側頭動脈炎

主に60歳以上の高齢者に発症する頸動脈とその分枝の動脈、特に側頭動脈の炎症を主徴とする原因不明の中・大動脈の血管炎です。頭の側面に存在する側頭動脈が、血管炎により、痛みを伴い、肥厚、発赤することから側頭動脈炎と呼ばれますが、10~15%の患者では、大動脈弓とその分枝部(鎖骨下動脈、腋窩動脈、上腕動脈、頭蓋内の中動脈など)にも病変が生じます。動脈の生検による組織学的検査では巨細胞を含む肉芽腫が認められるため、巨細胞性動脈炎(Giant cell arteritis)とも呼ばれます。リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)の症状が約30%の患者に認められ、両者は極めて近似した疾患と考えられています。
若年者に発症する高安動脈炎と対照的に、本症では60歳以上の高齢者に発症します。男女比はほぼ1:1.7で、男女ともに60歳後半から70歳代にピークがあります。人種・地域差及び遺伝素因が認められ、欧米白人に多く、HLA-DR4との相関が報告されています。本邦では1997年1年間の全国病院受療推定患者数は約690名で、受療率は人口10万人対0.65名です。

初発症状

側頭動脈痛、限局性の頭痛、頭皮部の疼痛、側頭動脈の拍動性の頭痛などが約70%の患者に認められます。頭痛は、拍動性で、片側性で、夜間に悪化しやすいことが知られています。有痛性または肥厚性の側頭動脈を触れます。発熱、体重減少などの全身症状は約40%に認めます。眼症状(視力障害・視野欠損、中心暗点、虚血性視神経炎など)は約34%に認め、筋肉痛と関節痛は各々20%、13%程度に認められます。

経過中の臨床症状

頭痛が約20%、眼症状が約48%、発熱など全身症状が約55%、関節・筋症状が約45%などを認めます。リウマチ性多発筋痛症が約30%認められ、四肢近位筋の疼痛を示します。眼症状を有する症例は、リウマチ性多発筋痛症の合併、体重減少、筋肉痛などの全身症状が少ない傾向があります。大動脈にも障害がおこることがあり、このため、間欠性跛行、解離性大動脈瘤などをみることがあります。この他、うつ病、不安感、記銘力低下、眩暈、脳血管障害(脳梗塞など)、狭心症・心筋梗塞、失明などをみることもあります。

検査所見

赤沈亢進、CRP陽性、白血球増多、貧血が認められます。自己抗体は一般的には陰性です。筋原性酵素(CK、ALD、ミオグロビンなど)は正常です。眼底検査では、視神経乳頭の虚血性変化、網膜の綿花様白斑、小出血などが認められます。 頸動脈の血管造影で動脈の狭窄・閉塞が認められます。
側頭動脈の生検により、巨細胞を伴う汎血管炎を認める。即ち、主に中・大動脈を侵し、リンパ球、マクロファージが巨細胞とともに集積しているのが認められる。内膜は著明に増殖・肥厚し、内弾性板の変性・断裂を認め、巨細胞内に貪食された弾性線維が認められる。内腔には血栓形成を認める(この所見は巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis;GCA)とも呼ばれている)。病変は必ずしも連続性ではないために、2-3cmの動脈の生検が必要であることが知られています。

治療

本症はステロイドが著効し、数年以内に寛解をみます。最も留意すべき点は失明に対する配慮ですが、早期からのステロイド治療により防止が可能です。
通常、プレドニゾロン0.6~0.8mg/kg/日にて治療を開始しますが、失明の恐れがある場合には、ステロイドパルス療法を含むステロイド大量療法を行ないます。ステロイドは4週間の初期治療後に漸減して、10mg/日程度のステロイド薬維持量を必要とする症例が多く、10mg/日未満への漸減はさらに慎重に行ないます。ストロイド抵抗性の症例、ステロイド漸減に伴い再燃する症例においては、メトトレキサート(MTX)を中心とした免疫抑制薬の併用を検討します。消化管出血リスクの低い患者には、低用量アスピリンによる抗凝固療法を併用することもあります。

予後

側頭動脈炎患者では胸部大動脈瘤の頻度が高く、平均7年後に認められることが多いので、定期的画像診断によって、大動脈径の変化を追跡していきます。
尚、特定疾患(難病)の1つに指定されていますが、患者さんへの医療費給付は行われていません。

執筆:2010.7

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