神経鞘腫

神経鞘腫 (Schwannoma; neurilemmoma; neurinoma)

本症は末梢神経の構成細胞であるシュワン(Schwann)細胞由来と考えられる良性腫瘍で、増殖は緩徐です。多くは皮下組織や筋肉などの軟部組織に発生しますが、脳神経(最も多い神経鞘腫の由来は聴神経で、三叉神経>顔面神経>下位脳神経(第9、10、11、12)>目の動きに関わる脳神経(第3、4、6)と続きます。聴神経は前庭神経と蝸牛神経からなり、そのうち前者から発生する神経鞘腫が最も多く前庭神経鞘腫とも呼ばれます)、脊髄神経、稀には消化管など、様々な部位に生じます。
皮内または皮下に生じた場合は、弾性硬の球状または数珠状腫瘍を触れ、軟化すると波動を触れることもあります。通常単発のことが多いですが、数珠状に多発することもあり、圧痛や末梢に向かって放散痛をきたすことがあります。
また、神経線維腫症2型(NF2)では、高頻度に両側性前庭神経鞘腫(聴神経鞘腫)がみられます。NF2は中枢神経系腫瘍を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患で、前庭神経鞘腫(聴神経鞘腫)の他に脊髄神経の多発性神経鞘腫、髄膜腫、膠腫などが生じます。
稀に悪性化して、悪性神経鞘腫になることもあります。一般的には成人にみられ、男女差はありません。

病理所見

細長い腫瘍細胞が密に配列して、細長い核が柵状を呈する帯と、核に乏しい帯とが交互に配置して特有の像(verocay body)を示すAntoni A 型と、腫瘍細胞が粗に配列して方向性がないAntoni B 型とがあります。また、拡張した血管や血管壁の硝子化、出血や古い出血を意味するヘモジデリン沈着、泡沫状マクロファージの浸潤など、多彩な像がみられます。

治療

本症は良性腫瘍なので、圧排されている神経線維を損傷しないよう慎重に完全摘出できれば再発はありません。しかし、病変が瀰漫性や蔓状で近傍の重要臓器や血管などを巻き込む場合は、全摘出が困難になったり、神経の機能障害が残ることもあります。
外科的切除のほかに放射線治療(ガンマナイフなど)も行われることがあります。

補足:中枢神経系(脳と脊髄)と筋肉、感覚器、分泌腺などを結ぶ神経組織を末梢神経といいます。末梢神経線維は髄鞘の有無により有髄線維と無髄線維に分けられます。前者はシュワン細胞の細胞膜が軸索の周囲を何重にも取り巻いた髄鞘(末梢性髄鞘)で囲まれていますが、後者には髄鞘はありません。有髄および無髄神経線維は神経内膜とよばれる結合組織の中に埋まっており、さらに多数の神経線維を膠原線維と扁平な神経周膜細胞からなる神経周膜とよばれる被膜が包んでいます。やや太い神経では、神経周膜で包まれた神経線維の束がさらに集まって神経外膜という結合組織に束ねられています。髄鞘の有無によって神経線維の興奮伝導速度は大きく違います。また、シュワン細胞は神経線維の保護や栄養、再生などにもかかわっています。このようにシュワン細胞は末梢神経にとって重要な細胞です。

執筆:2012.4

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