、時に常染色体優性遺伝することが報告されています。

原因

体内の細胞で物質輸送に関与しているATP-binding cassette transporter (ABCトランスポーター)の一つであるMRP6(multidrug resistance-associated protein 6)蛋白分子のをコードするABCC6遺伝子(16p13.1)の異常と考えられています。この遺伝子異常がなぜ全身の弾性線維の変性や石化沈着に結びつくかについては、現在のところ不明です。

症状

皮膚症状:思春期頃から、側頸部・腋窩・鼡径部・関節屈曲部などに、特徴的な小さい限局性の黄色斑または丘疹が集簇して網状の局面を形成し、オレンジの皮のような外観を生じてきます。その後、加齢とともに病変部皮膚の弛緩や皺が進行しますが、自覚症状はありません。 眼症状:網膜と脈絡膜との間に存在するBruch 膜は弾力線維に富んでおり、この部位の変性により血管線条(angioid streaks)を形成して、進行すると視野欠損をきたし、網膜出血を繰り返すときは失明に至る例もあります。20-40歳代に症状が出現することが多いので、この眼症状に対する適切な対応が重要です。
心血管症状:大動脈中膜に線維化および石灰化が起こり、30歳代頃から血管が脆くなったり狭窄が生じて様々な臓器障害を起こします。これにより、30歳頃から高血圧(腎動脈)や間欠性跛行(下肢)、四肢冷感、狭心症や心筋梗塞(冠動脈)、消化管出血、脳出血などが生じることがあります。心血管障害が重篤でなければ生命予後は良好である。

診断

皮膚を生検して、顕微鏡的に弾性線維の断裂や石灰化を確認します。眼科的には眼底検査によって網膜色素線条の有無を調べます。これらに異常があれば、消化管や心臓血管の検査も行います。必要に応じて遺伝子診断も行います。

治療

現在のところ根本的な治療法はないため、病状の進行を出来る限り阻止することが目標となります。本症の確定診断がついたら、半年に1回の眼科および循環器内科での定期検査を行い、その他にも異常を感じたら、速やかに当該受診科で検査を受けるようにします。
眼科的には、レーザー光凝固術を行ったり、血管新生阻害薬を試行して有効なこともあります。尚、出血を助長する投薬(アスピリンやNSAIDsなど)を避けることも必要です。
また、心血管への負担を避けるため、糖尿病や高血圧、高脂血症のある場合はそのコントロールが必須となります。腹圧がかかったり、頭部外傷を受けやすいスポーツは避けるべきです。
皮膚症状については特に治療を要しませんが、弛んだ皮膚を形成外科的に切除するケースもあります。

執筆:2011.8

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