光線過敏症(日光アレルギー)

1.青年期に好発する光線過敏症

1)多形日光疹(polymorphic light eruption)
光線過敏症の中で最も頻度の高い疾患で、日本人の約4%に認められます。思春期から青年期の女性に好発し、3-7月に強い日光暴露で生じることが多いです。
 
日光露出部位に粟粒大の紅色丘疹が散在性に多発することが多いですが、この他にも多彩な症状を呈します。また、その症状は日光照射後数時間してから発疹が現れ,発疹が数日間持続する傾向があります。時に痒疹やアトピー性皮膚炎でも光線増悪現象の一つとして、多形日光疹が生じることもあります。
繰り返す紫外線照射で皮膚に内因性光抗原が産生され、これに対する自己免疫的接触アレルギーではないかとの説もありますが、現在のところ病因は原因不明です。
 
症状経過と皮膚症状で診断は比較的容易ですが、時に日光蕁麻疹から引き続いて生じる場合や、光線過敏性を有するエリトマトーデスとの鑑別が必要なこともあります。MEDは殆どの場合正常範囲ですが、稀に低下している場合があり、この場合は慢性光線性皮膚炎への移行も示唆されます。
 
治療は軽症例が殆どなので、遮光指導(衣服や帽子による防御、サンスクリーン剤など)と発疹発現時にステロイド外用を行います。しかし、繰り返しの光線暴露で耐性が生じることが多く、あまり過剰な防御は必要ありません。加齢と共に症状は少なくなり、自然寛解することが多いです。
 
2)日光蕁麻疹(solar urticaria)
光線暴露して数分~数十分以内に、露光部位に一致して蕁麻疹が生じます。日光を避けると10分~-2時間程度で蕁麻疹は消退するのが特徴です、時に日陰に入ると蕁麻疹が悪化することもあります。光線の作用波長は可視光線(400-500nm)が7割を占め、紫外線領域波長は少ないです。
 
光線照射により皮膚内にアレルゲンが形成されて、それに対するIgE抗体が産生されてI型アレルギーが生じるのではないかと考えられていますが、詳細な機序は不明です。
 
治療は作用波長に応じた遮光対策と抗ヒスタミン剤内服を行います。しかし、完全には症状を抑制できず、長時間暴露で生じてしまうことが多いです。
 
また、可視光線が作用波長であることが多いので、紫外線に関与する例以外はサンスクリーン剤はあまり有効ではありません。予後は難治であり、自然消退率は26%と言われています。
 

2.中年期に好発する光線過敏症

1)光接触皮膚炎(photocontact dermatitis)
光接触皮膚炎には光毒性と光アレルギー性がありますが、光毒性物質あるいは光アレルゲン形成には光線が必要な点を除いて、通常の一次刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎と同様の機序で発症します。
 
光アレルギー性接触皮膚炎の原因化学物質としては外用薬や化粧品が多いですが、時代と共に少しずつ変化してきています。近年では、非ステロイド系消炎鎮痛外用薬のケトプロフェンパップ剤によるものが多いです。ケトプロフェン光アレルギーは、スプロフェン、チアプロフェンなどのNSAIDsとの交叉反応があるので注意が必要です。この他、香料や局所麻酔薬(塩酸ジブカイン)、サンスクリーン剤成分(オキシベンゾン、ブチィルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシシンナメート)なども頻度は少ないですが、注意する必要があります。
 
感作物質が塗布された部位が日光暴露されると、同部位に紅斑・漿液性丘疹が生じ、高度になれば浮腫や小水疱も生じます。ケトプロフェンによるものでは、貼付部位を越えて皮疹が生じることもあり、また、薬剤中止後も数ヶ月以上にわたり光線暴露で皮疹が再現することもありうるので、要注意です。光パッチテストを行って診断確定します。
 
治療は原因物質の回避と遮光対策が重要です。UVAが作用波長のことが多いのでサンスクリーン剤を塗布します。症状の程度により、ステロイド外用、抗ヒスタミン剤内服、時にステロイド内服を行います。通常は2週間程度で軽快することが多いですが、ケトプロフェンが原因の場合は再燃することがあるので、数ヶ月にわたって遮光を続けたほうが無難です。原因に気づかず、長期にわたり接触・日光暴露を繰り返していると、色素沈着を伴う苔癬化を起こし、さらには慢性光線性皮膚炎へ移行することもあるので注意して下さい。
 
2)光線過敏型薬疹(photosensitive drug eruption)
薬剤の全身投与後に、日光暴露(特にUVA)により光露出部に皮疹が生じます。
原因薬剤は、フェノチアジン系向精神薬、ニューキノロン系抗菌薬、グリセオフルビン、プロピオン酸並びにオキシカム系NSAIDs、チアジド系降圧利尿薬、スルフォニル尿素系経口糖尿病薬、筋弛緩薬(アフロクァロン)、5-FU、ソラーレン、金製剤、ダカルバジン、抗不整脈剤(塩酸チリソロール)、高脂血症治療薬(シンバスタチン)、降圧剤(シラザプリル)など多数あります。最近、アンギオテンシンII 受容体拮抗薬とチアジド系降圧利尿薬であるヒドロクロロチアジドを配合した合剤が発売されていますが、このヒドロクロロチアジドによる光線過敏型薬疹が頻発しているので注意が必要です。
 
発症機序は光アレルギー反応の場合が多いですが、薬剤によっては光毒性機序によるものも少なくありません。一般的には、初回投与後潜伏期間を置かずに発症した場合は光毒性を考えます。一方、光アレルギー反応の場合は、ある程度の感作期間を有し、至適濃度での光パッチテストが陽性で、さらに少量の内服と紫外線照射による誘発テストで陽性になれば確実です。
 
薬剤摂取後、早い場合は数時間で生じますが、通常2-3日から2週間、時には半年以上内服して、日光に暴露されていると生じます。日光露出部位に一致して、紅斑、浮腫、丘疹、小水疱、色素沈着などが見られ、症状が悪化すると、湿疹様、扁平苔癬様、光線性白斑黒皮症、エリテマトーデス様、ポルフィリン症様など様々な症状を呈します。
 
診断は被疑薬剤を少量内服させて紫外線を一部に照射して症状を誘発できれば確実です。
光アレルギー性では光パッチテストが陽性になることが多いですが、ニューキノロンやチアジド系では陽性率が低い傾向です。
 
治療は原因薬剤の中止と他系統薬剤への変更、サンスクリーン剤、衣服などで遮光すれば自然軽快します。症状に応じて、ステロイド外用や内服、抗ヒスタミン剤の内服を行います。気づかずに光線過敏症を繰り返していると、慢性光線性皮膚炎に移行することがあります。
 
3)晩発性皮膚ポルフィリン症
本症は、ヘム代謝系のuroporphyrinogen decarboxylase(UROD)の先天性ないし後天性の活性低下により、肝臓にuroporphyrinの蓄積が起こり、これが血液循環で皮膚に到達して光線過敏症を生じます。このポルフィリン体は水溶性のため主に尿中に多量に排泄される。遺伝性の有無により2つに分けられますが、ほとんどが遺伝性のない散発例(本症の80%を占める)です。肝障害を伴うことが多く、C型肝炎ウィルス、HIV感染も引き金になりうる。ヘモクロマトーシス遺伝子異常があると、肝臓に鉄の蓄積が起こり重症化しやすいです。発症誘起または増悪因子として、アルコール、薬剤(エストロゲン、ヘキサクロロベンゼン、バルビタール、サルフォナマイドなど)が挙げられます。また、腎不全で血液透析を受けている場合にも発症することもあります。
飲酒歴の長い中年男性に好発し、顕著な光線過敏症状よりは慢性皮膚症状として皮膚の脆弱性が目立ち、軽微な外傷で水疱や糜爛、痂皮を生じ、その後に萎縮性瘢痕、線状瘢痕、色素沈着を残します。顔面がどす黒くてしわが深く、多毛になります。症状が高度になると、強皮症様皮膚硬化が進行してきます。
 
診断は尿中uroporphyrin高値であることを確認して、肝機能検査(C型肝炎ウィルスなど)を行います。
 
治療は、禁酒して薬剤摂取には十分注意するよう指導します。肝臓への鉄の過剰蓄積がある場合は瀉血が有効です。腎不全で貧血を伴う場合はエリスロポエチン投与を行います。C型肝炎合併例ではその治療を行います。また、微量のクロロキンやヒドロキシクロロキンも有効です。これらの薬は肝臓から余分なポルフィリンを除去します。しかし、用量が多すぎると、ポルフィリンが急激に取り除かれることになり、一時的な悪化と肝臓障害を引き起こします。
 

3.老年期に好発する光線過敏症

1)慢性光線性皮膚炎(chronic actinic dermatitis)
高度の光線過敏症を示す露光部の慢性皮膚炎の特徴は、露光部皮膚を主体に持続性の浸潤性丘疹や局面を伴う湿疹様変化を呈しますが、皮疹はしばしば非露光部にも拡大し、さらには紅皮症状態にまで進展することがあります。被覆部の皮膚において、UVBのMEDが低下し、しばしばUVAや時には可視光線にまで過敏性を示します。病理所見は慢性皮膚炎を呈し、時にリンパ腫を思わせる異型細胞が出現することがあります。
時に、慢性の接触皮膚炎、光接触皮膚炎、光線過敏性型薬疹、多形日光疹などが先行することもあり、また、アトピー性皮膚炎やHIV感染者にも生じることがあります。
 
病因としては、光線照射により産生される内因性光抗原に対して接触アレルギーを起こしている可能性が示唆されていて、自己免疫機序による遅延型接触過敏症と考えられています。
 
中年以降の男性に好発し、広範囲の光線に高度の光過敏症を呈します。顔面・頚・前胸部・前腕伸側・手背など露出部に湿疹性病変が生じ、激しい掻痒のために掻破を続けるうちに、苔癬化局面、痒疹が著明になります。症状が高度になると被覆部にも症状が拡大して紅皮症様になることもあり、激しい掻痒のために不眠になることもあります。
 
診断はMEDが著明に低下して、作用波長はUVBを主体に、UVAや可視光線にまで拡大します。病理所見は異型リンパ球が浸潤してリンパ腫様に見えることもあるが、リンパ腫へ移行する例はありません。パッチテストや光パッチテストで様々な陽性物質がみられます。
 
治療は徹底した日光遮断が必要ですが、屋外活動が厳しく制限されるため、QOLが著しく低下します。症状が広範で重篤な状態では入院して治療と遮光指導が必要です。ステロイド外用、抗ヒスタミン内服を行いますが、重症例ではステロイド内服も考慮します。コントロール不良の場合は免疫抑制剤内服や外用を行いますが、保険適応外です。UVB過敏性が強い場合やパッチテストで多数の物質が陽性の場合は、一般的には難治です。

執筆:2011.1

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