白癬

白癬(水虫、みずむし)

白癬の原因である皮膚糸状菌は、ケラチン蛋白(表皮の角質層)を栄養源とする真菌の一群です。
皮膚糸状菌の寄生が角層、毛、爪に留まる浅在性白癬と、皮膚深部(真皮、皮下組織)あるいは内臓に寄生する深在性白癬に分類されます。前者は感染する部位によって、頭部白癬、股部白癬、体部白癬、足白癬、手白癬、爪白癬と呼称されています。後者は掻破などで真皮内に入り込んだ皮膚糸状菌が、宿主の免疫不全やステロイドの長期外用などで深在性に増殖して白癬性肉芽腫を形成するのが大部分で、内臓にできる白癬性肉芽腫は極めて稀です。

頭部白癬
頭髪や髭の毛包に寄生した白癬で、頭部白癬の好発年齢は10歳以下の小児が殆どですが、最近、格闘技選手の間で流行している、海外からのトンズランス感染症が増加しています。
症状は、類円形の銀色の鱗屑を伴う脱毛斑(頭部浅在性白癬・しらくも)のものと、脱毛を伴う膿瘍ないし毛包周囲に化膿性炎症が強い病変(ケルスス禿瘡)があります。重要な症状として、力を入れず軽く毛を引っぱるだけで、病変の毛が容易に抜けることです。
猫に寄生する菌(ミクロスポルム・カニス)や格闘技選手の間で流行している菌(トリコフィトン・トンズランス)が原因菌として重要です。

体部白癬(股部白癬も含む)
産毛を含めた生毛が生えてくる部位に生じた白癬です。症状は、小型の類円形紅斑が生じ、辺縁はやや盛り上がった丘疹ができ、症状が拡大してくると環状(リング状)になり、強い痒みを伴います。猫を飼育している家庭では猫に寄生する菌が原因のこともあります。股部白癬は、陰股部辺縁の盛り上がったリング状の紅斑ができ、本人ないし家族に足白癬を伴うことが多いです。

足白癬
小水疱型(汗疱型)、趾間型、角質増殖型に分類されます。特に角質増殖型は慢性的に経過して季節的消長が見られず、起因菌はほぼtrichophyton rubrumです。
小水疱型では、土踏まずや足の側縁などに小水疱が多発します。趾間型では、足指の間の皮膚が白くふやけたようになります。冬は症状が治まりますが、夏になるとまた再発します。小水疱型や趾間型をこじらせて、二次的に細菌感染を生じて蜂窩織炎やリンパ管炎になることもあるので、適切な治療をしなくてはなりません。特に、糖尿病を合併していると重症化しやすいので、注意が必要です。

手白癬
手背を除く手掌、手指、指間に生じた白癬ですが、比較的稀です。職業柄、水仕事が長時間にわたる場合は手荒れに似た症状があるため、疑ってみることも必要です。

爪白癬
皮膚糸状菌が爪表面あるいは爪床の上から侵入して徐々に爪基部に向かって増殖して白濁して爪の光沢が消失したり、症状が進行すると爪自体が肥厚して脆くなってくることもあります。足白癬から連続的に糸状菌が爪の中に侵入してくる場合が多いようです。爪白癬による爪変形が生じると、歩行時に疼痛が生じることもあります。

診断

浅在性白癬では皮膚糸状菌のほとんどが角層・毛・爪に存在するため、ハサミ・メス・ピンセットなどで病変部を一部採取して直接顕微鏡検査(鏡検)すれば、数分で診断できなす。しかし、採取した検体に糸状菌がいなければ当然ながら陰性になるので、時期をずらして再検査が必要になることもあります。また、深在性真菌症などではクロマイサブロー培地で真菌培養すると原因糸状菌種を確定することができ、臨床的特徴や治療経過を把握することができます。特に頭部白癬においては、病毛を採取して真菌培養した方が直接鏡検よりも信頼性が高いとされています。 皮膚糸状菌の存在を確定しないまま治療に踏み切ると、他疾患の場合には症状を悪化させたり、効果のない無駄な治療になってしまうので、正確な診断をすることが治療成功の秘訣です。

治療

浅在性白癬は寄生部位によって治療法も少しづつ異なってきます。理論上、皮膚糸状菌の寄生部位の表皮・毛・爪が新陳代謝で新たに入れ替わる期間、抗真菌薬(外用、内服)の濃度を維持すれば、皮膚糸状菌を死滅させることが出来るはずですが、現実にはそれよりも長期間治療する必要があります。 一般的には、体部白癬・股部白癬は1-2ヶ月、足白癬は、軽症で最低3ヶ月、重症例では1~2年、頭部白癬は2~3ヶ月、爪白癬は、手の爪は3-6ヶ月、足の爪は0.5~1.5年です。重症の足白癬や爪白癬では内服治療が必要です。
外用療法(局所療法)
抗真菌外用薬には液剤(ローション)、クリーム剤、軟膏等の基剤がありますが、クリーム剤は薬ののびがよく、角質層への浸透性が良好などの理由で、最も頻用されています。しかし、湿潤した部位やびらん部位にクリーム剤や液剤を外用すると悪化しやすいので、使い分けが重要です。 抗真菌の種類には、チオカルバメート系、イミダゾール系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、モルフォリン系に分類できます。
内服治療
皮膚真菌症における経口抗真菌剤には、 グリセオフルビン、イトラコナゾール、テルビナフィンがあります。 グリセオフルビンは長期間内服しなければならないので、現在では爪白癬に使用されることはほとんどありませんが、他の白癬症にはまだ使用されることもあります。 イトラコナゾールとテルビナフィンは最近開発された薬剤で、殺真菌作用が強く、副作用が少ないなどの優れた性質を持ち、臨床効果も極めて優れています。ただし、薬の値段がやや高いので、治療費がかさみます。両者とも内服治療中は肝・腎・血液障害などの可能性があるので、定期検査が必要です。また、イトラコナゾールは、種々の薬剤との相互作用があるので注意する必要があります。
部位別治療法
頭部白癬
頭部白癬では、皮膚糸状菌が毛に寄生するので、約2~3ヶ月間経口抗真菌薬を使用します。外用剤は病巣をかえってこじらせることが多いので使用せず、よく石鹸で洗髪するように指導します。

体部白癬(股部白癬も含む)
体部白癬・股部白癬の治療は、通常は抗真菌外用薬で対処します。しかし、広範囲な病変であったり、再発を繰り返す場合、感染力が強く毛内寄生菌であるトンズランス感染症の場合、外用ステロイド剤が長期使用されていた白癬病変の場合等は、経口抗真菌剤を併用します。

足白癬
小水疱型や趾間型足白癬では、抗真菌外用薬が第1選択になります。病変部のみだけでなく、糸状菌が存在しても自覚症状の無い趾間から足底全体にも外用します。また、足白癬を治癒させても、家庭内にはびこる皮膚糸状菌を根絶しないと、再感染を生じる可能性があります。
趾間型足白癬でびらんや湿潤のひどい場合、細菌感染やリンパ管炎を生じている場合、抗真菌外用薬などによる接触皮膚炎を合併している場合などは、短期間抗生剤、ステロイド剤、亜鉛化軟膏などを併用して病変部を乾燥させてから、白癬の治療を行います。外用期間は、軽症例や発病後間もない例では3ヶ月程度で構いませんが、多くの通常の足白癬では足底部の角質層が厚いので、1~2年の外用が必要です。角質増殖型足白癬は、外用剤単独では難治で、角質軟化剤、経口抗真菌剤の併用が必要です。

爪白癬
爪白癬の治療は、外用剤では普通困難であり、経口抗真菌剤による治療が必要です。通常、イトラコナゾールはパルス療法(1週間内服、3週間休薬を3サイクル繰り返す)、テルビナフィンは6ヶ月毎日内服を行います。これらの内服治療を行っても難治性の爪白癬がありますが、病変部を外科的あるいは物理的に除去して内服治療を併用して改善することもあります。

白癬の再発防止・日常生活における注意点

白癬の感染経路はヒト、動物(猫、犬、牛)、土壌からの直接接種感染のほかに、菌を含む病的材料(鱗屑、毛)が付着するスリッパ、浴場の足拭きマット、畳、脱衣棚などを介しての間接感染が考えられます。また、感染促進因子には局所因子(発汗、表皮剥離、間擦部位、ステロイド外用)と全身的因子(悪性腫瘍、内分泌異常、糖尿病、ステロイド内服)などがあります。 日常生活上での注意点として、患部を清潔に保ち、高温多湿を避けるよう注意します。家族内に白癬患者が複数いる場合には患者全員の治療を行いましょう。感染源として可能性が高い共用するスリッパ、サンダル、浴場の足拭きマットを頻回に取り替えて、滅菌(日光、熱湯)します。飼育している猫・犬がいる場合は、必要により診察・治療を行いましょう。特に格闘技選手の間で流行しているトンズランス感染症は、保菌者も多いためクラブ全員で対策を立てることが大切です。

執筆:2009.9

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