伴性遺伝性魚鱗癬

伴性遺伝性魚鱗癬 (x-linked ichthyosis)

本症は伴性劣性遺伝形式で男児にのみ発症する比較的軽症の魚鱗癬です。出生男子6000人当たり1人の頻度で生じ、人種差はありません。

原因

X染色体(Xp22.3)上にあるステロイドサルファターゼ(steroid sulfatase:STS) という酵素の遺伝子変異により生じます。この酵素は、角質において細胞間接着に寄与する硫酸コレステロールを分解しますが、変異により硫酸コレステロールが角質細胞間に蓄積して角質細胞が剥離遅延を生じるため、多くの鱗屑を認めるようになります。

臨床症状

生下時には皮膚症状がありませんが、生後しばらくしてから頭部や後頸部に鱗屑を認めるようになり、四肢屈曲部位にも同症状が出現することもありますが、手足には症状が出現しないことが多いです。幼少時期になると躯幹や四肢伸側を中心に比較的大きく暗褐色を呈する鱗屑がみられるようになり、頭部の鱗屑は徐々に軽快して目立たなくなります。その後は、四肢伸側、関節屈側、腹部などの鱗屑は、改善傾向を示しません
皮膚症状は冬の乾燥時期に目立ち、夏には軽減します。また、毛髪や爪に異常は生じませんが、毛穴に一致して、角質層が硬くなる角化がみられることもあります。

合併症

停留睾丸、角膜混濁、精神発達遅滞、低身長、点状軟骨異形成症、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(kallmann syndrome)を認めることもあります。
女性(保因者)は上記症状を呈しませんが、稀に出産時に遷延性分娩などが生じることがあります。

病理所見

角質が肥厚し、顆粒層および有棘層は正常ないし軽度の肥厚を認めます。

検査所見

患者の角化細胞、線維芽細胞、リンパ球などを採取して、STS活性を調べて診断できます。
また、PCRによる遺伝子解析でSTS欠失を大部分の確定診断ができますが、点突然変異や保因者ではPCRのみでは見落とされるため、QF-PCRあるいはFISHによって確定診断を行います。
胎児に本症を持つ妊婦(保因者)は、STS変異により胎盤のステロイド合成を阻害するため、尿中ステロイド(特に非加水分解型硫酸化ステロイド: nonhydrolyzed sulfated steroids)が通常より著減します。また、妊婦の血清中の非抱合型エストリオール低下を認めます。

治療

特効的な治療法はなく、対症療法が行われます。軽症例には、サリチル酸ワセリンや尿素軟膏、イソトレチノインやタザロテンクリーム、ビタミンD3軟膏などの外用治療で鱗屑を軽減することが一般的です。重症では他の魚鱗癬と同様にエトレチナート剤(ビタミンA誘導体)内服が使用されることもあります。

執筆:2014.9

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