日光皮膚炎(日焼け)

日光皮膚炎(日焼け、サンバーン)

本症は過度の日光照射によって紅斑、水疱が形成される病態です。光線照射数時間後に照射部に一致して紅斑が生じ、これが次第に浮腫状となり、表皮下水疱を形成します。照射後12~24時間をピークとして、以後症状は徐々に軽快し、数日で落屑や色素沈着、ときには色素脱失を残して治癒します。
日焼けを起こす紫外線の力を比較すると、UVBはUVAの600-1000倍強いといわれています。しかし、UVAは日光に大量に含まれていますので、海水浴などで真赤に日焼けした場合、その責任割合はUVBが7-8割、UVAが2-3割と見積もられています。
予防にはサンスクリーンの塗布を行います。
治療には冷湿布やステロイド軟膏、水疱形成が生じた際には熱傷に準じた治療が必要です。

紫外線と皮膚障害

日光に含まれる紫外線(Ultraviolet,UV)は、波長の長い方からUVA(400-315nm)、UVB(315-280nm)、UVC(280nmm未満)に分類されます。波長が短いほど傷害性が強く、波長が長いほど皮膚の深くに入りこむという性質もあります。地上に到達する紫外線のうち、90%はUVA(波長320-400nm)で、10%がUVB(波長290-320nm)ですが、UVBが最も強力な影響を及ぼす紫外線です。290nmより短波長の紫外線UVCはオゾン層で吸収されて地上には到達しません。UVBもオゾン層で大半が吸収されますが、その一部が地上に到達しており、近年オゾン層の破壊による増加が危惧されています。特に、南北両半球の中高緯度地域では紫外線量が6-14%も増加しているとの報告もあります。
紫外線(UVB)の強さは時刻・季節・天候・地形などにより変化します。一般に正午前後、6-8月が最も紫外線が強くなり、標高が300m上昇すると紫外線は約4%増加し、雪・水面・砂・アスファルトなどは紫外線を強く反射するため紫外線が強くなります。また、日本では北から南にいくにつれて紫外線量が増加し、沖縄は北海道の約2倍量の紫外線が地上に到達します。
UVAは雲や窓ガラスを通り抜けて、UVBの20-30倍が常時注がれています。UVAは真皮深層まで到達して様々な生体内分子に吸収されて、その結果生じる活性酸素を介して細胞の膜脂質・蛋白質・DNA などに酸化損傷を与え、光老化(シミ、皺など)や光アレルギーを引き起こし、弱いながら皮膚発癌作用もあります。また、UVAはUVBの作用を増強する効果もあります。
UVBは真皮を透過しないものの、表皮細胞の核内にあるDNA 遺伝子を直接傷害して、日焼けやシミを生じさせて光老化を促進し、また、UVAと同様に活性酸素を介した細胞障害性もあります。さらに、免疫反応を低下させて単純性疱疹や帯状疱疹の引き金となり、皮膚癌(有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫)の原因にもなります。
この他にも、紫外線は翼状片、白内障などの危険因子と考えられています。最近では、UVA とUVB共に、真皮内のコラーゲンを壊す酵素の働きを助長して皺の原因になるといわれています。 このように、長期の紫外線曝露は光老化による慢性皮膚障害(シミ、皺、たるみ)や皮膚癌・白内障などの原因になり、また、免疫抑制を生じたり、酸化反応(活性酸素の遊離)を誘起することから、紫外線対策は大変重要になります。
一方では、UVBは生理的にはビタミンDを合成する重要な役目を果たしていますが、1日に必要なビタミンDは顔や手に15分程度の紫外線暴露で十分合成されると考えられています。また、紫外線の一部波長は、乾癬やアトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患に改善効果があります。

皮膚の光防御機構

生体には、下記のような本来備えている光防御機構がありますが、完全には防御が出来ないので、紫外線対策が重要になります。
  1. 角層における紫外線吸収と散乱:特に、ヒスチジン・チロシン・トリプトファンなどのアミノ酸やウロカニン酸による吸収
  2. 表皮内のメラニンによる吸収と散乱および活性酸素の消去
  3. 脂肪組織中に蓄積されたβカロチンなどの活性酸素消去剤
  4. スーパーオキシドジスミュターゼ(superoxide dismutase)やグルタチオン・ペルオキシダーゼ還元酵素
  5. 紫外線照射後のDNA損傷の修復能力

スキンタイプ

紫外線に対する反応は皮膚の色によって異なります。白人は元々メラニン色素が少なく、紫外線照射後でも赤くなるだけで黒くはなりません。一方、黒人は元々大量のメラニンが皮膚にあるため日焼けしません。黄色人種は紫外線にあたると最初赤くなり、その後多少黒くなる傾向があります。このように紫外線に対する反応性の違いで6つのフォトスキンタイプに分類されます。

フォトスキンタイプ
スキンタイプ反応
I常に赤くなり,決して皮膚色が濃くならない
II常に赤くなり,その後少し皮膚色が濃くなる
III時々赤くなり,必ず皮膚色が濃くなる
IV決して赤くならず,必ず皮膚色が濃くなる
V皮膚色がとても濃い
VI黒人

日本人はおよそスキンタイプII~IVに該当します。光老化を起こしやすく、皮膚癌になりやすいのはスキンタイプのI&IIに属する色の白い人です。
紫外線によって起こる皮膚癌はいずれも高齢になってから出現します。これからの高齢化社会で益々その頻度が高くなることが懸念されます。若いうちから余分な紫外線を浴びない工夫が必要です。

紫外線予防対策

  1. 物理的遮断
    1. しっかりした織目や網目の生地の衣服の着用:太陽光が透けない生地で、白や淡い色調のものは紫外線を反射させます。生地の素材は木綿およびポリエステル・木綿混紡が紫外線防止に適しており、長袖・長ズボンなどの体を覆う部分の多い衣服が、紫外線暴露を少なくします。
    2. 帽子の装用:幅の広いつばのある帽子が紫外線防止に効果的です。
    3. サングラスの装着:紫外線カットのレンズを使用していないサングラスを装用すると、太陽の光が少なくなるために瞳孔が散大して相当量の紫外線が眼の中に入るため、かえって危険です。
      従って、サングラスを装用する場合は、紫外線防止効果が明示してあるものを使用して下さい。また、最近では通常の眼鏡に紫外線カットのレンズが使用されていますが、紫外線は正面からだけでなく、上下、側方、後方からも眼に入ってくるため、レンズサイズの小さな眼鏡や顔の骨格に合わない眼鏡では紫外線に対して十分な防止効果を期待できません。従って、ある程度の大きなレンズで顔にフィットする眼鏡を装用するようにして下さい。
    4. 日傘の使用:日差しの強いときの外出などに、日傘の使用は効果的です。最近では紫外線防御機能を高めた日傘も登場しています。
    5. 日陰の利用:日陰では紫外線暴露量は減りますが、間接的に空中で散乱したり、地面や建物からの反射もあるので、日陰であっても紫外線を浴びることを忘れないで下さい。
    6. サンスクリーン剤の使用:外出前に皮膚に塗布し、屋外で長時間活動する場合には定時的に塗布しなおす必要があります。一般にサンスクリーン剤には吸収剤と散乱剤の2種類があり、両者を組み合わせたものもあります。水泳や汗をかいてサンスクリーン剤が取れにくい耐水性のものも製品化されています。詳細は後述します。
  2. 不必要な紫外線暴露の回避
    屋外で様々なスポーツなどを楽しむことは、心身のリフレッシュにとても有意義なことですが、小麦色の肌を求めて海岸での不必要な日光浴は避けるべきです。特に、小児期から無用な紫外線暴露を避ける生活習慣を徹底しましょう。
  3. 紫外線を浴びやすい場所には注意
    海水浴する場合は勿論ですが、赤道近くの国へ旅行する場合、スキー(特に春スキー)をする場合、山登りなどでは紫外線が強くなるので、防御を忘れず励行しましょう。

サンスクリーン剤

サンスクリーン剤に含まれる主要成分として紫外線吸収剤と散乱剤があり、両者は単独あるいは組み合わせて使用されています。吸収剤はUVB領域の紫外線をよく吸収しますが、UVAを効果的に吸収する成分は限られているのが現状です。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛が主体で、UVBからUVA領域まで広く遮断します。以前は外用すると白くなるものが多かったのですが、最近では改良されて使いやすい製品が増えています。吸収剤は稀にかぶれを起こすことがあるので、発赤や掻痒が生じた場合はノンケミカルとか吸収剤未使用などと表示されている散乱剤だけの製品が良いでしょう。
サンスクリーン剤の性能は以前よりSPFという値が用いられています。これはSun Protection Factorの略で,UVBに対する防御効果を表しています。UVB照射により翌日生じる赤みを指標にして検定します。普通、夏の海岸で20分間日光に当たると翌日赤みが出ますが、例えばSPF30の製品を規定量つけた場合、20×30=600分=10時間日光に当たって、始めて翌日赤みが出るということになります。尚、SPFは数字が50以上になると、その性能に余り差がなくなり実際的な意味を持たなくなるので、最近ではSPF50以上の場合は製品には単にSPF50+と表示するようになりました。
一方、UVAについては、紫外線照射直後からメラニンの酸化で起こる即時型黒化という反応を指標として検定する方法が我国では採用されています。最近の製品ではPA(Protection Grade of UVA)という表示がなされていて、+から+++の3段階があります。PA+:UVA防止効果がある、PA++:UVA防止効果がかなりある、PA+++:UVA防止効果が非常にある、という意味です。
サンスクリーン剤をつける第一の目的は強いサンバーンを避けるためです。レジャーで海や山へ行くときには強いものが必要ですが、日常生活で光老化を避けるため位ならさほど強いものは必要ありません。

サンスクリーン剤使用のめやす
条件防御
対象
波長
防御効果備考
SPFPA
日常生活UVB
UVA
5+光老化予防
軽い屋外活動、ドライブなど10++サンバーン、光老化予防
晴天下のスポーツ、海水浴など20+++サンバーン、光老化予防。耐水性のあるもの
熱帯地方での屋外活動30以上+++

注意を要する点は外用する量です。SPFやPAという値はサンスクリーン剤を1cm2あたり2mgまたは液体の場合2μlを塗って調べているので,塗布用量が少なければ当然効果が得られません。実際の外用量を調べてみるとせいぜい必要量の2/3位しか塗布していません。この程度の量では半分程度の効果しかありません。また、水泳や汗で流れたり、顔を触ることでとれてしまうことも多々あります。従って、SPFの値を過信しすぎないこと、規定量をきちんと塗布すること(顔の場合は真珠の玉2個分位)が重要です。また、3時間に1回程度で塗り替える方が確実です。
塗る部位に関しても顔は勿論ですが、うなじ・耳たぶ・胸・頚・手の甲も忘れずに塗布してください。尚、最近の製品には落ちにくいものがあり、その場合は夜にはきちんと専用のクレンジングなどで洗い落とすことが大切です。

日焼けサロンの弊害

日焼けサロンで肌を褐色に焼く方がまだ数多くいます。日焼けサロンのうたい文句は,有害な紫外線(UVB)をコントロールして、害のない紫外線(UVA)で肌を焼くのでダメージはないというものです。しかしながら上述したように、UVAはUVBと比べて有害作用は弱いのですが、ダメージが蓄積すると皮膚の細胞を酸化させ、また、皮膚深部まで到達するという性質もあり,決して安全ではありません。褐色の肌になるということは、皮膚に傷害を与えた結果できるものなのです。日焼けサロンによる皮膚傷害には、火ぶくれ、しみ、眼障害などが報告されています。

執筆:2009.8

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