Muir-Torre症候群

本症は毛包脂腺系腫瘍(脂腺腺腫、脂腺上皮腫、脂腺癌)あるいはケラトアカントーマ(脂腺分化を伴うことが多い)を皮膚症状とし、内臓悪性腫瘍(消化器癌や泌尿生殖器系の癌)を併発する常染色体優性の遺伝性疾患です。海外では、発症年齢は31-89歳(平均53歳)で男性にやや多く多く発症する傾向があります(男女比は3:2だが、本邦では女性は少ないとされる)。海外で300例、本邦で50例程度の報告がありますが、稀な疾患です。
本症は、若年発症で家族内悪性腫瘍発生率や結腸多発癌、多臓器重複癌の頻度が高く、転移が少ないことから、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Hereditary non-polyposis colorectal cancer; HNPCC)の定義を満たすため、Cancer Family Syndromeの一型と考えられています。原因遺伝子としては、hMSH2 ( human mutS homolog 2 )、hMLH1 ( human mutL homolog 1)、hPMS1 ( human postmeiotic segregation 1 )、hPMS2 ( human postmeiotic segregation 2 )、hMSH6 ( GTBP: G/T mismatch binding protein )、hMSH3 ( human mutS homolog 3 )などのDNAミスマッチ修復遺伝子が確認されており、これらの遺伝子の一つに変異が生じて全体の修復機構に影響が及び、最終的にはDNA複製の際にマイクロサテライト領域の不安定性を生じます。そのために、TGF-βのタイプIIレセプターなどの増殖抑制因子の遺伝子繰り返し配列のミスマッチを修復できずに悪性腫瘍が発生すると考えられています。実際にHNPCCの腫瘍組織では80-90%にマイクロサテライト不安定性が認められます。HNPCCの原因の90%は2番染色体短腕のhMSH2遺伝子、3番遺伝子短腕のhMLH1遺伝子異常がそれぞれ同数とされていますが、本症ではhMSH2を原因遺伝子とする報告が90%以上を占めます。

執筆:2011.1

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