全身性強皮症

 全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)

本症は線維化と血管障害の病態が重なる自己免疫疾患です。前者の代表的症状は皮膚硬化や肺線維症であり、後者の症状はレイノー現象、爪上皮出血点、毛細血管拡張、指尖部虫食状瘢痕、潰瘍・壊疽・肺高血圧などがあります。また、線維化と血管障害は並行して進行するわけではなく、線維化のみ症状が強く出現する例や、血管障害のみが強く出る例もあり、軽症から重症まで様々で不均一な疾患です。また、男女比は1:9であり、30~50歳代の女性に好発します。
皮膚硬化の範囲から、比較的軽症型(皮膚硬化が肘よりも遠位部にとどまる)の限局型全身性強皮症(limited cutaneousSSc;lcSSc)と典型的な症状(皮膚硬化が手指から始まり、肘を越えて近位部に拡大して広範囲に及ぶ)を示すびまん型全身性強皮症(diffuse cutaneous SSc;dcSSc)の2型に分類されます。前者の軽症型では進行はほとんどないかあるいは緩徐ですが、後者は発症より5-6年以内に進行することが多いです。
*「限局性強皮症」は皮膚のみに硬化が起こる全く別の疾患であり、上述の限局型全身性強皮症とは全く異なるものです。
 

全身性強皮症(SSc)の診断基準

大基準
手指あるいは足趾を越える皮膚硬化
小基準
手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指腹の萎縮
両側性肺基底部の線維症
抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体あるいは抗セントロメア抗体陽性
大基準あるいは小基準1)および2)-4)の項目以上を満たせば全身性強皮症と診断
限局性強皮症(所謂モルフィア)を除外する
手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く
 
手以外では、上肢、顔面、体幹、下肢にも皮膚硬化が進行することがあり、肘・膝関節よりも近位部に硬化が見られる場合はdcSScに分類します。
顔面に硬化が及ぶと仮面様顔貌を呈します。頬や口唇・舌には毛細血管拡張を認めることが多く、頚部前胸部の毛細血管拡張はクモ状血管腫様になることが多いです。
皮膚以外の症状:
全身性強皮症では皮膚以外にも様々な症状を呈します。lcSScとdcSSc両者に認められることが多いのが逆流性食道炎です。lcSScに多い症状は、原発性肺高血圧や原発性胆汁性肝硬変があります。一方、dcSScに多い症状は、間質性肺炎(肺線維症)、強皮症腎による高血圧、吸収不良症候群、心不全があります。
 

自己抗体

SScでは抗核抗体が高率に陽性になり、抗トポイソメラーゼ I(Scl-70)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体、抗U1RNP抗体、抗U3RNP抗体、抗Th/To抗体、抗NOR90抗体などが検出されます。抗U1RNP抗体を除いて極めて特異性が高い。DcSScは抗トポイソメラーゼ I(Scl-70)抗体や抗RNAポリメラーゼ抗体が検出され、lcSScでは抗セントロメア抗体が陽性となることが多いです。
自己抗体は診断のみならず、予後の予測や治療法の選択に大きな威力を発揮しますが、抗体価の推移によって強皮症の活動性を判断することは出来ません。
 

治療

SScは不均一な疾患であるため、その治療も症例によって異なるが、原則として対症療法になります。代表的治療法としては、
(1)ステロイド少量内服:皮膚硬化に対しては有効ですが、血管障害には効果がありません。強皮症腎はステロイドによって誘発されることがあるので注意が必要です。また、間質性肺炎にはステロイドはあまり有効ではないとされています。
(2)シクロホスファミド(肺線維症に対して)
(3)プロトンポンプ阻害剤(逆流性食道炎に対して)
(4)プロスタサイクリン誘導体(末梢血管循環障害や肺高血圧症に対して)
(5)ACE阻害剤(強皮症腎クリーゼに対して)
(6)エンドセリン受容体拮抗剤&ホスホジエステラーゼ5阻害薬(肺高血圧症に対して)
などが挙げられます。
 
強皮症は特定疾患に指定されていますので、医療費助成の制度があり、「特定疾患医療受給者証」の交付を受けると治療にかかった費用の一部が助成されます。

執筆:2011.1

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