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腱鞘巨細胞腫

腱鞘巨細胞腫 (giant cell tumor of tendon sheath)

本症は、四肢末梢の関節および腱鞘周辺に好発する軟部腫瘍で、WHO分類では線維組織球腫瘍の良性腫瘍群の一つに分類されています。

疫学

中年~壮年期の女性に多く、男女比は1:2です。圧倒的に手指の指節間関節周囲の腱鞘に隣接して単発性に発生する例が多く、部位としては伸筋腱鞘周囲と屈筋腱鞘周囲がほぼ同頻度です。手指関節以外では膝関節、股関節、手関節、肘関節などで発生します。外傷に続発して出現することはほとんどないと考えられています。

症状

手指の無痛性皮下腫瘤として発症し、緩徐に増大してくることが多いが、大きさに変化がないこともあります。大きさが3cmを超えるものは稀です。

病理組織所見

肉眼的には境界明瞭で弾性硬の結節性腫瘤で、割面は充実性均質で淡褐色調から黄褐色調を呈します。組織学的には単核均一な組織球様細胞の密な増殖を背景に、破骨細胞様の多核巨細胞が分布します。ヘモジデリン貪食細胞や泡沫組織球の浸潤、さらには肥満細胞、リンパ球など炎症細胞浸潤も少なからず認めます。単核細胞および多核巨細胞はマクロファージ特異的なCD68 (KP-1単クローン抗体)に陽性です。
最近の研究では、多核巨細胞は破骨細胞への分化を示し、単核間質細胞は骨芽細胞の形質を示し、破骨細胞形成の阻害因子として機能していると考えられています。また、病変内では、破骨細胞の最終分化に関わる転写因子(Microphthalmia-associated transcription factor; MITF)が病変形成を修飾していることも明らかにされています。

鑑別疾患

手指に発生した病変では術前診断で腱鞘巨細胞腫が圧倒的に多いですが、腱鞘線維腫、類上皮肉腫との鑑別が必要です。これらの疾患は病理組織学的に鑑別できます。

治療

腫瘍の完全摘除が有効です。化学療法、放射線療法は適応外です。

予後

切除後の局所再発例は10-20%です。腱鞘機能に影響しないように注意深く腫瘍を核出しても、少量遺残した腫瘍細胞が再発の母地となるので、注意深く摘出することが必要です。

執筆:2012.1