コレステロール結晶塞栓症

コレステロール結晶塞栓症 (Cholesterol embolism、blue toe syndrome)

本症は動脈硬化を起こした大血管に形成された粥状硬化巣からコレステロール結晶が遊離して、末梢血管を塞栓することで様々な臓器障害を呈する疾患です。本症は動脈硬化を促進する高血圧、糖尿病、心筋梗塞、狭心症、動脈瘤、僧帽弁輪部石灰化などの基礎歴患者に多いです。皮膚症状や腎機能障害をきたすことが多いですが、消化管や中枢神経やなどにも障害を生じることがあります。

原因

カテーテル操作や抗凝固療法などにより、粥状硬化巣が損傷されることで生じると考えられています。特に医原性によるものが多く、血管内操作(50%)、外科手術(15%)、その他(19%)、誘因なし(16%)との報告もあります。また、心臓カテーテル検査を受けた患者の1.4%に本症が生じたとの報告もあります。 誘因の明らかな場合の発症時期は、数日以内が25%、1か月以内が30%、1年以内が37%であり、必ずしも医療行為を行った後すぐに発症するわけではないです。 男女差は7:1で、50-80歳代の男性に多いです。

症状

皮膚症状は、足底・足趾に暗紫紅色斑ないし網状皮斑、腫脹、チアノーゼ、皮膚潰瘍や皮膚壊死を認めることが多いです。激痛と伴うことが多いですが、微熱、筋痛などの非特異的症状のこともあります。尚、皮疹の合併率は35-96%と大きく開きがありますが、重症例では皮疹の合併頻度が高く、比較的早期に出現する傾向があるため、医原性の場合は、下肢の皮膚を注意深く観察する必要があります。
腎症状は、腎不全症状を呈し、高血圧、電解質異常、血尿、蛋白尿、乏尿、嘔気や食欲減退などを認めます。
消化管の末梢血管が塞栓されると、非特異的腹痛や嘔気・嘔吐や食欲減退、消化管出血、急性膵炎などの症状を認めます。
脳が塞栓されると脳卒中様症状や片眼の視力喪失、頭痛、せん妄、錯乱等が生じ、脊髄神経が塞栓されると不全対麻痺や馬尾症候群(腰痛、下肢の疼痛・痺れ、筋萎縮、膀胱・直腸障害など)、末梢神経が塞栓により侵されると、単神経障害が生じます。

診断

皮膚生検で血管内にコレステロール結晶を伴う塞栓を認めることで確定できますが、その病理組織所見が認められず、診断に苦慮することもあります。その他の臓器での生検は全身症状を考慮して、あまり行われていません。
また、臨床検査で好酸球増多を認めることが多いですが、正常値を呈することもあるので注意が必要です。腎障害があれば検査値にも異常が生じます。

治療

本症に対する確立した治療法は無く、塞栓された臓器障害症状の対症療法が行なわれます。急性期の疼痛や炎症に対しては、プレドニゾロン、末梢循環改善のためにプロスタサイクリン製剤の投与が試みられます。
腎機能障害を生じた場合、適応があれば透析導入も考慮します。尚、スタチン製剤内服により、透析導入の可能性を低減できることが報告されています。
難治性皮膚潰瘍や皮膚壊死は外科手術で除去します。

予後

本症の予後は極めて悪いとされていましたが、近年は比較的早期から診断されて治療されるようなったため、1年死亡率は12.5%に低下してきたとの報告もあります。しかし、塞栓による重症度で死亡率は大きく異なると考えられます。

執筆:2014.3

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