風疹(三日はしか)

風疹(rubella、三日はしか)


本症は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。かつては6?9年毎に大きな流行があり多数の感染がみられたが、1996年以降は大きな流行は起きていません。季節的には春から初夏にかけてもっとも多く発生するが、冬にも少なからず発生があり、次第に季節性が薄れてきています。国内においてもその発生は減少傾向ですが、稀に見られる先天性風疹症候群予防のために、妊娠可能年齢およびそれ以前の女性に対するワクチン対策が重要な疾患です。

原因

風疹ウイルスはTogavirus科Rubivirus属に属する直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで、正十二面体のカプシド構造を有します。血清学的には亜型のない単一のウイルスです。鼻・咽頭部の粘膜に付着、侵入し増殖し、上気道粘膜より排泄されるウイルスが飛沫を介して伝播されますが、感染した人との密接な接触でも感染することがあります。感染力は発疹の発症前1週間~発疹消滅後1週間です。その伝染力は水痘、麻疹より弱いとされ、登校基準としては、紅斑性の発疹が消失するまで出席停止となります。

症状

感染から2~3週の潜伏期間後に、発熱、発疹、リンパ節腫脹(特に耳介後部、後頭部、頚部)が出現するが、発熱は風疹患者の約半数にみられる程度です。典型的な三症状が現れない場合、溶血性レンサ球菌による発疹、伝染性紅斑などとの鑑別診断を要することが少なくないです。 38~39度前後の発熱が発症者の約25~50%に3日程度続き、初期症状では鼻水、咳、痛みのないバラ色の斑点が口蓋にできます。癒合性のない点状の紅色小丘疹が拡大して多くは3日程度で消退するが、発疹が強度の場合には色素沈着を残す場合もあります。リンパ節(耳介後部、後頭部、頚部)は発疹の出現する数日前より腫れはじめ、発疹が消失しても3~6週間位持続します。時に、眼球結膜の軽度充血や、肝機能障害が見られる場合があります。
一般的に予後良好ですが、後述のように重篤な合併症を引き起こす場合がある。特に妊娠前半期の妊婦の初感染により、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が高率に出現するので問題になります。
合併症
関節炎、血小板減少性紫斑病(1/3,000~5,000人)を合併する可能性があるほか、妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こします。また、急性脳炎起こす(1/4,000~6,000人)ことがあり、極めて稀に重篤な状態になります。
先天性風疹症候群
先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome;CRS)とは、妊娠初期に妊婦が風疹に感染することによって、新生児に様々な奇形や障害をもたらす症候群のことです。成人でも15%程度の無症状感染者があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得ます。妊娠の初期に、ある量以上のウィルス増殖が有ればCRSを発症すると考えられ、特に2~16週位の間で早いほど起こりやすい。CRSの診断方法は、症状、ウイルス遺伝子検出以外に、IgM抗体は胎盤通過をしないので臍帯血や胎児血からの風疹IgM抗体の検出が有れば感染の証拠になります。出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続けます。典型的な三大症状は、心奇形、難聴、白内障です。
先天性症状:
・心奇形(動脈管開存症、肺動脈弁狭窄症、心室中隔欠損、心房中隔欠損など)
・眼異常(白内障、緑内障、網膜症、脈絡網膜炎)
・聴力障害(感音性難聴)
・出血傾向(血小板減少症)
・骨端発育障害
・低出生体重児
・肝脾腫
・糖尿病
・間質性肺炎
・精神発達遅延
・脳性麻痺

※注意点
妊娠21週以降であれば風疹に感染してもCRSのリスクは低いです。そのため、妊娠後半期であれば風疹に感染したからといって子供を諦める必要はく、通常は妊娠は継続されます。

診断

ウイルスの分離が基本であるが通常は行われず、保険適用もありません。一般的には、保険適用される血清診断が行われます。最近ではELISAが使われるようになり、急性期で特異的IgM抗体が検出されれば、単一血清での診断も可能です。
先天性風疹症候群の診断等による基準
1.風疹ウイルスの分離陽性、またはウイルス遺伝子の検出(RT-PCR 法など)
2.血清中に風疹特異的IgM 抗体の存在
3.血清中の風疹HI価が移行抗体の推移から予想される値を高く越えて持続
(出生児の風しんHI価が、月あたり1/2 の低下率で低下していない。)

治療

特異的治療法はなく、対症的に行います。発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤を用います。
ワクチン接種による予防
弱毒生ワクチンが実用化され、小児期(生後12カ月以上~90カ月未満の男女)に予防接種が行われています。2006年4月以降は、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からは麻疹・風疹混合ワクチンを接種することになりました。定期接種ではありますが、風疹の予防接種をしていない人も多いです。以前は中学2年生に接種が行われており、特に1979年4月2日~1987年10月1日に産まれた人は法律の変わり目の時期に中学校時代を過ごしているため、予防接種を受けていない人が多いです。但し自治体によっては移行期間を設けて、法律の変わり目に生まれた人は従来どおりの接種時期でも受けることが出来るようにしたところもあります。現時点での予防接種率をみると、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加したが、逆に中学生での接種率は減少し、対策の強化が課題となっています。
予防接種の徹底したアメリカ等では日本人の入国に際して風疹の予防接種を行う指導がなされている。なお、アメリカの医学書では日本人は風疹の感染源として説明されている程です。
妊娠可能年齢の女性で風疹抗体が無い場合、ワクチン接種はCRSを予防する観点からも強く推奨されているが、妊娠中のワクチン接種は避けます。ワクチン接種後は2ヶ月間の避妊が必要です。授乳中の母親がワクチン接種を受けた場合、乳を飲んでいる赤ちゃんに、ワクチン・ウイルスが感染し赤い発疹がでることがあるが、重い合併症は起こしません。

執筆:2011.3

▲PageTop

ページトップに戻る