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金属アレルギー

金属アレルギー (metal allergy)

本症は金属が原因で生じるアレルギーで、金属から溶出した金属イオンが蛋白質と結合して、その蛋白質に変質させてアレルゲンとなり、それが症状を引き起こします。
金属は、直接に皮膚に接触して生じる金属接触アレルギーと、金属が体内に吸収されて皮膚に発疹を生じる全身型金属アレルギーがあります。

1)金属接触アレルギー

金属アレルギーを起こしやすい金属としては、ニッケル、コバルト、クロムがあります。装身具、腕時計、眼鏡、ピアスなど身の周りの日用品に含まれているものが多いため、発症者は少なくありません。本邦では、これらの金属を含む装飾品の製造を規制する行政と法整備がなされていないのが現状です。
ニッケル:ニッケルを含む合金製装身具(バックル、ガーター、腕時計、時計バンド、イヤリング、ネックレス、ニッケルメッキ、ニッケル触媒、塗料(ペンキ、ニス)、陶磁器、セメント、乾電池、磁石、ビューラー、電気製板など
コバルト:メッキ、合金、塗料(エナメル、ラッカー)、染着色(青色系)、顔料、陶器うわぐすり、ハエ取り紙、粘土、セメント、ガラス工業、乾燥剤、乾湿指示薬
クロム:クロムメッキ、印刷業(青)、試薬、塗料(ペンキ、ニス)、陶磁器うわぐすり、皮なめし

診断

パッチテスト(皮膚に金属を密着させてアレルギーが生じるかを調べる検査;1週間で判定)で金属アレルゲンを検索します。しかし、パッチテストでは判明しない(陰性である)こともあるので、その判定には注意を要します。

治療

原因金属との接触を避けることが肝要です。特に、夏季の汗をかく時期に長時間接触することや、皮膚トラブルがある時に金属との接触は避けるべきです。対症療法としてはステロイド外用を行います。
尚、接触アレルギーの患者が長期間そのアレルゲンに暴露され続けると、患部以外の遠隔部位にも湿疹病変が拡大することがあり、このような病態を接触皮膚炎症候群と呼ぶこともあります。全身に拡大した場合は、アレルゲンの接触を断つことは勿論ですが、短期間ステロイド内服が必要になることがあります。

2)全身型金属アレルギー

食物や歯科金属、廃棄粉塵などに含まれる金属が、経皮・経粘膜・経腸管・経気道経路で生体内に吸収されることにより、様々な皮膚炎(汗疱状湿疹、亜急性痒疹、多形慢性痒疹、貨幣状湿疹、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、紅皮症など)を発症もしくは増悪させ、その金属吸収の制限により症状は軽快します。特に、掌蹠は汗腺が高密度に分布しており、汗中の金属濃度が最も高いため、全身型金属アレルギーによる汗疱状湿疹の好発部位です。
ニッケル、クロム、コバルトなどは、チョコレート、ココア、豆類、香辛料、貝類、レバー、胚芽などに多く含まれています。
歯科金属は、パラジウム、金、水銀、スズなどを含有することが多く、時にニッケル、クロム、コバルトなども含みます。この他にも、骨接合金属、血管内ステント、ビタミン製剤などの内服薬や注射薬内に含有される金属、工場廃棄ガスなども生体に吸収される金属源となりえます。

診断

パッチテストは、一部に陰性を示すことがあるため、スクリーニング検査としては有用です。金属内服テストにも未だ課題が多く、あまり実用的ではない。

治療

原因金属との経皮接触の制限ならびに経消化管摂取の制限を行います。歯科金属アレルギーの場合には、原因となる口腔内の金属を除去し、別種の金属や陶材などにすることによって症状が軽快することがあります。
この他に、原因金属の減感作療法を行い、臨床症状が軽快したとの報告もあります。

補足

最近、インプラントで多用されるチタンや宝飾品に用いられるタンタルやジルコニウムによる金属アレルギーは稀で、化学的に安定な不動態を形成するためと考えられています。

執筆:2012.12