好酸球性筋膜炎

好酸球性筋膜炎(eosinophilic fasciitis、diffuse fasciitis with or without eosinophilia、Shulman syndrome)

本症は過度な運動、労作や外傷などを契機として、主に四肢に急速な皮膚硬化と関節の運動制限をきたす稀な疾患で、病変部の筋膜の炎症変化に引き続いて線維化と肥厚を生じると考えられています。一見強皮症に類似しますが、レイノ一現象などの特徴的な臨床症状や内臓病変を併発しません。

疫学

好発年齢は20-60歳の青壮年に多いが、小児や高齢者にも生じることもあります。

原因

原因不明ですが、過度な運動や労作、外傷、高熱などが発症の誘因となり、筋膜の障害、急性炎症が生じて何らかの自己免疫的機序が惹起されるのではないかとの説があります。誘因は上記以外にも、L-トリプトファンの過剰摂取、有機溶媒との接触、ボレリア感染、薬(シンバスタチン、アトルバスタチン、フェニトイン)によっても類似の症状を呈することが報告されています。

臨床症状

発症の1~2週間以内に激しい運動や労作、外傷、打撲の既往があることが多いが、何ら誘因がみられない例も少なくないです。急性に発症する症例と、徐々に四肢の動きにくさを自覚して亜急性に発症する症例があります。 初期には有痛性の発赤腫脹が生じ、発熱や全身倦怠感を伴うこともあります。主に四肢遠位部に対称性の皮膚のつっぱり感、瀰漫性皮膚腫脹と硬化が生じます。病変が拡大すると四肢近位部、体幹にも皮膚硬化が及ぶこともあります。しかし、四肢末端(手指、手背、足趾、足背)や顔面には皮膚病変が及ばないことが特徴です。また、急速に筋膜の炎症と線維化が進行して、関節可動域の低下や関節拘縮を呈します。尚、手そのものには皮膚硬化は及びませんが、前腕の筋膜が侵されるので手指は屈曲拘縮や手根管症候群をきたすことがあります。時に関節痛やモルフェアも併発することがあります。
本症が、血液疾患(再生不良性貧血、血小板減少症、骨髄増殖性疾患、骨髄異型性疾患、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫など)、甲状腺疾患、原発性胆汁性肝硬変などに合併することもあります。

検査

1,000/mm3以上の著明な末梢好酸球数増加を呈する症例は約60%で認められますが、好酸球増加を認めないこともしばしばあります。
また、赤沈の亢進やIgGやIgA値の上昇を伴う高ガンマグロブリン血症を伴うこともあります。抗核抗体やリウマトイド因子の陽性率は約10%です。
アルドラーゼは上昇し、病勢に一致して変動するため、病勢の評価に有用であるとの報告もあります。
Metalloproteinase 1 (TIMP-1)も病勢を把握できるマーカーとして脚光を浴びています。
MRIのT2強調脂肪吸収画像で、筋膜の肥厚部位が同定でき、病勢の評価、治療効果判定を行うことができる有用な検査です。

病理所見

病変の生検(皮膚から筋肉まで)が確定診断に必須です。
病変部のリンパ球、形質細胞、組織球、好酸球を主体とした炎症細胞浸潤、筋膜の線維化と肥厚がみられます。好酸球の浸潤は局所に巣状的に認められるため、病期によってみられないことも多いです。また、膠原線維の増加(線維化)は、筋膜から脂肪組織、真皮深層にわたって生じますが、真皮浅層は侵されません。
全身性強皮症や限局性強皮症の皮膚硬化に比べて、好酸球性筋膜炎の皮膚硬化はより深部に生じる点が特徴です。

鑑別診断

全身性強皮症
限局性強皮症
好酸球増多症
好酸球増多筋痛症候群
その他の自己免疫性疾患(自己免疫性甲状腺炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)
悪性腫瘍のparaneoplastic syndrome(上述)

治療

自然寛解をきたすこともありますが、大部分の症例では副腎皮質ホルモンの内服により軽快しますが、進行した皮膚硬化、関節拘縮は難治性で非可逆的のこともあります。早期に診断して治療を開始することが肝要です。 ステロイド治療に抵抗する難治症例では、免疫抑制剤(シクロスポリンやメソトレキセート、TNF-α、インターフェロンα、インフリキシマブなど)が使用されることもありますが、効果の確証はありません。
予後生命予後は良好ですが、治療が遅れると皮膚硬化、関節拘縮は難治性で非可逆的のこともあり、早期に治療を開始することが肝要です。

執筆:2015.3

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