神経線維腫症2型

神経線維腫症2型(neurofibromatosis type2;NF2)


両側聴神経の神経鞘腫(前庭神経鞘腫)を主徴とし、その他の神経系腫瘍(脳および脊髄神経鞘腫、髄膜腫、脊髄上衣腫)や皮膚病変(皮下や皮内の神経鞘腫、カフェ・オ・レ斑)、眼病変(若年性白内障)を呈する常染色体優性の遺伝性疾患です。
本症の発生率は出生35000~40000人に1人で、人種差はありません。常染色体優性遺伝性疾患ですが、約半数には家族歴がなく、突然変異による孤発例と考えられます。
神経線維腫症Ⅱ型の責任遺伝子は第22染色体長腕(22q12)に存在し、この遺伝子が作り出す蛋白質はmerlin(moesin-ezrin-radxin like protein)と呼ばれ、細胞骨格蛋白に類似した構造の蛋白です。merlinは595アミノ酸から成り、ezrin, radixin, moesin(ERM proteins)などのprotein 4.1 superfamilyに属しています。ERM proteinsは細胞骨格actin filamentと細胞膜のcross-linkerとして働いていますが、merlinは腫瘍抑制因子として別の働きをしていると考えられています。本症では、merlinの遺伝子に異常が生じ、正常なmerlinができないために発症しますが、その詳細な機序は不明です。

症状

発症年齢は10歳以下から40歳以上と様々ですが、10~20歳代の発症が多いです。臨床病態には2つのtypeがあり、重症(Wishart type)では、若年で発症して両側聴神経鞘腫以外にも多数の神経系腫瘍が生じ、腫瘍の成長も比較的速い。軽症(Gardner type)では、25歳以降に発症し、両側聴神経鞘腫以外の腫瘍は少なく、腫瘍の成長も遅い。この相違はmerlin遺伝子の異常の程度の違いによると考えられています。
本症では各種の中枢神経腫瘍が生じるが、最も多い腫瘍は神経鞘腫です。聴神経鞘腫はほぼ全例に、脊髄神経鞘腫も多く認められ、三叉神経鞘腫もしばしば伴います。また、髄膜腫は約半数に合併し、頭蓋内や脊椎管内に多発することも多いです。この他にも脊髄上衣腫も伴うことがあります。
従って、最も多い臨床症状は聴神経鞘腫による症状(難聴・めまい・ふらつき・耳鳴など)です。次に脊髄神経鞘腫の症状(手足のしびれ・知覚低下・脱力など)が出現します。また、三叉神経鞘腫の症状では顔面のしびれや知覚低下も見られます。その他、痙攣や半身麻痺、頭痛を伴うことや、若年性白内障のため視力障害を伴うこともあります。また、末梢神経の神経鞘腫のために、四肢の神経麻痺や変形をおこすこともあります。皮膚病変(皮下および皮内の神経鞘腫、カフェ・オ・レ斑)を伴いますが、数はNFIよりも明らかに少ないです。また、NF1でみられるカフェ・オ・レ斑とは異なる褐色斑がみられることもあります。

診断

MRIあるいはCTで両側聴神経腫瘍が見つかれば、神経線維腫症Ⅱ型と診断します。また、親・子供・兄弟姉妹のいずれかが神経線維腫症II型で、本人に (1) 片側性の聴神経腫瘍、または (2) 神経鞘腫・髄膜腫・神経膠腫・若年性白内障のうちいずれか2種類が存在する場合にも診断が確定します。
また、家族歴がなくても、(1) 片側性聴神経腫瘍、(2) 多発性髄膜腫、(3) 神経鞘腫・神経膠腫・若年性白内障のうちいずれか一つ、のうち2つが見られる場合には神経線維腫症II型の可能性があります。

治療

治療は手術による神経腫瘍の全摘出が原則です。但し、本症に伴う腫瘍は大部分良性腫瘍で、成長が速いものと遅いものがあるため、一般的には、MRIあるいはCTで腫瘍の成長が明らかな時、または腫瘍による症状が出現した時には摘出術を行います。薬物療法、遺伝子治療は未だ困難です。
特に、聴神経鞘腫については左右の腫瘍サイズと残存聴力に応じて種々の病状が想定され、各病態に応じた治療方針が要求されます。一般に、腫瘍が小さい内に手術すれば術後顔面神経麻痺の可能性は低く、聴力が温存できる可能性もありますが、大きな腫瘍の手術では聴力温存は困難で、術後顔面神経麻痺やその他の神経障害を合併することもあります。外科手術の他に、ガンマーナイフなどの放射線手術も小さな腫瘍には有効です。機能保存や生命予後を考慮した治療時期の決定は困難なことも多いです。
一般に、NF1に比較すると本症は予後が悪いと考えられます。

執筆:2011.1

▲PageTop

ページトップに戻る