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川崎病

当院で掲載している希少難治性疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、その検査や治療は当院では行っておりません
また、紹介すべき病院に関しても適切な情報を持ち合わせておりません。
尚、当院では希少難治性疾患に対する医療相談は行っておりませんので、ご理解のほど宜しくお願いします。

本症は主に乳幼児に生じる全身の中小動脈の炎症で、初期は急性熱性疾患(急性期)として全身の血管に炎症が生じ、多くは1~2週間で症状が沈静化しますが、症状が強い時は1ヶ月以上遷延化することもあり、炎症が強い場合は腋窩や鼠経部の血管に瘤が出来る場合もあります。

心臓を栄養する冠動脈の炎症により、冠動脈の起始部近くと左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐付近に瘤が出来ることがあり、一過性に瘤が拡大してもその後に退縮して正常に戻る場合と、巨大瘤(8mm以上)が約0.5%に発生して冠動脈瘤が残る場合があります。特に冠動脈瘤の中に血栓ができて生じる心筋梗塞は、発症から1年半以内におこることが多く、突然死することがあるので注意が必要です。一方、瘤が経過と共に退縮して一見正常のようにみえても、その後血管壁が肥厚して血管内腔が狭小化してくる場合があるので、特に巨大瘤がある場合は長期的観察が必要です。言い方を変えると、本症の約80%は冠動脈に変化がみられず、約1ヶ月程度で炎症が治まり、慢性化することはありません。
本症はアジア諸国に多く発症し欧米では少ないとされ、日本では約6000-8000人/年間が発症しています。男女比は1.3~1.5:1でやや男児に多く、発症年齢は生後6ヶ月~1歳に多く(4歳以下が80-85%を占める)、4歳以後は非常に少なくなります。罹患患者の2~3%に再発があり、1~2%が兄弟で発症し、死亡率は約 0.1%程度と考えられています。
原因は特定されていないのが現状で、感染症が引き金になって生じる可能性、遺伝子多型変異説、腸内細菌関与説なども示唆されています。
 
主要症状は下記の6つです。
1)5日以上続く原因不明の発熱。抗菌薬は無効で、通常の解熱剤でも熱が下がりにくい。
2)両側眼球結膜の充血。病初期から4-5日間続きます。
3)手足が赤くなり硬く腫れ(手足の硬性浮腫)、その後1週間程度で、手足の皮膚が剥けてきます(膜様落屑)。
4)躯幹部位を中心に不定型発疹が出現。水疱形成は通常ありません。また、BCG接種部位に発赤や痂皮形成を認めることもあります。
5)口唇の発赤・乾燥・亀裂、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤。
6)有痛性の非化膿性頸部リンパ節腫脹 (上記主要症状に比べてやや発現頻度は低く65%程度)
6つの主要症状のうち5つ以上を満たすものを本症と診断しますが、5つに満たない非典型例も多く、上記以外に下記のような症状を伴うことがあります。
心循環器系障害:聴診上の異常(頻脈、心雑音、馬調律、微弱心音など)、心電図異常がみられます。胸部X線では、心陰影拡大し、心膜炎、胸膜炎が証明される例もあります。心エコー上、冠動脈の拡張は第5病日頃より始まり第15病日頃が最も頻度が高くみられます。 
消化器症状:腹痛・下痢、麻痺性イレウス・胆嚢腫大・肝障害・黄疸がみられることがあります。 
神経症状:稀に髄膜炎・けいれん・意識障害がみられます。 
関節症状:一過性の関節痛がみられますが、明らかな関節炎は稀です。
 

治療

川崎病は原因不明のため、根本的な治療が現在ありませんが、最近では下記のような治療法で心合併症をより少なくすることができるようになりました。 
急性期の治療は、血管炎の抑制・血栓形成予防・冠動脈瘤予防を行います。通常免疫グロブリンとアスピリンを併用します。この治療法が広く行われるようになり、急性期の冠動脈拡大は約20%、1ヶ月後の冠動脈障害は約7%に減少しました。
しかし、この併用療法でも48時間以内に解熱しない、または2週間以内に再燃が見られる不応例もあります。この場合には免疫グロブリンの再投与を行うか、ステロイドパルス療法が有用な例もありますが、無効の場合は、炎症が続いて巨大瘤(冠動脈径8mm以上)ができてしまう可能性が高くなります。この他にもTNF-α阻害薬のインフリキシマブやシクロスポリンなどが検討されています。
冠動脈瘤があるかどうかは急性期から心エコーでスクリーニングを行い定期的に経過観察し、発症後およそ6週間で再検して異常がなければ治療を中止できます。しかし、冠動脈瘤を認める場合では、血栓防止のためにアスピリンを継続しながら、1年毎に心エコー図・心電図・胸部X線検査などを行いながら経過観察します。特に大きな冠動脈瘤が強く疑われる場合は冠動脈造影検査などで精査する必要もあります。発見された冠動脈瘤の約半数は1-2年程度で正常化しますが、残りの半数は治癒せず残り、成長と共に冠動脈の状態は変化して巨大瘤や狭窄となり、心臓障害のリスクが高まります。巨大瘤を発生した患者では、発症後15年で約70%は冠動脈に狭窄や閉塞が見つかり、その60%程度は病変部の閉塞がありますが側副路があるために無症状です(無症候性心筋梗塞)が、約30%に心筋梗塞の症状がみられ、このうち約20%が亡くなっています。
冠動脈障害(狭窄)により血行が十分に確保されない(心筋虚血)場合は、血行再建術[インターベンション(カテーテルによる治療)あるいは冠動脈バイパス手術]の治療を行います。カテーテル治療は発症後2年以内に行うと治療効果が高いですが、発症から10年以上経過して血管壁が肥厚して石灰化している場合は、再狭窄することがあります。このような場合は冠動脈バイパス手術の適応で、心臓への血行が回復すると運動制限は無くなります。

執筆:2011.1