デュプイトラン拘縮

デュプイトラン拘縮 (Dupuytren's contracture、palmar fibromatosis)

本症は皮下にある線維性の手掌腱膜が肥厚・収縮し、皮下の硬結、手指の屈曲拘縮、伸展障害をきたす疾患です。手掌腱膜のほかにも手指の皮下に近い部分の靭帯も本症に関与します。指の屈曲拘縮を生じますが、屈筋腱をはじめ手指の腱は影響を受けません。また、足底にも同様の症状が出現することもあり、これを足底線維腫症と呼び、両者を合わせて手掌足底線維腫症と呼ぶこともあります。

原因

本症の成因に筋線維芽細胞(myofibroblast)が関与していると考えられていますが、詳細は不明です。遺伝的素因があり、二次的刺激(喫煙、糖尿病、外傷、飲酒など)で微小虚血症状を引き起こし、フリーラディカルや様々なサイトカインが産生されて線維芽細胞が筋線維芽細胞に転化して発症するとの仮説もあります。尚、手掌腱膜の構成コラーゲンは本来タイプIですが、本症患部ではタイプIIIに置き換わっています。
本症は中年以降の男性の多く見られますが、80歳代では男女同率になります。片手より両手に発症することが多い疾患です。本症は長期アルコール摂取が危険因子の一つとされています。また、糖尿病患者や抗てんかん薬(フェニトインなど)の服用者に合併しやすいと報告されています。この他、本症が生じる家系や肝硬変患者にも発症リスクが高いと考えられています。
時に、本症と類縁疾患であるぺイロニー(Peyronie)病、足底線維腫症、ナックルパッド(Garrod's knuckle)などを伴うことがあります。

症状

初期は環・小指の手掌腱膜の病変として現れることが多く、小指側の指に近い部分の手掌に皮下に結節・硬結として出現します。この段階では、ゴルフや野球の素振りなどでできる"マメ"のような状態です。この結節は疼痛や圧痛を伴う事もありますが、通常は限局性の軽い痛みであり進行例でも痛みが主訴となることはほとんどありません。進行すると索状硬結を呈して皮膚もひきつれて徐々に伸ばしにくくなり、指の関節の屈曲拘縮が見られるようになります。また、小陥凹を認めることもあります。さらに進行すると、中指、示指、第一指間、母指へと症状が拡大します。

デュプイトラン拘縮はMeyerding分類がよく用いられます。
Grade 0:屈曲は無く、小結節があるのみ、
Grade 1:屈曲拘縮を1指のみに認める
Grade 2:屈曲拘縮が複数指に及ぶが各指とも屈曲角度の総和が60度以下である
Grade 3:少なくとも1指に60度以上の屈曲拘縮がある
Grade 4:全指に屈曲拘縮がある
となっています。本症は足底腱膜にも同様の症状を合併する事があり、診断の際には足底の所見にも注意する必要があります。
尚、無治療で約10%の患者に自然退縮を認めます。

診断

上述のような手の硬結と典型的な指の変形などにより診断は容易ですが、腱の断裂や癒着、腫瘍などと鑑別する必要があります。

治療

おおよその手術の適応は手掌を机にぴったりつけられるかどうかを試し、浮いてぴったり着かなくなった頃(通常MP関節拘縮が40度以上、PIP関節拘縮が20度以上)と考えて下さい。第2関節が曲がって指変形が日常生活に支障をきたす場合には、早めに手術が必要になることもあります。一般的には屈曲拘縮が進行するGrade1以上では手術が望ましいと考えられます。特にGrade3以上になると、手術をしても関節拘縮が残り完全には改善しないこともあります。
手術は患部の腱膜切除術を行います。進行すると皮膚性拘縮も加わるため、Z形成術などの処置を加える必要もあります。重症で皮膚切除も広範になる場合は、植皮術を行うこともあります。 手術して肉眼的に患部を完全摘徐しても微小病変が残ることが多く、手術後の再発率が高いです。特に再発しやすい条件として、1)50歳以下、2)家系に本症がある、3)本症が両手にある、4)ぺイロニー病、足底線維腫症、ナックルパッドなどの併発が挙げられます。
手術後には、リハビリや夜間伸展位固定(装具療法)などの後療法が重要です。

保存的治療

2010年、米国FDAは本症の病変患部に対するコラゲナーゼ(clostridial collagenase histolyticum;Xiaflex ○R )局所注射治療を承認しています。拘縮が重症でない本症に対して再発率は高いものの有効で副作用も稀とされており、今後有力な治療法になるかもしれません。 この他にも、低線量放射線療法が有効との報告もあります。

執筆:2011.11

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