鰓性嚢腫

鰓性嚢腫 (branchial cyst)

本症は、頸部に生じる先天性の瘻孔または嚢腫です。瘻孔には、皮膚から口腔や咽頭まで瘻管が繋がっている完全型や、瘻管が途中で中断する不完全型があります。また、この瘻管が粘液貯留などで拡張すると嚢腫になります。通常片側性ですが、時に両側性に生じることがあります。

症状

先天性ですが、幼少時には通常症状はありませんが、思春期頃から嚢腫は徐々に大きくなり触知できるようになり、時に感染して腫脹や圧痛が生じて瘻孔から排膿することがあります。また、かなり大きな嚢腫になると周囲組織を圧迫して、嚥下障害、発声障害、呼吸困難、喘鳴などが生じることがあります。

原因

胎生期に鰓弓を分けている鰓裂(鰓溝と咽頭嚢を合わせた呼び方)の遺残によって生じる側頚瘻や側頚嚢腫と、舌盲孔から発生した甲状腺原基が喉頭まで移動する際に舌と連絡している甲状舌管が遺残して生じる正中頚嚢胞の2つに分けられます。
胎生期の第1鰓溝からは将来外耳道が形成されるため、耳介の尾部や後面から下顎角にかけて瘻孔の皮膚開口部があり、耳後部や外耳道に瘻孔が向かう場合は第1鰓裂由来と考えられます。しばしば顔面神経に並走することがあります。
第2-4鰓溝は外胚葉性上皮で覆われた一つの腔(頚洞)が形成され、成長に伴い消失してくるので、これが遺残した瘻孔の皮膚開口部は、下顎角直下から鎖骨までの間の胸鎖乳突筋前縁に見られ、反対側の開口部はその遺残した鰓裂により異なり、口腔内や咽頭などに開口します。 第2鰓裂由来の瘻孔または嚢腫が最も頻度が高く、頚動脈分岐部を経て口蓋扁桃窩に開口します。瘻孔が総頚動脈後面から内頚動脈後面を走行し、舌咽神経と併走して下咽頭側壁や梨状窩へ開口する場合は稀な第3鰓裂由来、反回神経に沿って走行し大動脈弓で反転した後に上行する場合は稀な第4鰓裂由来とされますが、不完全型などでははっきりしないこともあります。
甲状舌管遺残の場合、甲状腺原基が移動する舌盲孔から喉頭までの経路で発生します。半数以上は舌骨に密着するかやや尾側にみられ、大多数は正中位に存在し、稀に左右に偏位することがあります。

診断

超音波エコー検査、CTやMRI検査などにより確定します。

鑑別診断

リンパ管腫、血管腫、唾液腺嚢腫、表皮嚢腫、類皮嚢腫などが挙げられます。

病理所見

嚢腫あるいは瘻管壁は、重層扁平上皮あるいは円柱上皮で構成され、粘膜下にリンパ球浸潤やリンパ濾胞を伴います。

治療

無症状の場合は経過観察しますが、時に感染を伴うこともあるので、抗生剤による治療を行います。
炎症や感染がない状態で、瘻管や嚢腫の外科的摘出を行います。しかし、解剖学的に重要血管や神経が近接していることも多いため、全摘出が出来ないこともあります。
OK-432(ピシバニール)による硬化療法も行われることがあります。

執筆:2012.3

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