ハッチンソン・ギルフォード早老症候群

ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome; HGPS)

早老症の中でも最も症状が重篤であるが極めてまれな疾患で、発症率が400~800万人に1人と推定されている。発症年齢は6ヶ月~2歳であり、患者の老化の進行は甚だしく、平均寿命は13歳で、通常は成人前に心疾患や脳卒中で死亡する。
頭頂部大泉門の閉鎖不全を生じて頭部が大きく見えるが、身体発育が悪い小人症様となり、強皮症様皮膚、脱毛・禿頭、小顎症、歯牙の形成不良、皮下脂肪減少を認める。神経器官と脳は正常に成長して機能するため、身体の老化と神経機能発達との乖離が顕著に認められる。症状が進行すると、皮膚老化・多皺・白髪・脱毛、動脈硬化、糖尿病、関節拘縮、股関節脱臼、骨変形、白内障などが顕著になる。特に動脈硬化による血管障害の進行が早いため、重篤な循環機能障害を好発しやすい。
HGPSの原因はヒト1番染色体上にあるLMNA遺伝子の突然変異で、正常遺伝子と比較して構成塩基が1個入れ替わっている。LMNA遺伝子は核膜の重要な構成成分であるラミンAをコードする。 核膜は核の構築に必須であるだけでなく、核と細胞質の間での分子の輸送、シグナル伝達やクロマチンのアンカーポイントを指定して核の高次構造の決定や遺伝子発現の制御にも関与していると考えられている。HGPSでは、突然変異のために正常よりも短いラミンA蛋白が産生され、これが核膜の複合体形成、あるいは上記の機能を阻害するためにHGPSを発症すると想定されているが、詳細なメカニズムは不明である。
また、本症候群では尿中ヒアルロン酸排泄が増加しているため、グルコサミノグリカンの代謝異常も発症に関与している可能性もある。また、テロメアの活動性異常や成長ホルモンの異常も病態に関与していることが指摘されている。

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