アンチエイジング・コラムを執筆するにあたって

アンチエイジング・コラムを執筆するにあたって、一番苦労したのは「老化」関連の知識であった。皮膚に関する知識は小生の守備範囲内なので、多少の文献や成書を読み漁れば苦も無く文章を書けたのだが、老化に関する生化学・生物学・医学的アプローチに関する研究は目を見張るものがあり、インターネットや沢山の文献や成書を参考にしながら興味深く勉強をさせてもらった。老化の項目における内容の理解不足もあるためか、色々と疑問が湧く点も多々あったが、難解になることを極力避けて、現在一般に認められている内容を中心に据えるよう配慮して記述したつもりである。まだまだ加筆しなければならない追加項目があるので、今後徐々にコラムに掲載していきたいと思っている。

老化に関する成書や文献を読み解くうちに、自分自身の若かりし頃(1990~92)、米国で研究していた「血管新生」での試薬で使用していたIGFやCollagenase(MMPの旧名)が老化に影響を与えているものであったとは夢想だにしなかった。また、小生の博士論文になった「培養表皮」作成における継代培養において、テロメア短縮による細胞分裂が有限であることは知っていたが、これが老化の根源に深く関与しているとは考えてもいなかった。つまり、自分のごく狭い領域内での研究でさえ、「老化」と隣り合わせの接点があったのは大変意外であったし、自分が行っていた些細な実験は、あらゆる現象の中のごく一部を垣間見ているだけで、その大局を見落としてはいなかったのかと疑心暗鬼になるのである。さらに、自分の出した結論は、現在流行している上辺だけのご都合主義の理論に過ぎないのかもしれないと冷や汗をかいてしまう。

数学や物理のような完全な理論は別にして、特に医学や生物系学問においては、正当と思われる理論は、色々な見方の研究者達が検証・発見を重ねて引き出されることが多いので、妥当性は高いものではある。しかし、必ずしもその理論は未来永劫普遍ということにはならない場合もある。次々と発見される現象が今までの理論では整合性が取れなくなってしまうために、新たな新理論が必要な場合などはその際たるものだろう。また、どうにも今までの理論では説明できない自然現象には、どうしても新たな理論が必要になってくる。
時代と共に、流行の理論が津波のように出現しては消えて、そのごく一部のみが荒波を耐えて正当な理論として残ってゆく。
また、現在話題の研究分野で次々と新発見がなされていても、それが本当の真実に迫っているのかどうかは誰にもわからないが、少なくともその分野での進展があり、他分野への影響も少なからずあるのは間違いない。新たな発見が次への更なる真実あるいは未知の分野への突破口になったりすることもある。今までのところ脚光を浴びない日陰の分野であっても、serendipityのある科学者が意図せぬ大発見をして、次世代の科学への潮流あるいは新しいフロンティアを作ることもあるわけだ。このようなことを鑑みると、学問の領域にも栄枯盛衰があるわけで、その時勢にあった重点配分の研究は必要だが、だからといって現在は際立たないような基礎学術分野も疎かには出来ないのではないかと思う。

発想が良くても時流(TPO)にあった仕事をしないとうまくいかないこともある。現在の技術では発見や発明が出来ないことはよくあることで、将来の予測や予想は出来てもそれを証明できないとその人の価値は認められず、後世の人にその証明を託すことになる。

疾患と老化

食事制限(カロリー制限)による老化遅延の項目でも記述したように、老化・寿命を制御するメカニズムとメタボリック疾患・動脈硬化性疾患・神経変性疾患・癌などとは、その制御因子(シグナル伝達系やホルモンなど)は多因子性と予想されるものの、その根幹部では一致あるいは類似している可能性が高いと思われる。
その解明には、分子生物学的アプローチが非常に有用であるが、大局が見えないことも多く、その制御機構の本筋を見失うこともありうる。疫学的あるいはよりマクロ的な医学的アプローチによる諸臓器・全身からの統合的な解明も必要になる。両者が補完しあいながら、老化とメタボリック疾患などの根源的システムの解明が期待される。
また、健康維持と長寿に関連する正確なカロリー摂取量などはまだ特定されていないが、これは医学的アプローチで早期解明あるいは指標が望まれるところである。老化に関する研究では、とりわけ長時間の実験・解析が必要になるため、莫大な労力と手間隙がかかるが、人類の英知を結集して成し遂げてもらいたい。なぜなら、advanced agingの人口が地球上に満ち溢れているから!

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