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サンゴ皮膚炎

サンゴはクラゲやイソギンチャクと同じ仲間である刺胞動物(腔腸動物)に属します。刺胞動物は、口が1つだけ開いた袋(巾着)状の体を持っており、口の周りを触手が取り囲んでいます。触手の中には、刺胞(nematocyst)と呼ばれる毒針を仕込んだマイクロカプセルを持っており、これで他の動物を捕らえます。サンゴは触手で動物プランクトンをとらえて口から体内に取り込み、消化吸収します。サンゴも触手にこの刺胞を持っていますが、ほとんどの種類はこの毒が弱いため、人に対する実害は殆ど無いか、あってもごく軽度ですみます。
サンゴ目による接触皮膚炎の自覚症状は、数時間以内にごく軽度の疼痛で始まることが多く、徐々に浮腫が増強して蕁麻疹様症状を呈したり、皮膚症状は丘疹ないし水疱が集簇した局面を形成します。数日以内に症状は消退することが多いが、症状が長引くと肉芽腫様あるいは苔癬様皮膚炎を呈することもあります。
一方、アナサンゴモドキ(いわゆるミレポラMilleporina類)は、一見普通のサンゴに見えますが、ヒドロ虫(Hydrozoa)の仲間で強い刺胞毒を持っています。刺されると火傷のように痛むことから、英語ではfire coral(火傷サンゴ)と呼ばれています。
因みに、ウンバチイソギンチャクあるいはハナブサイソギンチャクも強い刺胞毒を持つので要注意です。
これら上記の刺症では、即時に灼熱感を伴う紅斑様症状が出現し、引き続いて水疱性病変となり熱傷様となります。血管壁の変性が強いため、疼痛が激しく、手指などの末梢部位ではチアノーゼをきたし、皮膚潰瘍を引き起こすこともあります。刺症初期に、吐気、嘔吐、腹痛、下痢、筋痙攣、呼吸困難、頻脈、低血圧、発熱などの症状を伴うこともあります。初期治療は患部を擦らないようにして海水で洗浄を繰り返し(真水や尿での洗浄禁)、イソプロピルアルコールあるいは酢で刺胞を不活化させます。その後に局所にステロイド外用を行います。
大多数の症例では、数ヶ月程度で症状は消退しますが、時に再発性肉芽腫様あるいは苔癬様皮膚炎を呈することもあります。
また、サンゴの石灰質の石の骨格の断片などで、挫創したり皮膚の中に異物が埋入したりすると二次感染を生じることがあります。挫創に対しては通常の創処置(洗浄、ブラッシング、デブリードメン、異物除去など)と、抗菌剤軟膏塗布や内服が必要な場合もあります。炎症鎮静には局所にステロイド外用、掻痒に対しては抗ヒスタミン剤の内服を行います。

執筆:2011.5