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眼皮膚白皮症

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

眼皮膚白皮症 (oculocutaneous albinism; OCA)

本症は先天的に全身の色素細胞におけるメラニン色素合成の欠損や低下、あるいはメラノソームの細胞内輸送や色素細胞から表皮細胞へのメラノソームの受け渡しに障害をもたらす遺伝性疾患です。

臨床症状

生下時から全身の白色皮膚、白色から茶褐色までの頭髪、虹彩色素の低下、眼振、弱視などの視力障害を呈します。蒙古斑を欠くことも多いです。症例や原因遺伝子変異型により、メラニン合成障害の程度は異なり、その結果として臨床症状にはかなりの差が生じます。
メラニン色素減少による症状のみを呈する非症候性眼皮膚白皮症 (non-syndromic type)と、特殊型としてメラニン色素欠損による上記症状に加え、出血傾向や神経症状、間質性肺炎、免疫異常を合併(syndromic type) する場合があります。頻度としては前者が80-90%を占めます。

分類

原因遺伝子の違いによりOCA 1 ~ OCA 4 の4 型に大別され、更に、Hermansky-Pudlak 症候群やChediak-Higashi症候群、Griscelli症候群などの遺伝性疾患の一症状としても眼皮膚白皮症が認められます。後者の症候群は、別項を参照して下さい。

OCA1型

チロシナーゼ遺伝子 (11q14.3, Tyrosinase; TYR)の変異により生じ,チロシナーゼ活性がまったく失われたOCA1A型(終生メラニンの合成を認めない)、部分的に活性の残っているOCA1B型(わずかなメラニン合成を認め、成長と共に金髪を呈する)、1MP型(成人後にわずかに色素合成を認める)、OCA 1-TS型(四肢末端に色素を認める)に細かく分類されています。いずれも常染色体劣性遺伝形式をとり、日本人では最も頻度の高い型(34%)です。
OCA1A のようにメラニンがまったく合成されない病型では、皮膚は生涯を通じて白またはピンク色を呈し、毛髪も白色ないし金色となります。日焼けが著しく、露出部では紫外線により傷害されやすく悪性腫瘍(基底細胞癌,有棘細胞癌,悪性黒色腫など)を生じやすいです。眼においては、虹彩と脈絡膜は青色、眼底は淡紅色を呈するため、真横からの照明では青く、正面からの照明ではピンク色に見えます(pink-eye)。羞明および矯正不可能な視力障害を伴い、常に眼を細め横目で見るという特有の顔貌を呈し、水平方向の眼振も認めることが多いです。一方、メラニンの産生がきわめて低下していても若干でも残っているOCA1B型では、出生時はOCA1A と区別不可能であっても加齢に伴い金髪と皮膚に徐々に色素が認め、目は淡青色になることが多いです。
OCA1-TS(Temperature Sensitive; 温度感受性型)は、35℃以上でチロシナーゼが失活するもので、部位の温度によってメラニンの沈着量が左右される。つまり、温度の高い部分は白く、低い部分には色が付きます。

OCA2型

P 蛋白の遺伝子 (15q11.2-q12, P protein) の異常により生じ、常染色体劣性遺伝形式をとります。P 蛋白は、マウスではチロシンをメラノソームの中へ輸送する機能を持つとされていますが、この膜タンパク質の異常により、メラニンを生成できないと考えられています。出生時に色素が全くないものから軽度認める症例まで多彩であり、臨床症状だけではOCA 1 型とは鑑別できません。眼は青みがかった灰色で、毛髪は淡い黄色からブロンドを呈するが、加齢とともに色素が強くなってきます。世界的には白皮症ではこのタイプが最も多いですが、日本では10%以下です。

OCA3型

メラニン合成を調節するチロシナーゼ関連蛋白1 型遺伝子 (9q23, Tyrosinase-related protein 1; TYRP -1) 変異により発症します。アフリカ系人種に好発し、皮膚色は赤褐色で、毛髪は淡い赤褐色から赤毛を呈し、虹彩は褐色です。アフリカ南部やニューギニアで報告されており、白人やアジア系の人種からは今のところ見つかっていません。通常眼症状は伴わないです。

OCA4型

MATP 蛋白遺伝子 (5q13.3, Membrane-associated transporter protein) の異常により発生します。この遺伝子産物は色素細胞特異的細胞内小器官であるメラノソームの膜蛋白であり、メラニン合成に関わる運搬体と考えられていますが、その詳細な機能は不明です。臨床症状は多彩で、皮膚には色素をやや認め、毛髪は淡い黄色が最も多いが、茶などの症例もあります。眼は青や灰色、赤褐色で、眼振は約半数でみられます。世界的には比較的稀な型ですが、日本人では白皮症の4人に1人がこの型であり、2番目に多いタイプです。

病理所見

メラノサイトの数や形は正常であるが、未熟なメラノソーム(stage Ⅳにまで達していないもの)を電子顕微鏡で確認できます。最重症型のOCA1A では、メラニンの沈着を認めない未熟なstage Ⅰ/Ⅱのメラノソームのみを認めます。ある程度色素産生が残存する病型では、stage Ⅲと少数ながらstage Ⅳまでのメラノソームも認めることがあります。しかし、形態学的に遺伝子型を判別できません。

遺伝子検査

臨床症状からは、原因遺伝子の推定は困難で、遺伝子診断で確定診断できます。しかし、全ての原因遺伝子検索を網羅的に行うことは適切でなく、特に症候性眼皮膚白皮症を疑う症状(出血傾向、神経症状、精神神経発達遅延、免疫不全、致死的合併症など)を早期発見して、それに基づいた遺伝子診断が効率的です。

治療

白皮症の治療はなく、予防に尽きます。紫外線による発癌および皮膚老化を予防するため、乳児期から日光を避け、強力なサンスクリーンを外用し、サングラス(UVフィルターつきのもの)を着用すべきです。また、視力障害、眼振、羞明などは、眼科で定期的なチェックが必要なこともあります。

執筆:2012.4