Nail Patella 症候群

Nail Patella 症候群 (nail patella syndrome)

本症候群は、爪甲、膝及び肘関節の形成不全、腸骨の角状突起 (iliac horn) の4主徴を呈する稀な常染色体優性遺伝疾患です。1/50000人の頻度とされます。

原因

原因遺伝子は9q33.3に位置するLmx1b (LIM-homeodomain transcription factor 1 beta)で、胎芽の器官形成期に胎肢の背側の間葉に発現して背腹方向の形成に関与し、眼の前方組織の発達、神経系の発達にも関与しています。また、腎においては出生後も糸球体基底膜基本骨格を作るIV型コラーゲンα3、α4鎖の発現や有足突起細胞の分化にも関与しています。

症状

生下時より爪甲の変化を認め、無形成、低形成、匙状爪、割裂、縦走する隆起などがあります。左右対称に生じて、拇指の変化が最も顕著で、小指に向かうにつれて症状の程度が軽くなります。また、足趾の爪甲は手指の爪甲の障害程度に比べると軽症とされます。爪半月が遠位側に鋭く尖った三角形 (triangular lunulae) を示すことも特徴の一つです。
手指DIP関節背側の皮膚皺襞の消失を認めます。
骨異常には、膝蓋骨形成不全(膝蓋骨の欠損あるいは低形成)、肘関節異常(上腕骨小頭、橈骨頭などの低形成)による機能制限、腸骨の角状突起、側彎症、脊椎すべり症、腰椎前彎、漏斗胸、扁平足などがあります。腸骨の角状突起は本症候群の特徴的所見ですが、通常は体表から触知できないため、X-PやCTで診断します。
眼症状として、Lester iris(虹彩の内側縁周囲に見られるクローバー葉状の色素異常)、開放隅角緑内障、眼圧上昇を認めることもあります。
本症候群の予後は腎症により左右されます。12-55%で腎症を合併して、通常は無症候性の蛋白尿として経過しますが、5%の症例で末期腎不全へ進行します。
腎症は糸球体腎炎の微小変化から巣状糸球体硬化症まで様々な形態を呈しますが、電顕で糸球体基底膜の緻密層に虫食い像を認めるのが特徴的です。 その他の症状には、甲状腺機能低下症、注意欠陥・多動性障害、便秘、過敏性腸症候群、手足の温痛覚の低下や異常知覚、末梢循環不全、癲癇、歯牙の脆弱性なども合併することがあります。

治療

腎機能を定期的にチェックし、高血圧や蛋白尿に対してACE阻害剤を投与します。末期腎不全に対して人工透析や腎移植も考慮します。 緑内障に関しても定期的チェックを行い、眼圧上昇を抑制する点眼薬で対処します。
関節痛に対しては、理学療法、装具、鎮痛剤などで対処しますが、NSAIDsを使用して、腎機能を悪化させないように注意が必要です。 整形外科手術に関しては、膝蓋骨再形成術、橈骨頭切除、関節置換術などが行われます。

執筆:2014.4

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