全身性エリトマトーデス

 全身性エリテマトーデスはDNA-抗DNA抗体などの免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患です。症状は治療により軽快しますが、寛解と増悪を繰り返す慢性経過をとることが多いです。

全国疫学調査の結果、1991年の全国受療患者数は23,300人でした。発病率は10万人あたり10~100人と推定されており、若年女性に好発し、発症年齢は20~40歳代であることが多いです(男女比は約1:10)。
一卵性双生児での全身性エリテマトーデスの一致率は14-58%程度であることから、何らかの遺伝的素因(本症を引き起こす明確な遺伝子は未だ特定されていない)を背景として、環境因子(感染、性ホルモン、紫外線、喫煙、薬物など)が加わって発症するものと推測されています。その結果、自己抗体である抗DNA抗体が過剰に産生され、抗原であるDNAと結合して免疫複合体が形成され、これが組織に沈着して補体系の活性化などを介して炎症が惹起されると推測されています。
 

症状

(1)全身症状
全身倦怠感、易疲労感、発熱、呼吸困難などが先行することが多いです。
(2)皮膚・粘膜症状
蝶形紅斑とディスコイド疹(円板状紅斑)が特異的皮疹です。
蝶形紅斑は頬~鼻背~鼻根に症状が及ぶことが多く、日光暴露で増悪します。皮膚生検では、真皮表皮結合部にIgGの沈着が認められます(ループスバンドテスト陽性)。
ディスコイド疹は顔面・耳介・頭部・関節背面などによく認められ、当初は紅斑ですが、やがて硬結・角化・瘢痕・萎縮をきたして慢性に経過します。また、耳介や指趾に凍瘡様皮疹が出現したり、皮下硬結を生じてその後陥凹を生じてくることもあります。
この他にも亜急性型皮疹として、環状紅斑や乾癬様皮疹が体幹・四肢に出現したりすることもあります。特殊型として、皮膚に結節性ムチン沈着を生じたり、水疱症状が出現することも時に認めます。
非特異的皮疹として、凍瘡様紅斑や爪囲紅斑、頭髪の脱毛、リベド(網状皮斑)、アクロチアノーゼ(肢端紫藍症)、レイノー現象、日光過敏なども認めることがあります。口腔、鼻咽腔に無痛性の潰瘍が出現することもあります。
(3)筋・関節症状
筋肉痛、関節痛は急性期にしばしば認められます。四肢に多発性関節炎もみられますが、X線所見で骨破壊を伴うことはないのが特徴です。
(4)腎症状
内臓諸臓器の中で最も侵されやすい臓器であるため、SLEの生命予後を最も左右します。糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となります。急性期では蛋白尿がみられ、尿沈渣では赤血球、白血球、円柱などが多数出現します(telescoped sediment)。持続性蛋白尿を認める場合は、腎炎の病型によって予後を左右するため、腎生検を考慮します。
(5)神経症状
中枢神経症状を呈する(CNSループス)場合は重症であり、腎症状に並んで生命予後に影響します。うつ状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣、脳血管障害がよく認められます。髄膜炎、脳炎、脳神経障害、多発単神経炎、ギラン・バレー症候群も時に認められます。
 (6)心血管症状
心外膜炎はよく認められ、心タンポナーデになることも稀にあります。心筋炎を起こすと、頻脈、不整脈が出現します。弁膜病変は一般に無症状ですが、軽度の大動脈弁不全や僧帽弁不全を起こすことがあります。また、弁尖に疣贅を形成してLiebman-Sachs 心内膜炎を呈することもあります。また、反復する血栓性静脈炎を起こす場合には、抗リン脂質抗体症候群の合併が疑われます。
(7)肺症状
胸膜炎は急性期によく認められます。この他、間質性肺炎、瀰漫性肺胞出血、肺高血圧症は予後不良の病態として注意が必要です。免疫低下をきたしやすいので、ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎も生じやすい。抗リン脂質抗体症候群に基づく肺血栓塞栓症も生じることもあります。
(8)消化器症状
腹痛がみられる場合には、腸間膜血管炎やループス腹膜炎に注意します。稀に膵炎を起こすこともあります。肝機能障害は軽度かつ一過性のことか多いです。
(9)造血器症状
自己免疫性溶血性貧血はよく認められ、直接クームス試験陽性で、網状赤血球の増加とハプトグロビンの低下などの所見から診断されます。白血球減少や血小板減少もよくみられ、末梢での破壊によるものと考えられています。抗リン脂質抗体症候群では、血栓症の多発、血小板減少に基づく出血症状などがみられるが、APTTの延長と共に抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなどが出現し、梅毒血清反応の生物学的偽陽性などがみられることもあります。
(10)その他
リンパ節腫脹は急性期によく認められます。間質性膀胱炎が生じることもあります。
 

検査所見

抗核抗体はSLEではほぼ全例に認められ、感度が高いが特異性は低いです。SLEに特異的な抗核抗体は抗2本鎖DNA抗体(dsDNA抗体)、抗Sm抗体です。dsDNA抗体はループス腎炎との関連が深く、その抗体価はその活動性を反映します。この他に、血沈亢進はSLEの炎症反応の指標になり有用ですが、妊娠中は指標にはなりにくい。また、血清補体価低下(C3,C4, CH50)も病勢の指標として有用です。
尚、抗リン脂質抗体症候群が合併すると習慣性流産になりやすいため、このチェックも重要です。
 

合併疾患

一般に膠原病は他の膠原病を合併しやすい傾向があります。最も多いのは抗リン脂質抗体症候群ですが、シェーグレン症候群も合併しやすいです。その他にも皮膚筋炎・多発筋炎、全身性強皮症との合併もあります。特に後者との合併は、それぞれの診断基準を完全に満たすならオーバーラップ症候群と呼ばれ、全ての診断基準を不完全にしか満たさないものの中には混合性結合組織病という別の疾患に診断されることもあります。

治療

(1) ステロイド剤
全身性エリテマトーデスの免疫異常を是正するためには、ステロイド剤の投与が必要不可欠です。一般には経口投与で行ない、重症度により初回量を決定します。軽症例ではプレドニゾロン換算で1日15~30mg、腎症のあるものは40mg以上、治療抵抗性のものは60~80mgが用いられます。初回量は2~4週間前後継続後、臨床症状、理学的所見、検査所見などの改善を指標として2~4週毎に10%を目安に漸減します。疾患活動性の指標としては、血清補体価、C3、C4、抗DNA抗体価(特に抗体dsDNA抗体) が有用です。血沈、尿蛋白、尿沈渣、血算などの検査所見も参考となります。ステロイド抵抗性の症例では、メチルプレドニゾロン1日500~1,000mgを3日間点滴静注するステロイド・パルス療法が用いられます。ステロイド剤の維持量としては、プレドニゾロン換算で1日10mg以下が望ましいとされます。ステロイドによる副作用には、肥満、骨粗しょう症、骨壊死、高血圧、高脂血症、糖尿病、白内障、緑内障、易感染性、体液貯留傾向などがあるので、注意を払いながら慎重に治療を行います。
(2) 免疫抑制剤
ステロイド抵抗性の症例やステロイド剤に対する重篤副作用が出現する症例においては免疫抑制剤の投与が考慮されます。免疫抑制剤としては、アザチオプリン (1日量50~100mg)あるいはシクロホスファミド (1日量50~100mg) の経口投与がよく用いられます(保険適応外)。しかし最近では、シクロホスファミド500~750mgを1~3カ月毎に点滴静注するパルス療法が難治性病態に対してよく用いられます(保険適応外)。本法は有効性が高いばかりでなく、出血性膀胱炎、骨髄抑制などの副作用の発現が経口投与に比較して少ない。また、最近ではミゾリビンやタクロリムスやミコフェノール酸モフェチル投与は、ループス腎炎に対して有効であることが報告されています。
(3) 腎機能保護治療
高血圧を伴う場合には、腎機能障害の進行を防ぐためにも積極的な降圧療法が必要となります。腎機能が急速に悪化する場合には、早期より血液透析への導入を考慮します。  
急性憎悪型では、急性期を脱すれば透析を離脱する可能性があります。慢性憎悪型には早めに内シャントを作成する必要があり、持続的な透析が必要となります。抗リン脂質抗体症候群を合併している場合には、積極的な抗凝固療法が行われます。
(4)その他の治療
病態に応じては血漿交換や免疫グロブリン大量投与が行われることがあります。新しい治療法としてリツキシマブ、造血幹細胞移植が脚光を浴びています(いずれも日本国内での適応はない)。
(5) 非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)
発熱、関節炎などの軽減に用いられます。ただし、全身性エリテマトーデス患者は薬剤アレルギーを起こしやすいこと、 NSAIDsの長期投与は消化管潰瘍、肝・腎障害などを起こしやすいことなどに注意することが必要です。
 

予後

本症は寛解と憎悪を繰り返して慢性の経過をとることが多いです。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となっています。予後を左右する病態としては、ループス腎炎、中枢神経ループス、抗リン脂質抗体症候群、間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症などが挙げられます。
死因としては、従来は腎不全でしたが、近年では免疫不全による感染死が死因の第一位を占めています。一方、予後が改善しているため、病期後期にはむしろ虚血性心疾患による死亡が増えており、ステロイドによる副作用のひとつとして数えることができるかもしれません。
 

本症と妊娠・出産について

本症と妊娠との関係について、妊娠により本症の病勢が悪化することが分かっています。従って、病勢がコントロールされていないときに妊娠を計画することまたは無計画に妊娠することは勧められません。しかし、十分に症状がコントロールされ、継続的に医療機関の管理を受けていれば、妊娠、健康な新生児の出産が十分可能であることが現在ではわかっています。
母親が抗リン脂質抗体症候群を合併している場合は、胎盤血管の血栓形成による習慣性流産になりやすいので、少量アスピリンを内服することが多い。また、母親が抗SS-A抗体や抗SS-B抗体を有する場合、抗体が胎盤を経由して胎児に影響を与え、新生児エリトマトーデスの発症(先天性房室ブロックと環状紅斑)に繋がります。環状紅斑は生後6ヶ月以内に自然消腿しますが、房室ブロックがあると徐脈や心不全による胎児水腫になり、新生児死亡率20%前後、生児も半数以上にペースメーカー装着が必要になります。
*本症は特定疾患のため、医療費助成の制度があり、「特定疾患医療受給者証」の交付を受けると治療にかかった費用の一部が助成されます。

執筆:2011.1

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