腎性全身性線維症

腎性全身性線維症 (nephrogenic systemic fibrosis; NSF)

本症は重篤な腎不全で腹膜透析や血液透析を行っている患者に、ガドリニウム (Gadolinium; Gd) 造影剤を用いてMRI検査を行った後に、皮膚の腫脹や硬化、疼痛などの症状が比較的急性あるいは遅発性に発症し、進行すると四肢関節の拘縮を生ずる疾患です。

臨床症状

Gd造影剤投与後、数週以内に発症する急性型と、数年経てから発症する遅発型があります。
通常は、疼痛や掻痒感を伴う四肢の皮膚腫脹、発赤、硬化として発症します。顔面と頸部を侵すことは少なく、通常は左右対称性です。皮膚病変は数カ月間進行して、その後四肢関節拘縮が出現します。皮膚所見は全身性強皮症に類似しますが、抗核抗体陽性などの膠原病の存在を示唆する所見は認められず、また顔面を侵さない点も全身性強皮症とは異なります。また、皮膚のみならず、肺・心筋・肝・腎などを侵すことがあり、20%の患者が死亡します。あらゆる年齢に認められ、男女差はありません。

皮膚病理所見

真皮の線維性変化を主体としたもので、病期とともに変化します。
初期には線維芽細胞の増生を認め、病変が完成するに従い真皮樹状細胞の増生を伴うようになる。初期には、真皮の膠原線維が増生して厚く肥厚し、その線維間に著明な間隙(cleft-like spaces)が生じることが特徴的です。間隙には膠原線維と平行して走る弾性線維の肥厚増生と、軽度のムチンが沈着します。その後、CD34陽性の真皮樹状細胞の増生が認められます。また、同時に多核巨細胞の浸潤や、類上皮様細胞を認めることも特徴的とされます。重要な点は、例外的に細血管周囲のわずかかなリンパ球浸潤を見る以外に、病期全体を通じて炎症細胞浸潤がほとんど目立たないことです。

診断

本症の明確な診断基準はまだ存在しませんが、下記に診断指針を示します。

NSF診断指針

1. 前提
  1. 透析を要するほどの腎不全があり、Gd造影MRI検査を受けている
  2. Gd造影MRI検査から数週以内に発症する急性型と、数年経てから発症する遅発型がある
2. 皮膚の臨床所見
  1. 四肢末端の腫脹と疼痛、時に拘縮
  2. 四肢の左右対称性の皮膚硬化、時に色素脱失または沈着
  3. 白色皮疹と、辺縁に潮紅を伴う角化局面の形成(*遅発型ではこの症状を欠くことあり)
3. 皮膚の組織所見
  1. 真皮と皮下脂肪組織の膠原線維増生
  2. 真皮の細胞浸潤(CD34+細胞が増加)
  3. 真皮へのムチンと、時にカルシウムの沈着
4. 血液検査では腎障害を示す異常のみ

発症頻度

Gd造影剤が投与された腎不全患者の全てに本症が発症するわけではありません。現在までに、欧米では500例以上の発症が確認されていますが、本邦では10例程度の報告しかありません。我が国では本症の認知度が低く正しく診断されていない可能性や、欧米に比べてGd造影剤大量投与は極めて稀なので、発症が真に少ないのかもしれません。

治療

本症に対する根本的な治療法は無く、予防が重要です。本症はGd造影剤の量に依存して発症すると考えられていますので、大量投与は控えることも重要です。また、我が国でも、腎不全患者に対する造影剤の使用を制限する指針が発表されています。今後、本症の発生は減少することが期待されますが、遅発型では、MRI検査後数年を経て発症するので、今後も注意が必要です。

執筆:2012.1

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