ウェルナー症候群(Werner syndrome)

ウェルナー (Werner)症候群は臨床的に老化関連徴候を若年期(20-30歳代)より発現し、癌易罹患性を伴う遺伝性早老症である。ウェルナー症候群患者は10歳までの発達は正常に経過する.最初の症状は10歳代前半の成長の加速がみられず、低身長・低体重である。最初の所見(通常20歳代に認められる)は白髪化・脱毛,嗄声,皮膚硬化・萎縮などで,その後30歳代には特徴的な鳥様顔貌、白内障,2型糖尿病,性腺機能低下症,皮膚潰瘍や骨粗鬆症、尿中ヒアルロン酸排泄増加が現れる。この他にも、軟部組織の石灰化、四肢末梢の骨硬化、偏平足などを伴うこともある。平均40-50歳で動脈硬化(心筋梗塞など)や悪性腫瘍で死亡する。
ウェルナー症候群は常染色体劣性遺伝し、ヒト8番染色体(8p11-12)上にあるWRNと称される単一遺伝子異常によって生じる。その原因遺伝子は、大腸菌の組み換え修復因子のひとつであるRecQと相同性の高いWRN helicase(WRNヘリカーゼ)であることが解明されている。
ヘリカーゼはDNA/DNAやDNA/RNAの二本鎖構造あるいはRNAの二次構造を、水素結合を切断することによりときほぐして一本鎖にする活性をもつ酵素である。DNAの複製、修復、組み換え、RNAの転写、スプライシング、蛋白への翻訳などに幅広く関与すると考えられている。いくつかのタイプのヘリカーゼ遺伝子ファミリーがある。そのうちRecQタイプのDNAヘリカーゼ遺伝子ファミリーは、ヒトにおいては少なくとも5種類以上のメンバーからなることが知られている。そのうちの3種類は、いずれも高発癌性を伴う遺伝性早老症であるウェルナー症候群、ブルーム症候群(Bloom syndrome)、ロスムンド・トムソン症候群(Rothmund-Thomson syndrome)の原因遺伝子(WRNヘリカーゼ、BLMヘリカーゼ、RecQL4ヘリカーゼ)として同定されている。これらのことより、ヘリカーゼ欠損あるいは機能不全によるDNA修復や複製異常、あるいは染色体の不安定性が様々な老化現象と密接に関わることが推測されるが、これらの酵素欠損が早老症を惹起する詳細なメカニズムは未解明である。

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