ヒストプラズマ症

ヒストプラズマ症 (Histoplasmosis)

本症は、 Histoplasma capsulatum という真菌を吸入することにより経気道的に感染し、 肺、 さらには肝、 脾臓など全身の諸臓器を冒す疾患です。細胞性免疫の低下した患者(AIDS、癌などの化学療法中、先天性免疫不全症など)では特に重篤となり致死率が高くなりますが、健常人にも感染することがあります。呼吸器感染における症状は、 感冒~肺炎に類似している場合が多く、 特徴的な所見はありません。
H.capsulatumは土壌中で通常菌糸状で発育しますが、 体内ではマクロファージ内で酵母型細胞として分芽して、リンパ行性に諸臓器へ拡散します。免疫能が十分あればH.capsulatumを取り囲んで排除する機能が働き、最終的には石灰化して治癒します。しかし、免疫応答が不十分であると多臓器に本症が進行性に播種します。

疫学

米国ではオハイオ川渓谷~ミシシッピー川下流域に報告例が多く、それ以外にも、 中南米、 アフリカ、東南アジア、 ヨーロッパなど世界中の多くの地域で散発的に見られます。本邦では、流行地域への渡航者が感染して国内に持ち込まれる「輸入感染症」としての症例が多いですが、日本国内での感染と考えられる症例も報告されています。
土壌の湿度と酸性度が本症の流行と関連していると考えられており、鳥やコウモリの糞に汚染された土壌ではH.capsulatumの増殖を促進します。このような土壌で小分生子になって発育したH.capsulatumを吸入することで、人に感染します。

症状

土壌中のH.capsulatumを吸入して3-17日後に発症しますが、非特異的呼吸器感染症で、感冒~肺炎に類似している場合が多く、 X-P所見にも異常を認めないことが多く、特徴的所見はありません。慢性期になると結核類似症状になり、多臓器にも播種して致命的になることもあります。重症になると、縦隔炎、肝脾腫、リンパ節炎、副腎肥大、視力障害などを生じることもあります。
稀に、口唇、舌、歯肉、鼻咽喉、喉頭の粘膜および皮膚に潰瘍や結節を生じることがあります。消化管の病変により、下痢、下血を起こすこともあります。

診断

臨床的には診断困難であることが多いです。重症になると、肺疾患が基盤にある慢性呼吸器疾患型、全身播種型になります。
気管支肺胞洗浄による喀痰、血液、罹患臓器の生検から得られた検体の真菌培養検査で確定できますが、菌分離率が低いことが難点です。また、高度病原性真菌症のため、培養には十分な注意が必要です。
血液・尿採取して、ヒストプラズマ抗原や抗体検査もありますが、その検査結果の判定には注意が必要です。
最近では、パラフィン包埋組織、生検組織、浸出液などからの遺伝子検出による診断 (Real time PCR)が可能になっています。

治療

免疫能が十分あれば、大多数の人は本症を発症しませんので、治療は行いません。
急性発症例や慢性あるいは全身播種型の本症に対しては、抗真菌剤投与(アンフォテリシンB、イトラコナゾールなど)を行います。

執筆:2013.9

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