Birt-Hogg-Dubé症候群

Birt-Hogg-Dubé症候群 (BHDS)

本症候群は、顔面頭頚部の多発性皮膚丘疹(線維毛包腫)と肺疾患(多発性嚢胞, 反復性気胸)、腎腫瘍の3主徴を呈する、稀な常染色体優性遺伝疾患です。

原因

本症候群の原因遺伝子は、17p11.2に同定されたfolliculin(FLCN)遺伝子の変異によるものです。正常なFLCN遺伝子から生じたフォリクリン蛋白質は、皮膚と皮膚付属器、腎臓遠位ネフロン、肺I型肺胞上皮や間質細胞など、ほぼ全身の諸臓器に発現しています。FLCN遺伝子の詳細な機能に関しては不明ですが、腫瘍抑制遺伝子として細胞内で機能していると考えられています。従って、この遺伝子異常により、線維毛包腫や腎腫瘍が生じると考えられています。

症状

本症候群は、必ずしも3症状が全て揃うわけではなく、様々な組み合わせや肺病変単独症状のことも多いです。
1)肺: 肺嚢胞・自然気胸は、BHDS の診断の契機となる重要な症候の一つです。
本症候群の患者では、胸部CT で89%(気胸発症者では全例)に肺嚢胞が認められています。肺嚢胞の大きさは、長径1cm 以下の小さなものから2cm 以上の大きなものまでバラツキが多く、多発性のことが多いです。肺嚢胞の融合傾向はなく、肺実質内にも小さな嚢胞が認めますが、肺下葉縦隔側・胸膜直下に比較的大きな嚢胞がより多く存在する特徴があります。
肺嚢胞自体は症状がないため、気胸を発症しない限り肺嚢胞の存在は気づかれないため、肺嚢胞は皮膚病変や腎腫瘍よりも早い時期から発生している可能性があります。
自然気胸は男女差なく、20~40歳の間に多く発症し、40歳以降には逆に少なくなります。
肺嚢胞の病理所見は、病変は肺の小葉の辺縁に位置し、嚢胞壁内側には肺胞上皮が一層配列しているおり、ほとんど炎症所見は認めないなどの特徴があります。

2)皮膚:頭頸部や上半身に数mm〜小豆大の丘疹が単発あるいは多発します。以前は、毛包性の皮膚良性過誤腫である毛盤腫(trichodiscoma)あるいは線維性疣贅(acrochordon)とも呼ばれていましたが、現在ではこれらは全て線維毛包腫(fibrofolliculoma)であると認識されています。線維毛包腫は20歳以降に出現しやすくなります。

3)腎臓: 本症候群における腎腫瘍は40-70歳の中高年齢層に発症しやすく、多発性・両側性であり、低悪性度組織型の頻度が高いという特徴があります。嫌色素性細胞癌や嫌色素性細胞癌とオンコサイトーマからなるhybrid oncocytic/chromophobe tumorが多く、その他にも淡明細胞癌や乳頭状腎細胞癌など複数の組織型が認められることも少なくないです。従って、腎病変は本症候群の予後を規定するため、定期的なスクリーニングだけでなく、摘出腫瘍部に対する十分な病理組織学的検討と、病変の広がりに対する慎重な経過観察を行うことが重要です。

治療

皮膚病変は、整容的に切除(外科切除、凍結療法、レーザー治療など)することもありますが、それ以外は経過観察しても構いません。
肺病変は再発性気胸になる可能性が高いので、下部全肺胸膜被覆術などの積極的治療が必要になることがあります。
腎腫瘍では、悪性腫瘍も合併しうるため、定期的検査を行って基本的には早期発見&早期手術で摘出することが肝要です。

執筆:2012.7

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