色素性乾皮症

色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum ; XP)

色素性乾皮症(XP)は、日光照射後の日光皮膚炎に引き続き多数の色素斑、脱色素斑、毛細血管拡張、萎縮をきたし、若年で露光部に多数の皮膚癌を生ずる、先天性高発癌性疾患です。

病因

通常、紫外線照射によるDNA損傷を受けても、全ての細胞が死んだり、癌細胞となったりする訳ではなく、大部分の細胞はDNAの損傷部位を修復する機能、即ち不定期DNA合成 (UDS:unscheduled DNA synthesis) 機能を有していて、損傷を受けたDNAを正常な状態へと修復することができます。XPではヌクレオチド除去修復あるいは損傷乗り越え機構に障害があるために、紫外線によって生じたDNA損傷が修復されずに残存する結果、皮膚癌などの症状が引き起こされると考えられています。

分類・原因遺伝子

不定期DNA合成機能(DNA修復機能)の低下をもたらす遺伝子異常の相違から、A~Gの7つの相補性群(型)と、不定期DNA合成機能はほぼ正常だが、損傷乗り越え機構の異常から、DNAの損傷部位を複製する機能が低下しているバリアント(variant:v)に分類され、総ての遺伝子が特定されています。

疫学

XPの遺伝形式は常染色体劣性であるので、両親が保因者の場合、その子供にXP患者が生まれる可能性があります。XPの全人口に対する発生頻度は10万人に1~2.5人で、それから推定するとヘテロ保因者は約0.7%となります。日本人ではXPA群とXPV群が多く、特に日本人A群患者の80%以上ではXPA遺伝子の同一変異によって発症しており、創始者効果がみられます。発病率に男女差はありません。

症状

各相補性群により修復能、皮膚症状の程度、皮膚癌の発症時期、神経症状の有無などに特徴があります。
修復能の低いA, C群では皮膚症状が重症で、皮膚癌の発症も早いです。特に合併頻度の多い皮膚癌は基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫です。有棘細胞癌や悪性黒色腫は転移を起こしやすく、死亡率が高いです。
A群は特に重症で、皮膚・眼の光線過敏症状は生後まもなくより気付かれ、紫外線に5分間照射されるだけでも高度の紅斑・腫張・水疱を伴う激しい日光皮膚炎を生じ、その紅斑のピークは正常より遅延し、3日後がピークとなることが多いです。急性の激しい日光皮膚炎が治まった後に種々の程度の色素沈着・脱色素斑を残し、それを繰り返すうちに皮膚の乾燥・毛細血管拡張も生じます。A群では神経症状も重症で10歳までに難聴が、10歳頃に腱反射低下・小脳失調・眼振・振戦・構音障害・運動失調などが現れ、CT上脳萎縮を指摘される例もあります。徐々に尖足が重症化し、転倒し易くなり、20歳くらいでは歩行不能に陥ることが多いです。これらの神経障害については、紫外線の照射量とは無関係であること以外は解明されていません。思春期以降誤嚥障害も多くなり、それに伴う肺炎を併発することも多く、20-30歳前後で突然死や肺炎などで死に至ることが多いです。一方、E, F, V群ではほとんどの症例で神経症状は伴わないが、20歳を過ぎ、皮膚癌が生じて初めてXPを疑われることが多くなり、診断される時期が遅いために遮光の不十分であった症例も多くなるため、皮膚癌への対応が中心となります。

治療

小児期に皮膚癌を生じるA, C群はもちろんのこと、D, E, F群においても、遮光(サンスクリーン剤の塗布、紫外線遮断光線防御服や帽子や眼鏡の着用、自宅や学校環境で紫外線カットフィルムの貼付など)環境を完璧に行うように指導します。生じた皮膚癌は、早期発見・早期治療が鉄則である。神経症状の治療法は今のところないが、尖足などに対して整形外科的な対症療法がなされています。

予後

相補性群によって、かなり異なります。軽症型のE, F, V群で、診断が若年でなされた症例では,遮光により皮膚症状や皮膚癌の発症を防ぐことができ、通常の生活を送ることができるので、経過予後ともに良好である。重症型のA群はかなり厳重な紫外線防御を行っても皮膚癌を発症する例もあり、神経症状も進行性であるので、生命予後も悪く、20代に死亡することが多いです。C, D群はA群ほどではないが皮膚癌の発症も比較的早く、注意深い観察が必要です。

執筆:2010.7

▲PageTop

ページトップに戻る