尋常性白斑

本症は後天性に生じる境界明瞭な脱色素性の白斑を呈する疾患です。若年者に生じ、一定の皮膚分節内に急速に拡大した後固定する分節型白斑と、全年齢層に生涯進行して全身に及ぶ非分節型白斑があります。(以前は限局型の分類もありましたが、最近では分節型白斑あるいは非分節型白斑の初期像と捉えられており、最終的にはどちらかに移行すると考えられています。)

分節型白斑は小児または30歳以下の若年者に初発し、一定の皮膚分節内に急速に拡大多発するが、数ヶ月から1年前後で新生は止まり、そのまま固定化した状態で生涯残ります。稀に数年後に更に拡大する場合がありますが、同じ皮膚分節内に少数の白斑が新生するにとどまります。通常は一皮膚分節のみに白斑が分布しますが、稀に複数の皮膚分節に生じることもあります。尚、小児期発症の分節型白斑では、思春期をはさんで20-30%の自然退縮が期待できます。また、本症型白斑の2%前後に非分節型白斑を続発することがあります。

非分節型白斑は生涯のあらゆる時期に初発し、沈静期と増悪期を繰り返しながら徐々に進行して終には全身に及ぶこともあります。増悪期にはしばしばケブネル現象を伴うため、外傷を受けやすい関節背面やベルトや下着で締め付けられる腰背から下腹部、脂漏性皮膚炎などの炎症症状が現れやすい前額髪際や耳後部、腋窩などが好発部位になります。ある程度数が増えると左右対称的に見られることも多い。また、サットン白斑(後述)の合併をみることもあります。


合併症状

1)白毛
分節型白斑では、有毛部に白斑を生じた場合、その部位の毛の一部が脱色することがあり、る、しばしば眉毛や睫毛の白毛化がみられる。一方、非分節型白斑では白斑が認められない皮膚の硬毛にも脱色がみられることがあります。

2)サットン白斑
サットン白斑は母斑細胞母斑(主に黒あざ)を中心として周辺に円形に拡大する白斑のことです。サットン白斑と尋常性白斑との合併はよく知られています。

3)炎症性辺縁隆起型白斑
通常の非分節型白斑と区別できない白斑のうち、健常皮膚との境界部が数mmの幅で軽度発赤し隆起して浸潤を触れる特殊な症例がある。白斑辺縁の線状紅斑は健常皮膚方向に移動した後に脱色斑を残します。このため、尋常性白斑ではないとの異論もあります。

4)自己免疫疾患
尋常性白斑に自己免疫疾患の合併率が高いことについては多数の報告があります。最も頻度の高いのは甲状腺疾患(甲状腺機能亢進や低下、バセドウ病、甲状腺炎など)で、非免疫性甲状腺疾患との合併率は高くないことが確認されています。自己免疫性甲状腺疾患の発症時期は、白斑に先行する場合と続発する場合もあり、一定していません。
また、インシュリン依存性(自己免疫性)糖尿病も頻度の高い合併疾患の一つです。その他にも、アジソン病、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎などとの有意な合併率の上昇が報告されています。

5)眼病変
尋常性白斑の患者が眼の異常を訴えることは殆どありませんが、仔細に検討すればブドウ膜や脈絡膜病変の発症頻度が高いとする報告もあります。尋常性白斑でおかされる色素細胞の数が全体の数から見れば少ないために、臨床的な問題が生じないのであろうと考えられています。

病因

下記の自己免疫説、神経説、Redox制御異常説などがありますが、詳細は依然不明です。

1)自己免疫説
多くの自己免疫疾患との合併率が高く、各種自己抗体の保有率も高いことから、自己免疫説が有力と考えられていました。実際、活動期尋常性白斑では、高率に抗メラノサイト抗体を持つことやメラノサイト傷害性T細胞が高率に検出されることなどから、メラノサイトに対する自己免疫現象を認めますが、この現象が原因なのか結果なのかなど、未解決の問題が残されています。

2)神経説
皮膚分節一致性の尋常性白斑が存在することは、メラノサイト破壊と神経との関係を示唆しています。分節型白斑病巣内での自律神経機能異常や血流の増加、α-、β-カテコラミン受容体の機能亢進などが示唆されています。神経終末によるメラノサイトの形態や機能への影響も考えられています。カテコラミン濃度の上昇が活動期白斑患者で示されており、酵素活性の抑制や活性酸素の発生によるメラノサイトへの直接的細胞毒性、α-アドレナリン受容体の活性化による間接的毒性も考えられます。

3)Redox(酸化還元反応)制御異常説
白斑表皮にH2O2の蓄積とカタラーゼの低下があることが報告されて以来、白斑病巣にH2O2が蓄積してメラノサイトを傷害することで白斑が生じるのではないかと推察され始めている。蓄積するH2O2の由来は未だ特定されていませんが、カタラーゼ、テトラハイドロビオプテリン、カルシウムとチオレドキシンレダクターゼ、モノアミンオキシダーゼなどの代謝異常、病巣に浸潤する炎症細胞などが考えられています。

治療法

白斑治療は概して難治であることも少なくないので、根気強く治療を続けていくことが重要です。一般に、分節型白斑の治療としては固定期の手術療法が奏効することが多く、非分節型白斑では発症早期からステロイドやタクロリムスの外用、PUVAやナローバンドUVB照射などの治療が勧められます。また、非分節型白斑に対して手術療法を行って一時改善しても再脱色する可能性が高いので、原則的には手術はしない方が無難です。陳旧性白斑の汎発例では脱色療法やカムフラージュ法も考慮します。

1)外用療法
■ステロイド
現在でもステロイド外用が第一選択です。皮膚萎縮など長期ステロイド外用の副作用に注意しながら治療をします。
■タクロリムス
比較的最近の治療法で汎発型尋常性白斑に使用され、特に顔面には著効を示すことが多いとされます。現在のところ、タクロリムスは尋常性白斑に対する保険適応はありません。
■活性型ビタミンD3
本剤とステロイド外用との併用、あるいは各種光線治療との併用で色素再生の効果があるとの報告もあるので、試してみる価値はあります。

2)光線療法
これまではPUVA療法が中心だったが、Narrow band UVB療法(NB-UVB)が出現して、前者より確実に効果があり治療も簡便であるため、保険適応となり最近は普及しつつありますが、治療施設はまだ限定されています。
エキシマライト照射の有効性も報告されていますが、まだ本機は普及しておらず、特定の施設のみでの治療になり、保険適応はありません。

3)外科治療
保存的治療に反応しない場合に考慮する。特に分節型尋常性白斑に対して効果がある。点状植皮術、培養メラノサイト植皮術、吸引水疱による表皮植皮術、培養表皮移植術などが考案されています。しかし、特殊な手術なので、治療施設も限定されます。

4)脱色療法
尋常性白斑が広範に及ぶ場合は、健常部位を脱色することも有効な場合があります。
10-20%のモノベンゾン軟膏を数ヶ月外用すると、正常皮膚の脱色が始まり、1-2年で非可逆性の色素脱失になります。但し、長期外用による接触皮膚炎や日光照射による色素再生の可能性があります。
(※当院ではモノベンゼン治療は現在のところ行っておりません)

5)その他の治療
カバーマーク、ダドレス、パーフェクトカバーなどによるメーキャップで白斑部位を隠してしまう化粧術も有効です。治療に抵抗する多発性の白斑に対して使用することで、患者の精神的・整容的安定にもつながります。

補足(鑑別疾患)

■脱色素性母斑
生下時または生後まもなくからみられる境界鮮明な不完全脱色斑で、孤立性の小白斑から分節状、帯状のものなど、大きさや形は様々で、境界の辺縁が刷毛で掃いたような鋸歯状を呈することが多い。病変内にメラノサイトは存在するが、メラニン量が減少している。
色調が病巣のどの部分をとっても完全な白斑ではなく、一様な不完全脱色斑であることから尋常性白斑と鑑別できる。治療は難渋することが多く、表皮移植や培養メラノサイトの移植が適応になるが、施設は限定される。目立つ部位にはメーキャップで白斑部位を隠す化粧術も欠かせない。

■まだら症
常染色体優性遺伝性の疾患で、生下時または生後数ヶ月までにほぼ左右対称に完全脱色斑を認め、生涯を通じてほぼ不変である。前額前頭部、腹部、両肘窩、両膝窩を中心に見られ、白斑の分布と形に特徴がある。前頭では三角形または菱形、腹部では不正多角形と角ばった形を示し、肘窩と膝窩では角ばった形はない。白斑内に点状ないし斑状の褐色斑を残している。また、白斑病変内にメラノサイトが存在しない。従って、外用療法や光療法はほぼ無効であるため、表皮移植や培養メラノサイトの移植が適応になるが、施設は限定される。目立つ部位にはメーキャップで白斑部位を隠す化粧術も欠かせない。

Vogt・小柳・原田氏病
発熱と頭痛、嘔気などの髄膜刺激症状に続いて、ブドウ膜炎、内耳症状(耳鳴り、眩暈、難聴など)を生じ、数ヶ月以内に脱毛、白毛、白斑などの皮膚症状が出現する。白斑自体は形態学的に非分節型白斑と区別できないが、先行する他臓器症状や広範囲の白毛があることで鑑別できる。

執筆:2010.2

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