Cowden病

本症はgermline PTEN (phosphatase and tensin homologue detected on chromosome 10)遺伝子変異を認める常染色体優性遺伝疾患です。特徴的な皮膚病変と全消化管に過誤腫をきたします。

PTENはヒト染色体10q23.3に位置する癌抑制遺伝子であり、正常ではPI3K-Aktシグナル伝達経路を負に制御しており、PIP3 (phosphatidyl inositol-3-phosphate) をPIP2に脱リン酸化することで、細胞増殖の抑制やアポトーシスの誘導などを引き起こすと考えられています。しかし、本症ではPTEN遺伝子異常により、PIP3の産生が亢進してAktが活性化し、細胞増殖、細胞死抵抗性となり、良性腫瘍や発癌を引き起こしやすくなると考えられています。
本症では、80%の症例にPTEN遺伝子変異を認め、常染色体優性遺伝形式ですが、多くの症例は弧発性に生ずると考えられます。

臨床症状

皮膚の特徴的病変としては、1)顔面の外毛根鞘腫(意外と少ないとされます) 2)四肢の角化性丘疹 3)口腔粘膜乳頭腫 4)掌趾の点状陥凹 5)硬化性線維腫 などが挙げられます。
成人型Lermite-Duclos disease(小脳異形成神経節細胞腫)や巨頭症も特徴的です。
合併する悪性腫瘍として、乳癌(20-50%)、甲状腺(濾胞腺)癌(10%)、子宮内膜癌(5-10%)、腎癌、胃癌、前立腺癌、皮膚癌などがあります。
また、全消化管に大きさ数mmまでの過誤腫性ポリポーシスを高率に合併しますが、臨床症状を呈することは稀です。特に、食道の白色扁平ポリポーシスが疾患特異的です。
この他、良性腫瘍(甲状腺腫、乳腺線維嚢胞腫、脂肪腫、線維腫)、精神遅滞も屡伴います。

※上記症状は20歳後半までには90%の症例で認めるようになり、30歳代までには99%に粘膜皮膚病変が出現します。

予防

早期に確定診断して、その後の悪性腫瘍(乳腺、甲状腺、子宮内膜、腎臓など)の早期発見のために、定期健診が重要です。
18歳から尿検査を含めた検診を開始し、50歳からは大腸内視鏡が必要になります。また、18歳から男女ともに乳癌に対してのセルフチェックを開始し、25歳からは乳癌検診を行い、30歳前半からはマンモグラフィとMRIを開始します。甲状腺癌に対しても、18歳からエコー検診を行います。子宮内膜癌に対しては、30歳後半頃から吸引細胞診を行い、閉経女性に対しては、経膣エコーで経過観察します。

執筆:2011.5

▲PageTop

ページトップに戻る