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混合性結合組織病

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

混合性結合組織病 (mixed connective tissue disease:MCTD)


MCTDは全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症(SSc)、多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)、に見られる臨床症状や検査所見が混在して、同一患者に同時にあるいは経過とともに出現し、血清中に抗U1-RNP(ribonucleoprotein)抗体が高い抗体価で検出される全身性疾患です。
原因不明ですが、他の膠原病と同様に自己抗体が検出されることから、我が国ではMCTDは全身性自己免疫疾患の一つと考えられています。但し、欧米ではMCTDを独立疾患とせずに、overlap症候群あるいはundifferentiated connective tissue diseaseとして捉えています。
平成20年の調査では全国で約8600人の登録が確認されており、男女比は1:13-16で女性に多く、小児から高齢者まで広い年齢層で発症しますが、平均36歳で発症するとされます。

症状

(1)共通症状
レイノー現象は必発ですが、寒冷時には頻発しますが夏は起こりにくいので、丁寧な問診が必要となります。しかし手指および手の浮腫傾向は夏でも持続します。
多くのMCTD症例で「ソーセージ様手指」あるいは「手背の腫脹」が初発症状として高頻度に認められます。手背と指の付け根に腫脹があるが指先は細いままのため、「先細り指」を示す患者もいます。MCTDではこの二つの症状が長く持続することが特徴なので、多くの症例で診断の拠り所となります。
(2)混合所見
SLE、SSc、PM/DMの3疾患にみられる臨床症状あるいは検査所見が混在して認められます。これらは一括して混合所見と呼ばれますが、これらの混合所見の特徴は、3疾患の完全型の重複所見ではなくて、不完全型の重複所見であることが特徴です。このため「...様所見」という表現が用いられています。即ち、これらの混合所見は各疾患に特異性の高い症状が多いとは限らず、例えばSLE様所見の中には、腎炎や中枢神経障害症状は含まれていません。また、強皮症様所見には、びまん性皮膚硬化は含まれていません。
混合所見の中で頻度の高いものは、1)多発関節痛、2)白血球減少、3)手指に限局した皮膚硬化、4)筋力低下、5)筋電図における筋原性異常所見、6)肺機能障害、などです。
(3)肺高血圧症
疫学調査で症例の5%に肺高血圧症があり、10%にその疑いが持たれています。
肺高血圧症はMCTDの死因の第1位(39%)を占める重篤な病態(肺動脈の末梢での狭窄と閉塞による)であり、早期に発見して適切な生活指導をすることが必要となります。自覚症状として動悸、労作時息切れ、胸骨後部痛を訴え、進行性のものは原発性肺高血圧症と類似します。研究班では非侵襲的な検査法を主とした「MCTD肺高血圧の診断の手引き」を設定して、早期診断&治療につとめています。
(4)その他の特徴的症状
MCTDに比較的特徴的にみられるその他の症状に、顔面の三叉神経Ⅱ枝またはⅢ枝のしびれ感を主体とした症状があり、MCTDの約10%にみられます。また、ibprofen等のNSAIDs服用後に起きる無菌性髄膜炎も本症では約10%にみられます。これらの症状出現時は、MCTDも考慮する必要があり、MCTDと診断された症例にはNSAIDsの使用は慎重にすることが大事です。
(5)免疫学的所見
抗U1-RNP抗体が高値陽性となります。最近ではリコンビナント蛋白を抗原とした酵素免疫測定法(ELISA)が、広く普及しています。
(6)合併症
シェーグレン症候群 (25%)、慢性甲状腺炎 (10%) などです。

治療

本症は自己免疫疾患であり、抗炎症療法と免疫抑制療法が治療の中心となります。
急性期には副腎皮質ステロイドが治療の中心となりますが、いったん開始すると長期投与となるため、骨粗鬆症や糖尿病、感染症の誘発に注意します。中枢神経障害、急速に進行する肺症状・腎症状、血小板減少症をのぞいて大量ステロイドが必要になることは比較的少ないです。ステロイド単独では効果が不十分の時や合併症のために大量ステロイド投与が出来ない場合には、免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロスフォスファミド、ミゾリビン、メソトレキセートなど)を併用することもあります。
また、MCTDの生命予後を規定する肺動脈性肺高血圧症に対して、プロスタサイクリン徐放製剤、持続点滴製剤(エポプロステノール)に加えて、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン)、PDE-5 阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル)が近年使用できるようになりました。これらは肺血管拡張作用に加えて、肺動脈血管内皮細胞の増殖を抑制する作用を有します。しかし、肺血管のリモデリングが進行した場合には、右心不全のコントロールがより大切になるため、循環器内科と共同して治療に当たる必要があります。労作時呼吸困難など症状が出現する前に診断・治療することが重要で、MCTD患者では定期的な心臓超音波検査施行が推奨されます。
発病からの5年生存率は96.9%で、初診時からの5年生存率は94.2%です。主死因は肺高血圧、呼吸不全、心不全、心肺系の死因が全体の60%を占めています。

執筆:2010.6