クリオピリン関連周期性症候群

クリオピリン関連周期性症候群 (cryopyrin-associated periodic syndrome; CAPS)

本症候群は、慢性乳児神経皮膚関節炎症候群 (chronic infantile neurological cutaneous articular syndrome; CINCA) 、マックル・ウェルズ症候群(Muckle-Wells syndrome; MWS)家族性寒冷蕁麻疹 (familial cold urticaria syndrome; FCU) の総称(詳細は末尾の表参照)で、IL-1βの過剰産生により炎症反応などが引き起こされる慢性自己炎症疾患群です。生後あるいは幼児期より発症し、生涯を通じて、発熱、関節痛、頭痛、倦怠感、結膜炎などの様々な炎症症状と蕁麻疹様発疹を繰り返します。発疹は掻痒を伴わないことが多いです。重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性があります。

原因

第1染色体長腕にあるクリオピリン遺伝子(CIAS1)変異により生じ、常染色体優性遺伝を呈することが多いです。しかし、CINCA症候群の臨床症状がみられる患者の40%には、CIAS1遺伝子変異が認められません。一般に、クリオピリンは細菌やウイルスなどの感染病原体を感知し、感染病原体を撃退するのに必要なIL-1β(炎症性サイトカイン)の産生を増大させて炎症応答を調整します。CIAS1遺伝子変異が生じると、感染病原体に応答したときだけでなく、常にIL-1βを過剰産生させるようになり、出生時または乳児期から認められる多数のCAPSの症状を引き起こし、生涯にわたって持続させ、臓器障害、関節の拘縮や破壊、難聴、アミロイドーシス等の合併症を引き起こします。

診断

症状に基づく臨床診断がきわめて重要です。CAPSの適切な診断には、症状に対する十分な評価、臨床検査、出生時から現在までの完全な病歴のほか、CIAS1遺伝子検査、他の自己炎症性疾患の鑑別を含めることが必要です。

治療

IL-1βの作用を阻害する薬剤として、アナンキラ(Anakinra) というIL-1受容体拮抗薬、リロナセプト(Rilonacept)という可溶化IL-1受容体結合蛋白、カナキヌマブ(Canakinumab)という抗IL-1βモノクロナル抗体があり、その有効性が報告されています。

CINCA症候群 Muckle-Wells
症候群(MWS)
家族性寒冷蕁麻疹
(FCU)
遺伝子および
遺伝様式
CIAS1/NLRP3/
NALP3/PYPAF1
常染色体優性
自然変異。家族性であることはほとんどない。
CIAS1/NLRP3/
NALP3/PYPAF1
常染色体優性
自然変異。一部に家族性が認められる。
CIAS1/NLRP3/
NALP3/PYPAF1
常染色体優性
多くが家族性であり、一部に自然変異が認められる。
人種差 あらゆる人種にみられる。 あらゆる人種にみられるが、ヨーロッパ人に多い。  あらゆる人種にみられるが、大半がヨーロッパ人である。
世界的にみた
変異の頻度
100万人にひとりの割合であり、おそらく世界中に6,500例超存在するものと考えられる。 100万人にひとりの割合であり、一部に家族性が認められたことから、CINCA症候群より多いものと考えられる。 100万人にひとりの割合またはそれ以上。アメリカでは300例超が診断されており、ほとんどが家族性である。
症状または発作
(フレア)の持続期間
持続性であり、フレア、発熱または炎症の間、症状が悪化する。 2~3日持続することが多く、一部の患者では、偶発的に発現する。低温によってフレアが誘発される。 低温ないし冷温に曝されると1~3時間後に発現し、12~24時持続する。
発症年齢 新生児期/乳児期。出生時に、発疹、症状、検査値の異常が認められることが多い。 乳児期であるが、幼少期または思春期での発現例が少数ある。 乳児期であり、低温ないし冷温に曝されると発症する。
皮膚/皮膚反応 表皮内汗管の好中球の増大とともに、蕁麻疹様発疹が絶えず認められる。フレア時に発疹が増強する。 表皮内汗管の好中球の増大とともに蕁麻疹様発疹が認められる。ほぼ毎日、発疹がみられ、フレア時に増強する。 低温が、表皮内汗管の好中球の増大とともに、蕁麻疹様発疹を引き起こす。毎日発疹がみられることもある。
神経学的所見 頭痛、発熱、慢性無菌性髄膜炎がみられ、中枢神経系の圧力が高い。多くに、精神的障害や認知面での障害、乳頭浮腫がみられる。 発熱、フレアとともに頭痛がみられることがある。このほかの中枢神経系の症状が多く認められることはめったにない。 低温に曝されると、発熱とともに頭痛がみられることがある。現時点では中枢神経系への著明な作用があるかどうかは明らかにされていない。
聴覚 多くに、乳児期/幼少期から感音性難聴の悪化が認められる。 多くに、思春期から感音性難聴の悪化が認められる。 一部の患者に軽度の聴覚障害がみられるが、クリオピリン周期性発熱症候群(CAPS)の炎症によるものかどうかは、現在のところ明らかにされていない。
乳頭浮腫、ぶどう膜炎、虹彩炎、結膜炎がみられる。角膜混濁や視力喪失を呈することもある。 フレアの間、結膜炎(非感染性)、上強膜炎がみられ、角膜混濁を呈することもある。 低温への曝露により引き起こされたフレアの間、結膜炎(非感染性)がみられる。
胸膜 心膜液貯留や心膜炎が認められる症例がある。 まれである。 観察されていない。
腹部 フレア時に、嘔気や嘔吐または中枢神経系の圧力の上昇が認められる。 フレア時に、一部に腹痛がみられる。 まれである。
リンパ 一部の患者に、肝臓肥大や脾臓肥大がみられ、多くにリンパ節腫大が認められる。 めったに認められない。 認められない。
関節/骨筋肉
および軟骨
関節痛、外反膝または内反膝が認められる。一部の患者には、前頭隆起、鞍鼻、拘縮、ばち状指がみられ、50%未満の患者の膝に骨の過成長が認められる。 フレア時に、痛みや関節痛を呈することが多い。 フレア時に関節痛や硬直を呈する。
血管炎 血管炎を呈することはまれである。 認められない。 認められない。
アミロイドーシス 2%未満の患者に、血清アミロイドA(SAA)タンパクの上昇によるアミロイドーシスが認められる。 25%超の患者に、血清アミロイドAタンパクの上昇が認められ、25%超の患者にアミロイドーシスがみられる。 一部の患者には、血清アミロイドAタンパクの上昇によるアミロイドーシスがみられる。
異常が認められる
検査値
赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク(CRP)、血清アミロイドAタンパクが慢性的に高値を示し、貧血、白血球増加症が認められる。 赤血球沈降速度、C反応性タンパク、血清アミロイドAタンパクが高値を示す。フレア時に、白血球増加症、高ガンマグロブリン血症がみられる。 赤血球沈降速度、C反応性タンパク、血清アミロイドAタンパクが高値を示す。フレア時に、白血球増加症がみられる。

執筆:2012.7

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