リンパ管腫

リンパ管腫(lymphangioma)

本症は先天性あるいは後天性に生じる良性の稀なリンパ管奇形で、あらゆる部位に生じ、幅広い年齢層に生じますが、生下時に50%程度出現し、2歳までに約90%が出現します。頭頸部に好発しますが、四肢近位部・臀部・躯幹などにも生じます。時に腸管、膵臓、腸管膜などにも生じることがあります。遺伝性はなく、男女差もありません。
本症が先天性に生じる場合は、超音波エコー下で胎児期から病変が生じていることを確認できます。本症が後天性に生じる場合は、外傷、炎症、リンパ管狭窄や閉塞などにより生じることがあります。
本症は緩徐に増大する、パン生地のような軟らかい腫瘤で、悪性変化を生じることはありませんが、気管を圧迫するような場合は合併症を生じることがあります。

症状

本症は、以下の3 種類に細分類されていますが、混在することもあります。

1) 限局性リンパ管腫(lymphangioma circumscriptum)

生下時あるいは生後数年以内に、皮膚表層に直径数mmの透明な小水疱が集簇して、不規則な局面を形成します。水疱内で出血を起こして内容物が紅色調を呈したり、表皮が肥厚して疣贅様にみえることもあります。四肢近位部、躯幹、腋窩、口腔内(舌など)、陰嚢などに生じることが多いです。病理組織学的には、毛細血管と同程度の細いリンパ管拡張が真皮乳頭層に認められるのが特徴です。

2) 海綿状リンパ管腫(lymphangioma cavernosum)

幼少時期から生じることが多く、色調は正常色~淡紅色~青紫色で、皮下に深在し周囲組織に浸潤しますが、通常は病変部皮膚には浸潤しません。嚢胞は非常に小さく嚢胞以外の組織が多い無痛性の腫瘤を形成します。頭頚部、四肢などに好発します。病理組織学的には、真皮深層および皮下での不規則なリンパ管拡張を認め、周囲の間質は多少の炎症細胞を伴う粗造な線維性結合組織です。時に周囲の筋肉まで浸潤していることがあります。

3) 嚢胞性リンパ管腫(lymphangioma cysticum or cystic hygroma)

本質的には海綿状リンパ管腫と同質のものですが、幼少時期から皮下深部に大きな軟部組織腫瘤を形成して、頚部、腋窩、鼡径部などに好発します。病変には大小様々な嚢胞が多数認められ、淡黄色の蛋白質豊富な液体で満たされています。波動を触れ、穿刺にてリンパ液を吸引できます。病理組織学的には、海綿状リンパ管腫と同様の所見です。

4) 血管リンパ管腫 (hemangiolymphangioma)

病理組織学的に、血管構成成分を含むリンパ管腫です。

原因

胎生期に、皮下の原始的リンパ嚢が周囲の正常なリンパ系に接続できずに生じたのではないかと考えられていますが、正常に接続できない原因は不明です。また、嚢胞性リンパ管腫は、しばしば染色体異常(ターナー症候群、ダウン症候群、ヌーナン症候群など)と合併することがあります。

合併症

病変から、リンパ液漏出、出血、二次感染が生じることがあります。頚部に巨大な嚢胞性リンパ管腫が生じると、嚥下障害や、呼吸困難になることがあります。嚢胞性リンパ管腫を併発する染色体異常が疑わる場合は、精査します。

診断

MRI やCT あるいは超音波エコーなどの画像検査により、腫瘤の解剖学的位置、性状、三次元構造が容易にわかります。また、嚢胞を穿刺して、その内容物の細胞診や生化学検査などを行い、リンパ液であることを確認することもあります。最終的には、切除された組織を病理組織診断して確定します。この他にも、リンパ管シンチグラフィを行うこともあります。

治療

一般に、本症は外科的に完全切除できれば完治できますが、不完全切除すると局所再発しやすいです。特に病変が周囲組織(神経、血管、筋肉など)に浸潤している場合は、正常組織を合併切除すると機能的・整容的に後遺症を残す可能性が生じることも多いため、不完全切除になりがちです。また、術後創部からリンパ液漏出することが長期に持続しやすいため、持続吸引装置の留置と二次感染対策を怠らないことが肝要です。
硬化療法(病変部に硬化剤を注入して病変を縮小させます)も、本症には有効です。硬化剤としては、ピシバニール(OK-432)、高張食塩水、無水エタノールなどが使用されています。特に、嚢胞性リンパ管腫には有効であることが多いですが、海綿状リンパ管腫に対しては効果が十分ではありません。
この他に、プロプラノロールが難治性リンパ管腫有効だったとの報告もあります。 本症には放射線療法やステロイド療法は効果がありません。

執筆:2012.5

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