非結核性(非定型)抗酸菌症

非結核性(非定型)抗酸菌症〔nontuberculous(atypical)mycobacteriosis〕

本症は抗酸菌のうち、結核菌群とらい菌を除いた非結核性抗酸菌による感染症の総称です。近年では、非定型抗酸菌という名称よりも、非結核性抗酸菌と呼ばれることが多いです。このなかでヒトに対して病原性をもつ菌は約30 種類で、ヒトからヒトへの感染はないとされています。従って患者を隔離する必要は全くなく、入院が必要な例は一般病棟で管理するのが原則です。公衆衛生的な問題も無いので、保健所に届け出る必要もありません。
非結核性抗酸菌は、土、埃、水等の自然環境を住処とする環境寄生菌であり、だれでもある程度の暴露を受けているものと考えられています。
本症の大部分は慢性肺感染症(97%)ですが、肺外疾患であるリンパ節炎や皮膚感染症はわずか3%程度と非常に少ないです。また、AIDS等の細胞性免疫の高度な低下状態では全身播種型の重篤な病態を呈することもあります。
一般に非結核性抗酸菌症は難治で、一部の菌種を除き薬剤のみで治癒させることは困難なのが現状です。この点も多剤耐性結核を除きほとんどの症例を化学療法で治癒させることが出来る結核との大きな相違点となっています。

本症の分類として、発育速度と光発色性を基にした下記に示すRunyon分類があります。

slow growers 結核菌群 M.tuberculosis M.bovis Mmicroti M.africanum
I群菌(光発色菌) M.kansasii M.marinum M.simiae
II群菌(暗発色菌) M.scrofulaceum M.szulgai M.gordonae
III群菌(非発色菌) M.avium M.intracellulare M.xenopi M.ulceruns M.malmoense M.gastri M.nonchromogenicum M.terrae
M.triviale
rapid growers IV群菌(迅速発育菌) M.fortuitum M.chelonae M.abscessus M.smegmatis

肺の非結核性抗酸菌症で日本に多い菌種は、Mycobacterium avium-intracellulare complex (MAC) が70%前後、Mycobacterium kansasiiが10-20%、両者で90%以上を占めます。
皮膚での非結核性抗酸菌症では、M.marinumが約60-70%を占め、次いでM.fortuitum、MACなどが原因菌として報告されています。

1.Mycobacterium marinum 感染症

M. marinum は淡塩水を好むため、プールや熱帯魚の魚槽水などを介して感染する例が大多数です。実際、本邦症例の半数以上は水族館職員や熱帯魚飼育者に好発しており、手指の背面・手背・肘&膝関節などの外傷を生じやすい部位から侵入して感染し、数週間の潜伏期を経て発症します。病初期では、皮疹は中央部に膿疱や痂皮を伴う発赤や結節性局面を呈しますが、次第に落屑を伴うようになり、陳旧性になると皮膚潰瘍や疣贅状局面を形成します。皮疹は単発の場合が多いですが、リンパ行性に皮疹が生じる場合や、免疫抑制状態患者では全身播種する場合もあります。

診断
膿汁、生検組織、魚槽水を培養することで菌を検出します。最近では、核酸増幅法(PCR法) やDNA-DNA hybridization(DDH)法で正確な診断ができるようになりました。
治療
テトラサイクリン系抗生物質やリファンピシンなどが有効で、3 ~ 4 か月の治療で治癒することが多いです。無効例ではクラリスロマイシンやレボフロキサシンなどが効果を示すこともあります。本菌は発育可能温度域が25 ~33 ℃であるため、使い捨てカイロなどによる局所温熱療法も有効です。

2.Mycobacterium avium-intracellulare complex (MAC) 感染症

MACは、土壌、水、野鳥、家畜などの自然環境中に広く分布する非結核性抗酸菌です。 24 時間風呂や温泉、塵芥から感染することが多いです。四肢や殿部の外力の加わる部位に結節や膿瘍、潰瘍、皮下硬結などを生じます。

診断

M. marinumの診断法と同じです。

治療

確実な効果をもたらす抗菌剤療法は確立しておらず、抗結核薬とマクロライド系やニューキノロン系の薬剤を併用することが多いです。限局した皮膚症状であれば外科的切除も有効です。肺感染症であるMACでも同様に治療法は確立していないが、クラリスロマイシン(あるいはアジスロマイシン)+エタンブトール+リファンピシン+ストレプトマイシンの4剤併用が推奨されています。治療で排菌陰性化しても、長期に観察すると再排菌する例がしばしば認められるので、油断はできません。

3.Mycobacterium fortuitum 感染症とMycobacterium chelonae 感染症

外傷などからの局所感染が多く、皮疹は冷膿瘍や瘻孔、潰瘍、結節など多彩な症状が見られます。時に免疫抑制状態や血液透析などの患者から播種性に皮膚症状を呈することもあります。至適発育温度が28-30℃であるため、皮膚温の低下しやすい秋から冬にかけて、四肢などの露出部位に発生することが多いです。

治療

迅速発育菌は一般に抗結核薬は無効であることが多く、テトラサイクリン、ニューキノロン、クラリスロマシシンが比較的有効のことが多いです。温熱療法やヨードカリ内服で有効なこともありますが、改善ない場合は外科的切除になります。

4.Mycobacterium kansasii 感染症

皮疹は疣贅状局面、結節、潰瘍など多彩な症状を呈します。治療には抗結核薬、ニューキノロン系、マクロライド系などが有効です。

執筆:2011.8

▲PageTop

ページトップに戻る