褥瘡(床ずれ)

本症は、人体の生理的な骨性隆起部周辺の皮膚・軟部組織に外力が加わって圧迫・伸張・剪断応力が生じ、この状況が一定時間持続すると、組織の不可逆的な阻血性障害に陥り、組織壊死が起こって、その部の組織欠損・皮膚潰瘍を生じたものです。

発症の危険因子

自立体位変換能力の低下、病的骨突出、関節拘縮、低栄養、浮腫、皮膚湿潤などが挙げられます。この他、脳卒中,脊髄損傷、糖尿病などの基礎疾患を有する場合は、褥瘡の形成を加速します。

症状

外力で圧迫された部位に、紅斑・浮腫・硬結を生じ、やがて潰瘍になります。潰瘍は、深いものでは骨に達し関節内や腹腔内に及ぶ場合もあります。潰瘍の辺縁は侵食性で、病巣は外観よりも深く、皮下ポケットは大きい場合も多いです。潰瘍底は湿潤し、壊死組織や膿苔で覆われていることが多く、表在菌や嫌気性菌などによる二次感染を起こすと、敗血症に至る場合もあります。
好発部位
仰臥位で生じる褥瘡:後頭部、肩甲骨部、肋骨角部、脊柱棘突起部、仙尾・仙腸部、踵骨部
側臥位で生じる褥瘡:側頭部、耳介、肩峰部、肩甲骨部、肋骨角部、腸骨稜部、大転子部、腓骨頭部、内・外踝部
座位・車椅子などで生じる褥瘡:尾骨部、坐骨部

※褥瘡部皮膚の状態により治療法やスキンケアが異なるため、ステージ分類が重要である。

褥瘡の深達度分類(NPUAP分類)
DTI(deep tissue injury) 疑い
圧力および/または剪断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱。
I度:傷害が表皮にとどまっている状態。局所の発赤(紅斑)、表皮剥離(びらん)である。
II度:傷害が真皮に及び、真皮までの皮膚欠損(=皮膚潰瘍)が生じている状態。水疱が形成されることもあり、壊死組織の付着や細菌感染が生じやすい。
III度:皮下組織に達する欠損が生じている状態。
IV度:筋肉や骨まで損傷された状態。骨が壊死して腐骨となったり、骨髄炎や敗血症を併発することもある。
U:深さ判定が不能な場合。

褥瘡重症度分類&経過評価
褥瘡が起こりやすい人を評価し発生の予測を行なう目的で、国内では一般にDESIGN/DESIGN-R(デザイン)分類が使われます。この分類は、定性的な重症度評価のための尺度(D:深さ・E:浸出液の多寡・S:大きさ・I:感染の有無・G:肉芽組織の性状・N:壊死組織の有無 に加えて、P:ポケットの有無の6項目で評価するもの)と上記6項目に半定量的に評点を付加する経過評価用尺度の2者で構成されています(詳細は褥瘡学会HPを参照)。

予防

褥瘡は、予防に始まり予防に終わるといわれるほど、予防の余地の大きい疾患です。褥瘡ケアの基本は、除・減圧(支持面の調整と体位変換)、皮膚面の保湿と保清(清潔)、栄養管理が主体となります。
1)体圧分散寝具を使用します。メディカルムートン(羊毛皮)・ウレタンフォーム(単独・複合)マット・エアマット(圧切換型・静止型)・ウォーターマット・高機能寝台(自動体位変換)などがあります。加えて、定期的に十分な体位変換を行います。2時間ごとが基本ですが、最近では上記の体圧分散寝具を使用した上で、4時間あるいはそれ以上の間隔で行なわれる場合もあります。
2)入浴(不能な場合はせめて足浴)は創の有無を問わず、推奨されます。また、皮膚・排泄ケアも重要です。
3)近年では看護師のみならず、全身の水分・栄養管理(脱水予防)を担当する管理栄養士や、薬剤師、リハビリテーション療法士らのチームワークによる褥瘡予防が重要な役割を演じています。

治療

保存的治療においては、褥瘡部位の乾燥は創治癒を阻害するため、外用薬や被覆材(ドレッシング)を用いて、毎日病変部を処置して湿潤環境を保持するのが原則です。全身状態比較的良好で褥瘡の早期閉鎖が望ましい時は外科手術も考慮します。
褥瘡部位は毎日定期的に洗浄を行ないます。洗浄は、褥瘡とその周囲を薬用石鹸等で愛護的に行ない、最後に生理食塩水や水道水などでよく濯ぐようにします。
早期褥瘡の表皮に糜爛・潰瘍が生じた場合には、創の乾燥を防ぎ湿潤環境を保持する治療である湿潤療法(moist wound healing)が創治癒の基本です。創傷被覆材による創面保護が第一選択ですが、上皮化促進用の外用薬も有用です。但し、感染や壊死組織がある場合にはその管理を優先させることは言うまでもありません。
皮膚潰瘍内に壊死組織がある場合には壊死組織の除去が必要です。壊死組織の除去には、綿球やガーゼを用いて水洗して擦り落としたり、蛋白質分解酵素の軟膏処置や外科的切除(デブリードマン)などが行なわれます。
また、褥瘡部位に感染がある場合には消毒を行います。消毒にはポビドンヨードや、グルコン酸クロルヘキシジンなどが用いられますが、感染による発熱などの全身症状には抗菌剤等内服や点滴の治療を行います。明らかな細菌感染がなくなれば消毒の必要はありません。
壊死組織を除去して感染コントロールが出来るようになれば、次に炎症除去と皮膚局所の良好な肉芽組織の形成促進を図って、創傷治癒を促進します。そのために肉芽形成促進用の外用剤や被覆材を使用します。過剰な炎症反応にはステロイド外用剤が使われることもあります。
褥瘡部位が皮下ポケット状になっている場合には、洗浄や消毒あるいは外用薬などの処置が及びにくくなるため、壊死組織が残存しやすく、浸出液や分泌物も貯留して感染を起こしやすくなります。そのため、可及的早期に皮膚切開(ポケット開放)して外用薬や被覆材による保存的治療や感染をコントロールし、必要であれば外科手術(単純縫縮、植皮、皮弁。筋膜皮弁、筋皮弁など)も行います。しかし、全身状態が悪い場合はデブリードマンや創閉鎖術の適応とならないことも多いです。
最近では、皮下ポケットの大きな褥瘡で壊死組織が無い場合は、持続陰圧閉鎖療法が有用であることが報告されています。
また、いわゆる「ラップ」療法は、褥瘡治療に経験の深い医師の管理下で、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において、その使用を考慮します。

執筆:2011.3

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