遺伝性出血性毛細血管拡張症

遺伝性出血性毛細血管拡張症 (Hereditary hemorrhagic telangiectasia; HHT 別名Osler- Weber-Rendu disease)

本症は、主に血管内皮細胞・平滑筋・周皮細胞などが血管新生に関わる機構に異常を生じて、脆弱な毛細血管拡張や、異常な動静脈吻合による血管拡張や出血をきたす常染色体優性遺伝疾患です。
臨床症状は、
1)反復性鼻出血
2)皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻が特徴的ですが、眼球結膜や耳介にも出現することがあります)
3)肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈奇形
4)一親等以内に同疾患の患者が存在することが多い。

原因

本症の原因遺伝子として、5種類の遺伝子が見つかっています。一番目は、endoglin [ENG(9q34.1)]遺伝子で、その変異はHHT1(1型)を引き起こします。二番目はactivin receptor-like kinase I (ALK-1) [ACVRL(12q11-q14)]という遺伝子で、その変異はHHT2(2型)に関係しています。HHTの80%以上の症例が、この両者のいずれかの変異によるものです。三番目は若年性ポリポージスと関連が深いSMAD4[MADH4(18q21.1)]遺伝子で、その変異はJPHTを引き起こします。この他にHHT3として第18染色体に、HHT4として第7染色体に異常があるタイプも発見されましたが、未だその遺伝子の同定には至っていません。
何れの遺伝子も、TGF-βスーパーファミリーの細胞内伝達機構に関与して細胞増殖・分化・アポトーシスを調整していると考えられます。

疫学

男女差はなく、発生頻度は5000人に1人程度とされ、頻度は低いですが、非常に稀な疾患ではありません。重篤な合併症が無い限り、通常人と同様の寿命を全うします。

臨床症状

毛細血管拡張は、皮膚では小児期以降に舌・口唇・手指、顔面などに赤色の小丘疹とその周囲に毛細血管拡張を伴う病変が出現して数が徐々に増えてきます。また、小児期から再燃を繰り返す鼻出血が本症の90-95%に出現します。皮膚出血や口腔内出血も出現しますが、80%前後とされます。約20%が消化管出血(黒色便や吐血)を呈して、出血が大量だったり、微量出血であっても長期に続くと鉄欠乏性貧血になることもあります。尚、女性では、閉経後に鼻出血が改善することがあります。
動静脈奇形は、肺(50%)、肝臓(30-70%)、脳(10%)、脊髄(1%未満)に多くみられます。逆に肺の動静脈奇形があれば、その70-80%がHHTと考えられています。
肺にあるこの奇形により、塞栓形成による脳卒中や細菌が血流に乗って脳膿瘍を生じます。また、時にこの奇形の破綻による出血で、喀血や血胸を生じることがあります。また、稀にこの奇形が巨大になると肺喚起障害を生じて呼吸苦、チアノーゼを生じることがあります。
肝臓での動静脈奇形では、異常な動静脈吻合から生じる心不全や、門脈が巻き込まれると門脈高血圧や食道動脈瘤を生じたりします。時には、肝性昏睡を生じることもあります。HHTの約70%に肝に動静脈奇形を認めますが、その10%前後が症状を発現するとされます。
脳での動静脈奇形では頭痛や癲癇が多く、また、脳出血と脳梗塞が生じます。前者は脳動静脈奇形や動脈瘤が原因で起こり、後者は肺動静脈奇形からの塞栓症のために起こるのが原因です。また、脳膿瘍も肺動静脈奇形で起こることがあります。

診断

皮膚以外の部位では、CTやMRIでスクリーニング検査をします。動静脈奇形の程度を把握するために、必要であれば血管造影を追加することもあります。

治療

皮膚病変に対する治療は一過性あるいは不定効果しか得られないため、積極的な治療は行われていないのが実情です。症状が強いときには、鼻粘膜凝固やレーザー治療、血管内塞栓術、鼻粘膜切除+植皮術(Saunder's procedure)、止血剤(トラネキサム酸)内服、ホルモン剤(女性のみ)内服、鉄剤内服が行われることもあります。
肺病変に対する治療では、肺出血や脳塞栓を防止するために金属コイルを用いた血管内塞栓術が行われますが、再燃することもあります。尚、空気の泡が形成されて脳塞栓を生じる可能性があるため、スキューバダイビングの禁止並びに点滴治療する際は空気が混入したいよう十分に注意することです。また、歯科治療のような血管内に細菌が侵入するような処置や手術をする場合は、抗菌剤の十分な予防投与が必要です。
肝病変に対する治療では、心不全では利尿薬、塩分制限、飲水制限、抗不整脈剤などの保存的治療が行われますが、無効の場合は、生体肝移植しか方法がありません。塞栓術では重度の合併症を引き起こすため、推奨されません。
脳病変に対する治療では、臨床症状は勿論ですが、病変の位置・大きさ・本奇形の性状によって、様々な選択肢(手術、血管内塞栓術、サイバーナイフ、ガンマナイフなど)が考慮されます。特に高流量の動静脈奇形では治療は必要ですが、程度がひどくなければ病変が自然消退することもあります。

執筆:2011.8

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