シェーグレン症候群

シェーグレン(Sjogren)症候群

慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし、多彩な自己抗体の出現や高ガンマグロブリン血症をきたす自己免疫疾患の一つです。乾燥症が主症状となるが、唾液腺・涙腺だけでなく、全身の外分泌腺が系統的に障害されることもあるため、autoimmune exocrine- pathyとも称されます。
シェーグレン症候群は他の膠原病の合併がみられない原発性と関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併する続発性とに大別されます。さらに、原発性シェーグレン症候群は、病変が涙腺・唾液腺に限局する腺型と、病変が全身諸臓器に及ぶ腺外型とに分けられます。
我国における1993年年間受療患者数は17,000 人であり、男女比は1:13.7で、発症年齢は40~60歳代です。2003年の調査では患者数は7万人であり、現時点では10万人を超えていると考えられています。

病因

原因不明ですが、自己免疫疾患と考えられています。外分泌線に特異的で且つ組織障害性の自己抗体として、αファドリン抗体や抗M3ムスカリンアセチルコリンレセプター抗体が知られています。

症状

(1)乾燥症状
眼の異物感・羞明感・易疲労感・眼脂の増加などを訴えることが多く、眼の乾燥感を訴えることは少ないです。口腔では、う歯の増加や食事の際の水分摂取増加などの訴えが多いです。この他、気道乾燥による乾性咳嗽、鼻腔の乾燥感、皮膚乾燥による掻痒感、腟乾燥による性交障害などの訴えもみられます。
(2)唾液腺・涙腺腫脹
約1/3の症例で経過中に唾液腺・涙腺の腫脹がみられます。耳下腺腫脹は両側性のことが多く、急性の場合には軽度の疼痛と腫脹を伴いますが、慢性に経過する場合には無痛性のことが多いです。
(3)関節症状
関節痛は移動性かつ多発性のことが多く、多発関節炎を起こすこともあります。
(4)甲状腺
甲状腺腫をきたすことがあり、慢性甲状腺炎を呈することが多いです。
(5)呼吸器症状
間質性肺炎や肺線維症を呈することがあります。気道の乾燥による慢性気管支炎、 嗄声などがみられることもあります。
(6)肝症状
原発性胆汁性肝硬変症がみられるほか、自己免疫性肝炎も合併することがあります。
(7)消化管症状
胃液の分泌低下による萎縮性胃炎が起こることがあります。
(8)腎症状
本症では間質性腎炎や遠位尿細管性アシドーシスをきたし、低カリウム血症による四肢麻痺をみることがあります。このような場合、腎石灰化症もみられることが多いです。糸球体腎炎を起こすことは稀です。
(9)皮膚症状
発汗低下が多くの症例で認められます。また、口角炎、赤い平らな舌、眼瞼炎、乾皮症、および斑状アミロイドーシスは外分泌障害による重要な皮膚症状です。また、凍瘡様紅斑や慢性再発性の紫斑性病変、あるいは高γグロブリン血症による紫斑や萎縮性結節性の皮膚アミロイドーシスを呈することもあります。
(10)その他
レイノー現象は高率にみられますが、筋炎、多発性単神経炎、三叉神経痛、無菌性脊髄炎、血管炎などがみられることもあります。悪性リンパ腫は唾液腺及びリンパ節に好発し、その多くはpseudolymphomaを呈することが多く、またB細胞リンパ腫ではMALT型を多いです。

検査所見

乾燥性角結膜炎の診断にローズベンガル&シャーマー試験を、耳下腺機能評価にサクソン、ガムテスト、唾液腺シンチグラフィー、エコー検査を行います。
ポリクローナルな高γグロブリン血症のほか、抗核抗体、リウマトイド因子、マイクロソーム抗体、抗SS‐A抗体、抗SS‐B抗体などの自己抗体が出現します。この他に、白血球減少、アミラーゼ値上昇、尿中β2ミクログロブリン値の上昇(間質性腎炎併発時)を認めることがあります。

病理所見

唾液腺、涙腺では、導管周囲に単核球の著明な浸潤と腺房細胞の萎縮、消失、導管上皮細胞の増殖などによる内腔の狭窄がみられます。免疫組織染色による所見では浸潤単核細胞の多くはCD4+αβT細胞であり、周囲にはB細胞浸潤も認められます。様々な自己抗体の出現や臓器に浸潤した自己反応性リンパ球の存在により、自己免疫応答がその病因として考えられています。
尚、最近の研究により、耳下腺腫脹を特徴とするMikulicz病はIgG4(+)のBリンパ球の浸潤像を認め、本症とは異なる疾患であると考えられています。

治療

乾燥症状に対しては、対症的に人工涙液の点眼や人工唾液の噴霧が行われます。また頻回のうがいや歯磨きはう歯の予防に有用です。室内の湿度を保つことも乾燥感の軽減に有効です。乾燥症状が強い場合には、塩酸ブロムヘキシン、アネトールトリチオン、麦門冬湯、塩酸セビメリンなどが用いられます。
塩酸セビメリン(エポザック、サリグレン)は今までの薬剤に比べて有用性が高く、約60%の患者で有効ですが、約30%の患者で消化器症状や発汗などの副作用が出現します。本剤は効果・副作用の出現に個人差があるので、1日1錠から始め、副作用を見ながら1錠ずつ増量するなどの慎重な服用が望まれます。また、マレイン酸トリメブチン(セレキノン)の併用は、吐き気などの副作用を予防することが報告されています。さらに、水に溶かしてうがい薬として使うリンス法も検討されている。塩酸ピロカルピン(サラジェン)も汗をかきやすいという副作用がありますが、塩酸セビメリンと同様に唾液分泌に有効な薬剤です。最近免疫抑制薬のミゾリビン(ブレディニン)の有効性が報告されています。これまでの対症療法と異なり、疾患の進行を遅らせる可能性もあり、期待が持たれています。強度の眼乾燥症状に対しては、涙点プラグが有効である。乾皮症に対しては保湿剤の外用を行います。
関節痛や関節炎には非ステロイド系消炎鎮痛剤が用いられます。ステロイド剤の適応となるのは、反復する難治性の唾液腺腫脹、進行性の間質性肺炎、間質性腎炎、高ガンマグロブリン血症性紫斑などの病態です。発熱・多発性関節痛・リンパ節腫脹が持続する場合にも少量のステロイド剤が有効です。甲状腺機能低下の場合には甲状腺ホルモンの補充療法が行われます。尿細管性アシドーシスでは重曹の投与によるアシドーシスの是正とカリウムの補給が行われます。原発性胆汁性肝硬変症に対しては、ウルソデスオキシコール酸の投与が第1選択です。悪性リンパ腫を合併した場合には速やかに化学療法の適応となります。他膠原病を合併した場合には、その治療を優先します。

予後

一般に慢性の経過を取りますが、予後は良好です。乾燥症のために患者のQOLは必ずしも良好とはいえませんでしたが、新薬(塩酸サビメリン、塩酸ピロカルピンなど)の登場でQOLが改善してきています。生命予後を左右するのは、活動性の高い腺外症状や合併した他の膠原病によります。

執筆:2010.7

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