皮膚筋炎・多発性筋炎

皮膚筋炎・多発性筋炎(Dermatomyositis/Polymyositis; DM/PM)

主として四肢近位筋群、頸筋、咽頭筋などの対称性筋力低下をきたす横紋筋のびまん性炎症性筋疾患です。これに加えて特徴的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎といいます。
本邦では、1991年年間推計受療患者数は、皮膚筋炎3,000名、多発性筋炎3,000名でした。年間発病率は人口10万あたり0.2-0.5人、有病率は人口10万あたり約6人と推定されます。2003年度の多発性筋炎・皮膚筋炎の特定疾患医療受給者数は6,257人(男女比1:2.6、但し小児例では男女差を認めない)でした。発症年齢は、5~15歳に小さな、40~60歳に大きなピークがあります。特に高齢者では悪性腫瘍合併例がみられますが、小児例では稀です。
皮膚筋炎・多発性筋炎の病因は、ウイルス感染・日光暴露あるいはある種の薬剤服用後に本症が発症することがあることから、その病因には遺伝子素因に加えて何らかの環境要因が関与していることが推測されています。その結果、横紋筋を中心に過剰な免疫応答が起こり、組織障害が惹起されるものと推測されています。

症状

(1)全身症状
発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少などです。
(2)筋症状
筋肉痛は約60%の症例に認められます。また、四肢近位筋、頸筋屈筋・咽頭・喉頭筋などの筋力低下がみられることが多いです。そのために、階段昇降、しゃがみ立ち、重いものの持ち上げ、仰臥位からの頭部挙上や腕の挙上などが困難とな利増す。咽頭・喉頭筋群が侵されると構語障害・嚥下困難が起こります。重症例では、稀に横隔膜・肋間筋障害にとる呼吸不全も起こりえます。進行すると、筋萎縮を認めることもあります。
(3)皮膚症状
ヘリオトロープ疹とゴットロン徴候が皮膚筋炎に特徴的にみられます。
ヘリオトロープ疹とは、両側あるいは片側の眼瞼周囲、特に上眼瞼に出現する淡紫紅色の浮腫性紅斑をいいます。黄色人種では色調が褐色調になるため、暗紫色を呈することが多いです。ほとんど痒みを伴わないのが特徴であり、日光暴露で憎悪することがあります。
ゴットロン徴候とは、手指関節背側にみられる紫紅色の角化性あるいは萎縮性の紅斑あるいは丘疹のことです。肘や膝伸側では対称性の角化性紅斑が生じることが多いです。
この他にも、爪囲紅斑、爪上部の出血点、前頚部~上胸部(V neck-sign)に光過敏症様紅斑や肩・上背部(Shawl sign)に浮腫性紅斑、皮膚の難治性潰瘍なども皮膚筋炎でよく認められます。レイノー現象も約30%の症例にみられるが軽症であり、強皮症のように皮膚潰瘍,手指壊疽を伴うことは少ないです。小児の皮膚筋炎では、指尖潰瘍や皮下石灰化などが多く認められます。
(4)肺病変
間質性肺炎は予後を左右する病変です。特に急性発症例の中には、急速に進行して呼吸不全となって死亡する予後不良の病型があります。慢性に経過する間質性肺炎では、自覚症状としては乾性咳嗽と息切れがみられ、理学的所見では両側下肺野に捻髪音を聴取し、胸部X線写真、胸部CT検査では両側下肺野を中心に粒状・線状・網状影がみられます。肺機能検査では拘束性障害のパターンを呈します。上記検査に加えて、KL-6、SP-Dなどを含めた血液検査や血ガス分析をして病勢の把握に努めることが重要です。
また、呼吸筋筋力低下による低換気、咽頭・喉頭筋の筋力低下による誤嚥性肺炎、投与薬剤による日和見感染などにも注意を払うことが必要です。
(5)心病変
進行例では、心筋炎や線維化による不整脈、心不全などがみられることがあります。稀に心膜炎もみられます。
(6)悪性腫瘍の合併
悪性腫瘍は成人皮膚筋炎の約30%に合併し、多発性筋炎に合併する率よりも高いとされています。特に50歳以上では合併率が高くなります。本症発症の1年前後以内の発症が多く、罹患臓器に特異性はありません。悪性腫瘍切除後に症状が改善することもあります。
(7)その他
約30%の症例に関節痛はよくみられるが、軽症で一過性が多く、関節炎は稀です。原則として骨破壊や変形を伴いません。ときにリンパ節腫脹をみます。
小児の皮膚筋炎では、血管炎に伴う症状として、消化器潰瘍による腹痛、吐血、下血などを伴うことがあります。

検査

クレアチンキナーゼ(CK)は筋炎の活動性のよいマーカーになるので、診断のみならず、治療効果や病勢の判断に有用です。
筋電図は筋障害の有無や筋炎の部位を判定するためには有用ですが、その活動性の評価には適しません。
筋生検は筋病変部位に行い、筋線維の変性・萎縮による大小不同、炎症性細胞浸潤、筋細胞の貪食像、再生線維の増加などの筋原性の病理変化を認めます。
抗核抗体の陽性率は約60%程度ですが、診断基準に採用されている抗Jo-1抗体は皮膚筋炎・多発性筋炎の約30%に陽性になるにとどまります。

治療

急性期には、安静の保持が大切です。ただし、長期の安静は廃用性筋萎縮をきたして、筋力の回復を遅らせるため、筋原性酵素(CK、アルドラーゼ、LDH、GOT(AST)、GPT(ALT))が正常化した時点で、関節拘縮予防のため、他動的な関節の屈曲・伸展運動を行い、関節は良肢位に保ちます。筋炎鎮静化(血清CK値の正常化)後は、筋力回復のための理学療法 (等尺性訓練・等張性訓練)を開始します。筋力低下が著しいときには、良肢位の維持、誤嚥の防止などが必要となります。
定型的な皮膚筋炎・多発性筋炎に対しては副腎皮質ホルモンの経口投与が行われます。プレドニゾロン換算で1日40~60mgが初回投与量として用いられます。2~4週間にわたって初回投与量を継続した後、理学的所見、検査所見の改善を確認した後、2週間に10%の割合で漸減します。
検査所見としては、血清中の筋原性酵素および尿クレアチン/クレアチニン比が活動性の指標判定に有用です。活動期には血清ミオグロビン値も上昇します。筋力萎縮が著しい場合には、筋力の回復は筋原性酵素の回復よりも更に遅れます。
初期投与量に対して反応が悪い場合には、投与量の50%増のステロイド剤を経口投与するか、あるいはステロイド・パルス療法が行われます。
治療中に筋原酵素が上昇する場合は、急激な減量、急性憎悪の前兆あるいは運動負荷のかけすぎのいずれかです。
ステロイド剤に反応が悪い場合には、免疫抑制剤の併用が試みられます。メソトレキセート(週 5~15mg、経口投与あるいは筋注)あるいはアザチオプリン(1日50~100mg経口投与)が用いられることが多いです(保険適応ではない)。γ-グロブリン大量静注療法の有効性も指摘されていますが、保険適応ではない。進行性の間質性肺炎を合併している症例では、早期よりシクロホスファミド大量静注療法を反復して行うことが試みられています。また、シクロスポリン、タクロリムス投与も試験的に行われています。これらもいずれも保険適応外です。

予後

5年生存率は60~80%ですが、近年、早期発見・早期治療が可能になったことに加えて新たな治療法の開発により本症の予後は更に改善中です。しかし、一部の症例は治療抵抗性であり、緩徐に筋萎縮が進行してQOLが障害されます。
また、血清中のCKなどの筋原性酵素が低値を示し、進行性の間質性肺炎がある皮膚筋炎症例は、治療抵抗性であり呼吸不全となり、不幸な転帰を取ることが多いです。本症の主な死因としては、悪性腫瘍・間質性肺炎・誤嚥性肺炎・心不全・日和見感染症などが挙げられます。



※本症は特定疾患のため、医療費助成の制度があり、「特定疾患医療受給者証」の交付を受けると治療にかかった費用の一部が助成されます。

執筆:2010.7

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