ロコモ

運動器症候群:ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)(略称:ロコモ)

ロコモとは、「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることです。

2007年、日本整形外科学会は、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込めてロコモを提唱しました。この背景には日本は65歳以上の高齢者が22%になり、世界に先駆けて超高齢化社会に突入しており、今後さらに高齢化が進むと、運動器の障害による要介護や寝たきりの高齢者が急増することが予想され、これに対して早急に有効な対策を立てる必要に迫られていることがあります。
実際、支援・介護を必要とする人が02年から06年までに1.7倍と急増し、440万人を超えています。75歳以上の高齢者での寝たきり・介護の主な原因は、運動器疾患が21.5%(転倒、骨折9.3%、関節疾患12.2%)を占めています(2007年)。また、変形性関節症と、骨粗鬆症に限っても、推計患者数は4700万人(男性2100万人、女性2600万人)です(2009年)。年を重ねても、寝たきりや、痴呆になって、要介護となることはできるだけ避けたいものです。健康寿命の延長や生活機能低下の防止には、予防・早期発見・早期治療が重要です。

ロコモの原因

運動器は日々体を支えて動かす役割をする器官であるため、運動器の使用程度(必要度、力学負荷の程度)に応じて、毎日その構成成分の産生と分解がバランスをとって維持しています。従って、運動器の使用程度が過少であると運動器としての機能が維持できなくなりますし、使用程度が過剰であると運動器の磨耗や損傷につながるので、年齢相応の適正な使用程度が必要です。しかし、加齢と共に自覚症状の無いまま、国民病のように運動器の障害が進行していることも事実です。
運動器の障害の原因は、運動器自体の疾患と加齢による運動器機能不全があります。

1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)

変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など、加齢に伴う様々な運動器疾患があります。あるいは、関節リウマチなどの疾患では、痛み・関節可動域制限・筋力低下・麻痺・骨折・痙性などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。

2)加齢による運動器機能不全

加齢により身体機能は徐々に減衰し、筋力低下・持久力低下・反応時間延長・運動速度の低下・巧緻性低下・深部感覚低下・バランス能力低下などが目立ち始めます。また、"閉じこもり"などで運動不足になると、これらの筋力低下やバランス能力の低下などが相乗的に作用して運動機能の低下が起こり、容易に転倒しやすくなります。

寝たきりや要介護状態の要因

ロコモ、メタボリックシンドロームおよび認知症が3大要因とされ、これらの疾患はお互いに合併することが多いという報告もあります。
高齢者では、加齢や運動不足に伴う身体機能の低下や、運動器疾患による痛みや易骨折性(軽微な外傷による骨折)などの多様な要因が重なり合って、体力・バランス能力・移動能力の低下をきたしやすくなり、最悪の場合には、立って歩くことや、衣服の着脱や、トイレなど、最低限の日常生活動作(ADL)さえも自立して行えなくなり、健康寿命の短縮、"閉じこもり"、廃用症候群や、寝たきりなどの要介護状態になっていきます。

ロコモ・チェック Locomotion Check

  1. 片脚立ちで靴下がはけない
  2. 家の中でつまずいたり滑ったりする
  3. 階段を上るのに手すりが必要である
  4. 横断歩道を青信号で渡りきれない
  5. 15分くらい続けて歩けない

上記の5つの項目のうちひとつでも当てはまればロコモが疑われるので、近くの整形外科専門医へ受診して下さい。

ロコモーショントレーニング Locomotion Training(略称:ロコトレ)

ロコモによる転倒予防、骨折予防などのために、自宅でも可能な継続して行える運動療法が下記のように考案されているので、実践してみて下さい。

ロコトレ1:開眼片足立ち訓練(ダイナミックフラミンゴ療法)

右足立ちで1分間+左足立ちで1分間、片脚づつ交互に行って下さい。朝昼晩の1日3回でこれを繰り返して下さい。ご高齢の方は机や平行棒につかまりながら行い、転倒に注意して下さい。http://www.jcoa.gr.jp/locomo/therapy.html

ロコトレ2:スクワット(股関節の運動)

足幅を腰幅より広めに取り、股関節・膝足首の関節を連動させて動かす。無理しない範囲で4-8回行う。http://www.jcoa.gr.jp/locomo/therapy.html

ロコトレ3:骨力トレーニング(骨粗鬆症予防)

両膝を曲げ、片足を持ち上げ、その足裏で床を踏む。ゆっくりと交互に6-8回バランスを取りながら無理のない範囲で行う。ご高齢の方は机や平行棒内でつかまりながら行いましょう。http://www.jcoa.gr.jp/locomo/therapy2.html

ロコトレ4:椅子に腰掛けて行う体操(大腿四頭筋訓練;変形性膝関節症、O脚予防)

安定した椅子に腰掛け、片足を浮かせて膝を伸ばして前に出す。そのまま4-8回呼間数えてゆっくり下ろす。これを2-4セット、両足を交互に行う。膝の間にやわらかいボールをはさんで行うのもよいでしょう。あるいは、仰向けに寝て交互にゆっくり足を上げてもよいでしょう。http://www.jcoa.gr.jp/locomo/therapy2.html

この他にもタオルギャザーhttp://www.youtube.com/watch?v=gVXNnO3AV1M)やバランスボードhttp://www.youtube.com/watch?v=gyTUu6uHTX4)などのトレーニング法があります。

ロコモに対する整形外科専門医の役割

上記のトレーニングを実践し、必要に応じて物理療法(機械的刺激などを加える治療法)やリハビリなどを追加します。無理なく楽しい複合的な運動プログラムを行うためには、定期的に整形外科専門医によるメディカルチェックを受けながら、各種療法による効果判定も行って必要であれば運動プログラムを修正して、ロコモ対策並びに生活機能の回復に努めましょう。因みに、このような運動療法を積極的に行うためには、患者本人への動機付け(運動療法をやろうする意欲)も重要な要素です。

用語の解説

ロコモティブ(Locomotive)

「運動の」という意味です。「機関車」という意味もあります。能動的な意味合いをもつ言葉で、「運動器」は広く「人の健康の根幹である」という考えを背景とし、「年齢」に否定的なイメージを持ち込まないことが必要だと考えて、選んだものです。

運動器(locomotive organs)

運動器とは、骨・関節・靱帯、脊椎・脊髄、筋肉・腱、末梢神経など、体を支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称です。

ADL(エーディーエル)Activities of Daily Living 日常生活動作

日常生活を送るのに「最低限必要な、日常的な動作」のことです。例えば,寝起きや移動,トイレや入浴,食事,着替えなどです。Aはアクティビティー(activity)で動作,DLはデイリーリビング(daily living)で日常生活の意味。直訳すれば,「日常生活のいろいろな動作」です。高齢者や障害者の身体能力や、障害の程度をはかる、重要な指標となっています。介護保険制度では、これらの動作一つ一つを、「できる、できない」で調査し,その結果で,その人に必要な介護レベルを決めています。日常生活動作が自立しているので,「通常の日常生活」が送れると誤解される場合がありますが「通常の日常生活」ではなく、あくまで「日常生活を送るための最低限の動作」を指しています。

健康寿命

平均寿命より短い。平均寿命から介護(自立した生活ができない)を引いた数が健康寿命になります。日本人の「健康寿命」は、男性で72.3歳、女性で77.7歳、全体で75.0歳であり、世界第一位です。(WHO:2004年)

廃用症候群

「安静状態」が、「長期に続く」事によって起こる、心身のさまざまな「機能の低下」等を指します。筋萎縮、関節拘縮、褥瘡、骨粗鬆症、起立性低血圧、精神的合併症、括約筋障害(便秘・尿便失禁)などが起こります。

「ロコモ」と「運動器不安定症」の違い

「運動器不安定症」は、高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、転倒リスクが高まった運動器疾患といえます。具体的には、65歳以上であること、運動機能低下をきたす疾患(またはその既往)が存在すること、日常生活自立度判定が、ランクJまたはAであること、運動機能評価テストの項目を満たすこと、が条件です。診断基準は、「運動器不安定症とは」を参照下さい。 「ロコモ」は、運動器不安定症より広い疾患概念です。「運動器の機能不全」のみならず、「要介護リスク」が高まった状態をさします。例えば、上述の5つのロコモ症状や「支えなしには椅子から立ち上がれない、転倒への不安が大きい、この1年間で転んだことがある」場合などが含まれます。

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