網状肢端色素異常症

網状肢端色素異常症 (reticulate acropigmentation of Kitamura)

本症は、わずかに陥凹した点状から網目状の委縮性色素沈着が手背・足背に出現して、徐々に四肢に拡大する常染色体優性遺伝性疾患の遺伝性色素異常症の一つです。
小児期から思春期頃までに発症し、中年になるまで皮膚症状は拡大してその後は進行が停止します。病変は時間と共に濃くなり、日光露出で悪化します。また、病変には脱色素斑を認めず、掌蹠や指背側に点状の陥凹や亀裂が見られます。ごく稀に顔面に出現することがあります。
東洋人に多く発症しますが、色黒の皮膚を持つインド、アラブ、トルコ、ラテンアメリカ、イタリア人などからの報告もあります。

病理所見

乳頭間突起が棍棒状に伸長して、表皮委縮を認めます。また、色素斑部位は基底層のメラニン過剰を認め、表皮突起が延長してその先端に色素沈着を認めます。炎症細胞の浸潤はわずかです。

鑑別疾患

dyskeratosis congenita, dyschromatosis universalis herediteria, Franceschetti-Jadassohn's syndrome, dermatopathia pigmentosa reticularis, reticulate acropigmentation of Dohi (RAD), Dowling-Degos Disease (DDD), Galli-Galli disease

原因

ADAM10遺伝子の変異で生じますが、本症を発症するための基質蛋白はまだ特定されていません。

治療

効果的な治療法はありませんが、レチノイド、アダパレン、アゼライン軟膏などの外用治療、Er:YAGレーザー治療などが試用されています。

補足1

尚、本症とDowling-Degos病が同一スペクトラムの疾患ではないかとの議論もあるので、下記に概略を示します。

Dowling-Degos disease (Reticular pigmented anomaly of the flexures)

本症は、腋窩、頚部、乳房下、鼡経部などの屈曲部位に網状色素斑、コメド様丘疹(黒点様毛包)と陥凹性瘢痕を認める、稀な常染色体優性遺伝の網状色素沈着疾患の一つです。
手背、爪郭、外陰部にも細かい色素斑が生じることもあります。また、病変に掻痒を伴うことがあります。
時に口囲に陥凹性瘢痕を伴うこともあります。稀に汗腺膿瘍を併発することがあります。
思春期~成人期頃に出現して緩徐に進行します。

原因

KRT5遺伝子の変異により、重層扁平上皮内にある細胞骨格蛋白の異常が生じて本症が生じます。

病理所見

乳頭間突起が伸展して先端部位に色素沈着が目立ちます。真皮メラノーシス、軽度の血管周囲のリンパ球浸潤も認めます。

治療

効果的な外用療法はありませんが、フラクショナルEr:YAGレーザーが有効だったとの報告があります。

補足2

本症と臨床所見と組織像が異なりますが、類似疾患として考慮すべき疾患に、遺伝性対側性色素異常症があります。下記に概略を示します。

遺伝性対側性色素異常症 (dyschromatosis symmetrica hereditaria / Reticulate acropigmentation of Dohi)

本症は四肢末端(特に手背や足背)に、両側性に3-8mmまでの褐色斑と脱色素斑が多発し、それらが癒合して網目状の外観を呈する、常染色体優性遺伝性疾患の遺伝性色素異常症の一つです。
一般に末梢に向かうにつれて症状が強く、色素斑は表面平滑で陥凹などを認めません。顔面に雀卵斑様の色素斑を生じることが多いです。
多くの症例では、6歳までに発症し、加齢と共に拡大・顕在化しますが、成人期には停止します。東洋人に好発します。

原因

Adenosine deaminase acting on RNA1 (ADAR1)遺伝子の変異が原因です。

鑑別疾患

網状肢端色素沈着症 (reticulate acropigmentation of Kitamura) がありますが、色素斑に皮膚陥凹を伴う点、脱色素斑を認めない点で、本症とは異なります。

執筆:2014.6

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