トコジラミ刺症

トコジラミ刺症(南京虫刺症)

本症はカメムシの仲間であるトコジラミ(Cimex lectularius)が、人に対して吸血活動をして生じる皮膚炎です。この皮疹はトコジラミの唾液腺物質に対する遅延型アレルギー反応によって生じるとされます。
症状としては、四肢や頸などの露出部位に、掻痒を伴う浸潤性紅斑や紅色皮疹が多発し、時にかなり強い腫脹を伴うこともあります。個々の皮疹は1-2週間で褐色斑となり軽快します。

生態

トコジラミは、日中はベッド・畳・引き出しの隙間、絨毯の裏、室内の壁や柱の割れ目、長期間放置された見開き雑誌などに潜伏し、主に夜間に移動して就寝中の人の露出皮膚から吸血します。
トコジラミ幼虫は1-4mmで1-2ヵ月間に5回の脱皮を繰り返して約5mm褐色調で翅のない扁平な成虫になります。約1mmの半透明で楕円形の卵も生息場所に産み付けられます。
また、トコジラミは雄雌ともに吸血し、幼虫・成虫にかかわらずその全生存期間を通じて栄養分を血液に頼っています。しかし、飢餓に強いとされ、18ヵ月間も無吸血で生存したという記録があります。
トコジラミは翅を持たないため自力では長距離を移動できませんが、人間の荷物または輸送される家具などに取り付くことでその分布を拡大します。
最近の研究によると、ボルバキアという共生細菌がいないと正常な成長や繁殖が困難であることが報告されています。

再興している現況

温帯を中心に世界中に広く分布し、DDTなどの殺虫剤の散布で一時減少したが、近年再び増加傾向にあります。
増加の原因として、強力な殺虫剤の使用抑制、殺虫剤耐性のトコジラミの出現、交通機関の発達による海外渡航の機会の増加、寝具・部屋が不衛生な簡易宿泊施設の増加、リサイクル家具やレンタル家具の増加などが関与していると考えられます。

治療

皮膚炎部位にステロイド外用し、掻痒が強い場合は抗アレルギー薬内服も併用します。
しかし、トコジラミを駆除しない限り、皮疹が新生を繰り返してアレルギー性反応が増悪します。従って、皮膚炎の治療と並行して駆除処置が不可欠です。

駆除

家庭用燻蒸剤(メトキサジアゾン、フェノトリン、d・d-T-シフェノトリン系など)を使用しても、狭い隙間に潜む害虫に対してはその有効成分が到達しにくいため、その効果は不十分です。従って、潜伏場所への薬剤の直接注入、徘徊場所への散布残留処置が必要になります。また、トコジラミのライフサイクルを考えると複数回の処置が必要になるため、徹底駆除するためには、専門の駆虫業者に依頼することが望ましいです。

海外旅行時の注意

トコジラミはパラジクロロベンゼンなどの防虫剤を嫌うため、旅行先などで付着されないためには荷物やスーツケースへ防虫剤を入れておくことが肝要です。

執筆:2017.6

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