チクングニア熱

チクングニア熱(Chikungunya fever)

本症はチクングニアウイルスを原因とする、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどにより媒介される急性熱性ウイルス性疾患です。激しい関節痛と発熱を伴うことが特徴ですが、蚊媒介性疾患のデング熱やウエストナイル熱と症状が類似していることもあります。
アフリカ・南アジア・東南アジアの熱帯・亜熱帯地域を中心に流行が拡大しており、近年ではイタリア・フランスでも流行したことが確認され、その他の国々でも多くのチクングニア熱輸入症例が報告されています 。日本においても19例(2006年末~2011年1月まで)のチクングニア熱輸入症例が報告されており、日本にも生息するヒトスジシマカにより媒介されうるため、チクングニアウイルスの日本への侵入・定着の可能性は否定できない状況になっています。そこで、2011年4類感染症全数把握疾患に指定され、同時に検疫対象疾患としても指定されました。

チクングニアウイルスの性状と感染経路

チクングニアウイルスはトガウイルス科アルファウイルス属に分類される球状(直径約70nm)のRNAウイルスです。エンベロープを有しているため、有機溶媒および界面活性剤により不活化され、環境中では比較的速やかに感染性を消失します。
本ウイルスの主要媒介蚊はヤブカ属の蚊であり、感染経路はデング熱と同様ヒト-蚊-ヒトであり、人間から人間への感染は認められません。
急性期患者のウイルス血症は非常に高く、その患者を吸血した蚊が感染蚊となる可能性は高いです。従って、温帯地域においても輸入症例から感染蚊が発生してチクングニア熱が流行する可能性があります。また、特殊な針刺し事故等による実験室内感染も報告されているため医療関係者は一般的な感染予防が必要です。

臨床症状と検査

潜伏期間は2~12日(多くは3~7日)で、患者の大多数は急性熱性疾患の症状を呈します。発症すると、発熱(39℃以上)・全身倦怠・リンパ節腫脹・頭痛・筋肉痛・発疹・亜急性の関節炎を起こします。また、出血傾向(鼻出血・歯肉出血)、悪心・嘔吐、腫脹、末梢リンパ節症、羞明、無力症をきたすこともあります。発熱は2日ほど続き急に終息することが多く、その他の急性症状の大部分も3~10日で消失します。関節痛は四肢(遠位)に強く対称性で、その頻度は手首、足首、指趾>膝>肘>肩の順であり、関節の炎症や腫脹を伴う場合もあります。また、激しい関節痛および多発性腱滑膜炎を伴う慢性末梢性リューマチ様症状を呈して、日常生活に支障を生じます。また、関節炎は時に数週間~数ヵ月持続する場合があります。致死率は0.1%と極めて低いですが、特に高齢者の死亡が多く、呼吸器不全・心不全・髄膜脳炎・劇症肝炎・腎不全等が報告されています。
主な血液所見はリンパ球減少および血小板減少であり、肝機能障害(ALT、ASTの上昇)も認められます。
チクングニア熱はデング熱と臨床的に鑑別が難しく、アフリカ・アジアにおける分布域もほぼ一致するため、確定診断には血清からのウイルス分離あるいはウイルス遺伝子の検出、あるいは抗ウイルス抗体の検出を行います。

治療と予防法

本症に対する特異的治療法は存在せず、治療は対症療法になります。急性期においては感染経路を遮断するために、患者が媒介蚊に刺されないように注意を払います。起床時の関節痛は体を適度に動かすことにより改善することがありますが、激しい運動では症状が悪化します。アスピリン以外の消炎鎮静剤 (NSAIDs) の使用で関節痛は改善しますが、顕著な効果が認められず、回復に数カ月を要した症例も報告されています。チクングニアウイルスに対するワクチンは未だ実用化されておらず、予防法は蚊に刺されないように、肌の露出を避ける、忌避剤を使用する等の対策が必要です。

執筆:2011.6

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