メルケル細胞癌

メルケル細胞癌 (Merkel cell carcinoma;MCC)

本症は、表皮に存在するMerkel 細胞由来の進行度の早い稀な皮膚癌です。メルケル細胞は、上皮と神経内分泌の両方の起源の特徴を持ち、触覚感度機能(機械受容器)を有すると考えられています。

疫学

年間発生率は10万人当たり0.44人程度と稀な皮膚癌ですが、徐々に発症率は増加しています。また、その発生率は年齢と共に累進的に増加し、50歳以上で診断される患者は95%です。日光暴露に感受性が高い老年人口が増加していることも要因として考えられています。 また、黒人よりも白人において発症率がかなり高く、女性よりも男性の方がわずかに高いです。

病因

本症は皮膚が日光暴露を受ける部位、特に頭頸部に最も頻繁に起こり、続いて四肢、体幹の順に好発します。発生率は、紫外線B波の強い地域でより高いことが報告されています。 また、免疫抑制状態(HIV感染、リンパ系腫瘍、外胚葉異形成、カウデン病、臓器移植患者など)も関連があると考えられています。この他にも砒素への曝露、乾癬治療に用いられるソラレンとPUVA治療との関連も示唆されています。尚、2008年に本症にメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が発見されましたが、本症の全例がMCPyV感染に関係しているわけではないので、MCPyVtpと本症の関連は現在のところ明確ではありません。

症状

高齢者や免疫抑制されている患者の顔面・頭頸部、四肢などの露光部位に、淡紅色~紫紅色の無痛性でドーム状硬性腫瘤を形成します。皮膚潰瘍を呈することはほとんどありません。通常5mm-5cm以下の腫瘤ですが、一般に悪性度は高く、数週間から数カ月で急激に増大して局所深部に浸潤して、比較的早期からリンパ節転移や血行性転移を生じ、肝・肺・脳・骨などに転移します。

診断

CTやMRIで原発巣の性状、浸潤程度、全身への転移の有無などの検索ができます。また、PETスキャンやオクトレオチドスキャンを用いて、原発巣や癌転移の有無を確認して病期決定に利用されます。しかし、確定診断するためには腫瘍の生検による病理検索が必須です。

病理組織所見

濃染する小細胞が密な索状配列を示し、肺小細胞癌の腫瘍細胞にも類似します。電顕像でMerkel 細胞を思わせる有芯顆粒(dense-core granule)を認めることが特徴的です。免疫組織化学的には、CAM 5.2 あるいは AE1/AE3 、neuron specific enolase(NSE)およびサイトケラチン20 が陽性になることが多いです。 鑑別疾患として、皮膚付属器癌や無色素性の悪性黒色腫、悪性リンパ腫、肺小細胞癌の皮膚転移などが挙げられます。

病期分類(AJCC's Cancer Staging Manual, 2009)
病期 原発腫瘍 リンパ節 転移
0 表皮内癌 所属リンパ節転移- 遠隔転移-
IA 2cm以下の腫瘍 病理検索によるリンパ節転移- 遠隔転移-
IB 2cm以下の腫瘍 臨床検索(視診・触診・医療機器による画像)でリンパ節転移-
(リンパ節の病理検索なし)
遠隔転移-
IIA 2cm以上の腫瘍 病理検索によるリンパ節転移- 遠隔転移-
IIB 2cm以上の腫瘍 臨床検索(視診・触診・医療機器による画像)でリンパ節転移-
(リンパ節の病理検索なし)
遠隔転移-
IIC 骨・筋・筋膜・軟骨に浸潤する腫瘍 所属リンパ節転移- 遠隔転移-
IIIA いかなる大きさの腫瘍 (浸潤性腫瘍を含む) マイクロ転移+(センチネル/リンパ節生検) 遠隔転移-
IIIB いかなる大きさの腫瘍 (浸潤性腫瘍を含む) マクロ転移(臨床的にリンパ節を触知)+あるいはIn transit 転移+ 遠隔転移-
IV いかなる大きさの腫瘍 (浸潤性腫瘍を含む) いかなるリンパ節転移+ 所属リンパ節転移を超える転移+

治療

再発しやすいため、広範囲切除手術に所属リンパ節郭清を追加します。最近ではセンチネルリンパ節(SLN)生検を行って、最小限のリンパ節郭清を施術し、また、腫瘍の進展度を把握して予後や治療指針にも利用されています。
再発を抑制するために術後放射線治療を追加したり、再発や手術不能症例に化学療法(カルボプラチンやエトポシドなど)や放射線療法も行われることがあります。

予後

腫瘍が小さく(2cm以下)でリンパ節転移陰性の場合の5年生存率は80%以上です。リンパ節転移した場合の5年生存率は約50%です。本症の全5年生存率は64%です。しかし、進行期における本症患者の半分は9ヶ月しか生存していません。本症では患者の50%で再発がみられます。稀に自然消退例の報告もあります。

執筆:2011.10

▲PageTop

ページトップに戻る