クルクミン

クルクミン (curcumin)

クルクミンはカレーのスパイスであるターメリック(別名:ウコン)の黄色色素で、ポリフェノールの一種であるクルクミノイドに分類される。ケト型とエノール型の2つの互変異性が存在し、固体および溶液中においては後者の方がエネルギー的に安定である。クルクミンはホウ素の定量(クルクミン法)に用いられたり、ホウ酸と反応して赤色の化合物ロソシアニン(rosocyanine)を生じる。また、鮮やかな黄色を持つことから、天然の食用色素として用いられる。

クルクミンの生理活性と医学的有用性は近年盛んに研究されており、In vitroならびに動物実験から、クルクミンは、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アミロイド作用、抗腫瘍作用、抗関節炎作用、抗虚血作用などを有することが認識されてきた。この他にも、マラリヤ治療、子宮頸癌、HIV治療やヘルペスウィルス感染症などにも効果が期待されている。

クルクミンの抗炎症作用はエイコサノイド合成の阻害によると考えられている。また、クルクミンはフリーラジカルスカベンジャーとして働くため、その抗酸化作用により脂質の過酸化や活性酸素種によるDNA傷害を防御している。クルクミノイドはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase)を誘導し、シトクロムP450(cytochrome P450)を強力に阻害する。また、アルコール摂取による二日酔いにも、クルクミンの抗酸化作用で効果を発揮する。
2004年、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、クルクミンは脳における変異βアミロイドの蓄積を抑制してアミロイド斑を減少させることが証明された。今後、認知症などの治療薬として応用できるかもしれない。

クルクミンの癌抑制効果では、癌細胞特異的にアポトーシスを誘導するとの報告がある。また、クルクミンは癌をはじめとした多くの炎症性疾患に関連する転写因子であるNF-κB活性を阻害する。最近の研究では、クルクミンは複数の細胞内シグナル伝達系(mTOR経路:mTORC1; 細胞増殖経路:cyclin D1, c-myc; 細胞生存経路:Bcl-2, Bcl-xL, cFLIP, XIAP, c-IAP1; カスパーゼ活性経路:caspase-8, 3, 9; 腫瘍抑制経路:p53, p21; death レセプター経路:DR4, DR5; ミトコンドリア経路; 蛋白キナーゼ経路:JNK, Akt, and AMPK)などを制御して癌抑制効果を起こすとの報告もある。事前に発癌物質を投与されたマウスやラットに、0,2%のクルクミンを添加した食餌を与えたところ、大腸癌の発症において有意な減少が見られたとの報告がある。

クルクミンを単独経口摂取してもごくわずかしか体内に吸収されず、また、腸管内では不安定で分解しやすい。しかし、クルクミンが経口摂取で腸管吸収されなくても、直接接触する腸管内では潜在的な大腸癌予防などに寄与する可能性がある。
一方、クルクミンを熱湯や油に溶解して摂取すると腸管吸収が増加する可能性はあるが、正確なデータは未だ無い。黒コショウ成分ピペリンと同時に摂取することで腸管吸収性の改善が見られるが、この成分は薬物代謝に影響を及ぼすため、その摂取には注意を要する。最近、ナノカプセル化したクルクミンが作成され、今までのクルクミンよりも溶解性、吸収性に優れていることがIn vitro実験で確認されたが、動物やヒトでの腸管吸収についてはまだ明らかではない。この他にも、脂質化したクルクミンや、大豆リン脂質を混合したクルクミンなどで吸収率を上げる工夫がされているものも登場している。

以上のように健康に有益な作用の期待されるクルクミンだが、他の抗酸化剤と同様に、癌抑制効果とは全く逆の発癌性を有する可能性があるので、十分な基礎的検討がなされるべきとの指摘もある。クルクミンは腫瘍抑制に働くp53経路に干渉する可能性があるが、マウスやラットを用いた動物試験では、クルクミン摂取と腫瘍発生の関連性は証明されなかった。動物実験では、脱毛症や低血圧を生じることがあることが報告されている。ヒトにクルクミンを毎日3.6-8g4ヶ月内服させても、時に吐き気や下痢を生じることがある以外は殆ど副作用を生じないとの報告もある。

この他にも、クルクミンはある種の抗生剤と併用すると、黄色ブドウ球菌の抗菌効果を高めるが、ナリジクス酸の併用では抗菌効果を減弱させると報告されている。また、クルクミンは鉄代謝に変化を生じさせて鉄欠乏症を生じさせる可能性があることも報告されている。
最後に、2008年から、クルクミンが多発性骨髄腫、膵臓癌、骨髄異型性症候群、大腸癌、乾癬、アルツハイマー病などに効果があるかどうかを、ヒトでも治験が開始されている。

▲PageTop

ページトップに戻る