パラコクシジオイデス症

パラコクシジオイデス症 (paracoccidiomycosis)

本症はParacocccidioides brasiliensis あるいはP. lutziiに起因する真菌症です。主に経気道的に感染して肺に病巣を作るとともに、 皮膚、粘膜、 リンパ節、内臓など全身に拡大して疼痛を伴います。口腔粘膜の潰瘍性病変、著しい頚部リンパ節腫脹、また、肺線維症を引き起し重篤な呼吸不全に陥ることもあります。

疫学

本症は中南米における個別の発生地のみで起こり、10〜50歳の男性に多く発症し、特にコロンビア、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチンにおいて最も高頻度に発症します。日本国内では来日ブラジル人による「輸入感染症」として報告されています。
本症は比較的稀な日和見感染症ですが、農業従事者(特にブラジルのコーヒー栽培従事者)に発症しやすく、ときに免疫不全患者(AIDSなど)のにおいて発生します。栄養不良、アルコール依存症、喫煙も本症の発症因子として挙げられています。P. brasiliensisの自然界における特異的生息場所は依然として未確定ですが、糸状菌として土壌中に存在し、胞子の吸入により感染するものと推定されます。胞子は肺内で侵襲性酵母に転換し、血行性およびリンパ行性に他の部位へ拡大すると考えられています。
本症を引き起こす真菌がアルマジロに保菌されているとの報告がありますが、動物-ヒト感染やヒト-ヒト感染は生じないと考えられています。

症状

主に肺感染症の症状からはじまり、引き続いて慢性かつ進行性に全身へ播種します。特に、口腔内粘膜の潰瘍や、鼻および口の皮膚粘膜境界縁を侵します。また、頸部、鎖骨上窩、または腋窩リンパ節の腫大がみられることが多いです。
臨床的に、急性/亜急性の症状を呈する若年型と慢性進行性の成人型に分類されます。
若年型:発熱、体重減少、倦怠感などの非特異的症状が出現し、リンパ節腫大や化膿、瘻孔形成し、更には全身のリンパ節腫大や肝脾腫を呈し重症になります。また、多発性皮膚病変も併発しますが、粘膜や呼吸器に症状を認めないことが多いです。本症の5-10%を占めます。罹患率に男女差はありません。
成人型:初期から呼吸器症状(咳、呼吸困難、倦怠感、発熱、体重減少など)が出現し、引き続き1/3程度が慢性呼吸器疾患(肺線維症、肺胞内嚢胞、肺気腫、肺高血圧、肺性心など)に移行していきます。また、急性期の肺感染症の患者の約50%が咽喉頭の粘膜病変を生じます。口腔内病変は鼻や咽頭の潰瘍、下顎や頸部リンパ節腫脹を伴うことがあります。皮膚病変は肺からの血行性播種により生じ、落屑性丘疹、皮膚結節や潰瘍、疣状皮疹などが認められます。一般に、頸部にリンパ節腫大が生じることが多いです。男性に多く罹患します(6-15:1)

診断

特徴的な多数の出芽を形成する大型酵母(2-30μm)が検体(生検組織、喀痰、皮膚病変)に存在すると強力な推定的根拠となります。約6割程度の患者は胸Xpにて間質性肺炎様所見を呈します。培養にて確定診断できますが、35-37℃で酵母型に変換することを確認することが必要です。
血清学的診断は、免疫拡散法で血中パラコクシジオイデス抗体を測定します。
免疫測定法(ELISA)で同様に抗体を測定できますが、ヒストプラズマ症やロボマイコーシスと交叉反応を生じます。いずれの方法もP. lutziiに対しては陰性になる可能性があります。また、流行地域内の健常人では、血中パラコクシジオイデス抗体は30%程度陽性であることに留意する必要があります。

治療

本症に対する抗真菌剤の治療を行えば、致死に至ることは稀ですが、再発することはしばしばあります。
トリアゾール系抗真菌薬が有効で、特に経口イトラコナゾールが使用されています。イミダゾールであるケトコナゾールも有効です。フルコナゾールは中枢神経への浸潤がある症例では有効です。
スルホンアミド系(サルファジアジン、ST合剤)は安価であるため一部の国々で広く使用されていますが、菌の増殖を抑制し病変を軽快させますが非治癒的です。静注アムホテリシンBは上記治療法で症状が改善しないような重症例に使用されます。

執筆:2013.9

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