牛肉アレルギーとマダニ咬傷

今回は、哺乳類肉(牛、豚、羊など)による食物アレルギーとマダニ咬傷の話題を紹介したいと思います。
事の発端は、モノクロナール抗体の抗悪性腫瘍薬であるセツキシマブが発売使用されてから、米国南東部に限定して同薬のアナフィラキシーを生じる患者が多発していることが注目されたことから始まりました。
2008年、Chung CHらは、その原因がセツキシマブのマウス由来のFab領域に存在するgalactose-α-1,3-galactose(α-gal)に対する抗糖鎖IgE抗体によることを解明しました。現地では住民の約20%が同抗体陽性でした。また、同著者らはこの論文の中で非開示データとしつつも、セツキシマブアレルギー患者は、牛肉・豚肉アレルギーを持つ患者が多いことに言及しています。
2009年、Commins SPらは、哺乳類肉(牛、豚、羊など)摂取3-6時間後に生じる遅発性アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹の原因も、α-galに対するIgE抗体によるものであることを報告しました。また、同論文内で、α-galに対するIgE抗体を持つ患者はセツキシマブのアナフィラキシーが多発する米国南東部が多い地域とほぼ合致していると述べています。さらに、患者の80%以上が、症状が発現する前にダニ咬傷の既往があると記載しています。2011年には、同著者らにより、α-galに対するIgE抗体産生の誘因はマダニ咬傷に関連していることを報告し、マダニ咬傷が哺乳類肉アレルギーの原因であると推定しています。
2013年には、Hamsten Cらはマダニ虫体の消化管に糖鎖α-galがあることを証明しています。
以上のことから、マダニ咬傷により、マダニ消化管中のα-gal含有蛋白質に対するIgEが産生されて、哺乳類肉(牛、豚、羊など)アレルギーや、抗悪性腫瘍薬であるセツキシマブアレルギーが発症すると考えられます。従って、α-gal特異的IgE抗体検査を行って、哺乳類肉(牛、豚、羊など)アレルギーの確定や、セツキシマブの適応の有無を確認するべきです。

日本でも、島根大学が日本紅斑熱を媒介するフタトゲチマダニを調べ、その唾液腺にα-galが存在することを突きとめ、同地域に哺乳類肉(牛、豚、羊など)アレルギー患者が多いことを報告しています。
興味あることに、このような患者さんでは、
1)血液型はA型&O型の患者に圧倒的に多く、B型&AB型は稀なこと
2)カレイ魚卵を摂取すると蕁麻疹やアナフィラキシーを発症することが多い
3)犬や猫をペットとして飼育している人が多い
など、今後これらの関連性についても検討されることが期待されます。

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